第17話 クエスト達成の報酬をあげよ〜♪

「おはよう唯人! 今日も変な顔してるねぇ〜」


 教室に入るなり、日向が突撃してきた。

 普通に近づいてきているのを見るに、機嫌は直ったようだ。


「ああ、おはよう」

「ねぇ、昨日部活で何があったの? 私が行った時にはもうみんないなくなってたし、なぜか真咲ちゃんと唯人の荷物が置きっぱだし……気になって夜しか眠れなかったよ!」

「と、特に何もなかったぞ。ただ、みんな昨日は気分が乗らなくてな、解散ってことになったんだ」

「えー、本当ぉ〜? また、胡狼さんから逃げたとかそんなんじゃないの〜?」


 リオンに続いてコイツも疑り深いやつだな……。

 まあ、図星なんだが。

 正直に話せばまた機嫌が悪くなるな違いない。

 ここは適当に誤魔化しておくとしよう。


「ソ、ソンナコトナイヨ」

「怪しいなぁ……。絶対なにか隠してるでしょー!」


 ジーっといぶかしげな目でこちらを見つめてくる日向。

 そんな可愛げなジト目を向けられたって、俺を喜ばせるだけだぞ。


「まあ、いいや。それより、ちゃんと胡狼さんとお話しした? 逃げてないって言うなら、したんだよね!」

「ああ……したぞ……」


 かなり特殊なシチュエーションだったがな……。


「ええっ!? 話せたの!? ほんとうに!?」

「なんでお前が驚いてんだよ」

「だ、だって、昨日まであんなキモい格好をしてまで避けようとしてたじゃん! なのに、急に話せたなんて……信じられない……」

「そんなに信じられないのなら、胡狼さんに直接聞いてみればいいさ。本当に話したから」

「いや、別に疑ってるわけじゃないけどさぁ……。なんか信じられなくって……。そっか……唯人も画面の向こう以外の女の子とも喋れるようになったんだね……」


 感慨深そうに呟くと、しみじみとした顔で頷く日向。


「え、真咲をナチュラルに非女認定するの酷くない?」

「真咲ちゃんは頭がちょっとアレだからべつ〜」


 ひどい言われようだなおい……。まあ、俺も真咲は女としてカウントしてないけどさ。


「さて……じゃあ、頑張った唯人にはクエスト達成の報酬をあげよ〜♪」

「報酬?」


 なんだそれ? ハグとかキスとかそういうやつか?

 だとしたら受け取ってやらんこともない。


「ててーん! おめでとう! 唯人は自分が忘れた荷物を獲得した!」

「いや、俺が部室に置いてあったカバンかよ……。期待して損したわ……」

「ええ〜。せっかく持ってきてあげたのに! カバン3つ持って登校するの大変だったんだよ!」

「わざわざ持って帰ったのか? 別に部室に置いたままにしてくれてよかったのに」

「それだと盗まれちゃうかもでしょ! まったく、唯人は防犯意識が薄いんだからぁ〜!」

「うぅ……」


 ちょうど今朝パンツを盗まれた身としては耳が痛い話だ。

 しかし、パンツ泥棒のことを考えると、うちに置いておくほうが危険である可能性もなくはないんだよな……。

 俺の安全圏はどこにあるのだろう……。


「ごめん。今度からは気をつけるよ」

「うん、わかればよろしい! あ、それともう一つ……」

「なんだ、まだ何かあるのか?」

「唯人、放課後職員室に来いって言われてたよ。部活の話で」


 部活……だと。


「それっていい話? それとも悪い話?」

「先生の顔から察するに悪い話じゃないかな?」

「マジか……」

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