第18話
「失礼しまーす」
放課後、俺は言われた通りに職員室に来ていた。
部活に関する話など、正直悪い予感しかしない。
うちなんて、大体ロクな活動してないからな……まだ廃部になっていないのが不思議なくらいだ。
「やっと来たか。星野」
中に入ると顧問の
元から強面だが、今日はいつもより一段と怖い顔をしている
ハーフアップにした髪も、心なしかいつもよりトゲトゲしているように見えなくもない。
「先生、今日はどうしたんですか……」
「ああ、もちろんお前らのクソ部活についての話なんだが、とりあえずそこに座れ」
「あ、はい」
これは長くなるやつだ……。
そして長くなると言うことは、それだけ面倒な話をされると言うことを暗示している。
最悪だ。もう今すぐに家に帰りたい。
「おい星野」
「はい……」
「お前らのクソみたいな部活が設立して、どれくらい経つ」
「1年……ですね」
俺が入学してすぐに設立。
そして、俺は今2年生になった直後。よって一年。
赤子でもわかる簡単な計算だ。
「そうだな。それで1年経ったわけだが……お前らはなにをした?」
「えっと……まあ、eスポーツゲーム部ですし、eスポーツに採用されているゲームの練習とかを……して……ましたかね?」
「そうかそうか。ゲームの練習か。私はゲームのことは詳しくないからよくわからないが、さぞ有意義な時間を過ごしているんだろうなぁ。部長の星野くん?」
「はは……」
皮肉たっぷりな口調だ。
やはり相当お怒りらしい。
無理もない。だって俺たち何もやってないし。
いや、一応練習していないわけではないが、真面目にやってるとは言い難い。
なんなら最近はほとんどeスポーツ関係ないゲームばっかしてるしな……。
「別に、お前らの活動を否定するつもりはないんだ。ゲーム部なんて名前なんだから、ゲームをするのは当然だろう。だがな……」
先生はそこで言葉を区切ると、ギロリと俺を睨んだ。
胡狼さんとは別の恐怖を感じるその視線は、俺の背筋を大きく震わせる。
「ここ一年、なんの活動実績もないってのはどういうことなんだ!!」
バンッと机を叩きながら立ち上がる先生。
その顔はまさに鬼の形相と呼ぶにふさわしいものだった。
「ひぃっ!?」
思わず情けない声が出る。それくらい怖かったのだ。
今の一撃でHPが半分くらい削られた気がする。
「大会で優秀な成績を収めるのは愚か、出場すらしてないじゃないか!」
「それはそのぉ……eスポーツってのは結構難しくてですね……。うちの部員たちにはまだ早いというかなんというか……」
「星野。私はゲームについては詳しくないがな、それでも一応お前らの顧問だ。だから、いろいろと調べたりもしている。んで、調べてみた結果、学生向けのアマチュア大会とかもあるらしいじゃないか……」
「ははっ……そうなんすか……」
「とぼけるな。お前知ってたんだろ? 知ってて、参加してないんだろ? あぁん!?」
やばい……この人めっちゃキレてるよ……。完全にヤクザが、憑依してるよ……。
確かに俺は大会の存在自体は知ってたけどさ……。
俺たちにはまだ早いっていうのも事実なんだよ……。
真咲は精神的に未熟だし……。日向はど素人だし……。
そもそも、つい最近まで部員が俺とその2人しかいなかったし!
「フラマン嬢の頼みということで、仕方なくお前らのクソみたいな部活が承認されたわけだが、流石にここまでクソだと校長も黙っていないぞ」
「そ、そんな! リオンの権力でもどうにもできないんですか!?」
「知らん。フラマンほどの権力者になれば、うちみたいな学校の一つや二つ自由自在に操れるのかもしれないが、お前らのゴミみたいな部活のためにお前は大事を起こしたいのか?」
「いえ……」
「そうだろ。私も絶対に嫌だ」
リオンの家は世界でも有数の大企業で、日本経済を裏から支えていると言われているほどだ。
つまり、この学校の校長なんて、リオンからすれば、そこらへんにいる野良犬も同然。簡単に操れる。
一応、リオンは俺の味方ではあるのだが、扱い方に気をつけないと、俺の人生がゲームオーバーになる可能性が十二分にある。
ゲーム部を守る盾に使ったら、人生終了しましたなんてマジで笑えない……。
「私にも今まで監督を怠ったぶんの責任はある。だから、お前らでも出れるくらいの大会を探して、そこにエントリーするくらいのことはしてやろう」
「それってもう、大会に強制参加ってことじゃないですか……」
「なんだ? 無理なのか? そんなはずないよな。練習だけは1年間みっちりやってきたんだ。まさかアマチュア大会のレベルにも達していませんなんて言わないよなぁ?」
「い、いや、スキルは十分あるんですけど……部員が……足りなくないですかね……?」
そう。俺たちeスポーツゲーム部が主戦場としているのは5対5のチーム戦FPS【虹七】。
コーチなどを抜きにしてもプレイヤーに最低5人が必要だ。
しかし、我々ゲーム部は胡狼さんを含めても4人しかいない。
これでは、試合に出ることすらままならないのである。
「なら、新入部員を集めればいいだろ。まだ勧誘期間だし、最近の若い奴らはみんなゲームしてるそうじゃないか。なら1人や2人くらい簡単に集まるだろ」
「いや、そんな簡単に……」
「とにかく大会出場は決定事項だから。出場できるようにしといてくれよ。じゃあな」
言いたいことだけ言うと先生はスタスタと職員室を出ていってしまった。
「くそ……これが一年間遊んできた代償ってやつか……」
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