第一話

 目がパチリと開く。

 見慣れた天井だ。

 カーテンの隙間から光が差し込んでいる。


 ものの数秒間、虚無状態であった俺はこれからお母さんになるお腹の中ではない事に驚く。

 

 'どういう事だ?'

 

 ゆっくりと身体を起こして辺りを見回すと懐かしい建物の中だと気付く。

 ここはなんと自分が通っている校舎に隣接している技術棟だった。

 創立100年歴史を経て新しく建て直すとの事で、生徒が迂闊に入らないように立ち入り禁止のロープが張られている。

 見慣れない、埃を被っている本の山や、バスケットボールなどがあちらこちらに散らばっていた。

 

 

 確か、飛び降りた時の記憶は鮮明に残っている。

 いつもの体制でいつもの感覚で落ちたはずなのだが、、、。


 

 生まれてくる条件としては未練が残っているかの有無だと死後の世界ではそのように条件付けている。

 

 生きてる世界では目で視たもの、耳で聞いた事や経験を通しての情報などで、頭の中で知識として得て、分かっていくのだが、、、。


 死後の世界では初めから染み付いていてま?で常識のように初めから知っているのだ。

 だが、今回のケースの情報は一切ない。


 疑問ではあったが、何が起こってもおかしくないと思っている俺の頭の中は冷静であった。

 


 ゆっくりと状況を整理していく。

 

 近くにある、罅の入った鏡を拾ってみる。

 普通に触れるようだ。

 それから顔を確認してみる。

 髪は自殺する直前とは違い長髪ではなくサッパリしているが、ツーブロックの顔の輪郭、容姿はと変わらずであった。

 

 学校の制服を着こなしていて、ポケットの中にはスマートフォンが入っており、画面を確認すると、自殺する前と同じ日付で18:30、大体1時間弱経ったところだろうか。


 窓から俺が落下地点になっているであろう場所を見ると、人だかりが出来ており、その事故現場の中心には警察官がいたのだった。

 



 間違いなく、俺はあそこで死んでいた。

 


 

 この世界では存在しないはずなのに同じ別の人間、所謂クローンと似たような形の存在として生きていた場合、これから何が起こるか分からない。


 運命というのは必ず存在していて、人の動きというのは自分のやり方で制御する事は不可能ではあった。


 'あの時こうすればよかった'とか後悔する者もいるが、制御などは出来ない。

 自分の意志のようにみえて違うからだ。

 常に洗脳され続けて動いている。

 人それぞれの身体に蜘蛛の糸みたいに空へと繋がっていてそれを動かしているのは、この世界を創り上げただ。


 そこに関しては俺にも脳に刻まれているのみで詳細は分からないが。

 

 ただ、この主も俺と同じと感じている事と性格だけは何故か分かる。

 時代を経っていくなかでめまぐるしく発展はしてきているが、その主の存在に気付けるのは大分後になるだろう。



 'ちょっと待てよ・・・'




 だけど、今回はそのようなものが何も見えない。



 



 恐らくだが、主が糸を解除したのだろう。

 俺と同じ臆病で内向的な性格をしている主も身の保身より刺激を求めるようになってきたのか。

 だから、この先何がどうなるのか一切分からない、、、。


 沸々と身体が震えて喜びに似た心の揺さぶりを感じた。




 'まさに、これが好奇心なのか'



 


この世界では知らない事の方が逆に少ないぐらい生き続けた俺はこれから想像のつかない未知の体験が来る事にワクワクしていた。

 



 ほんの少し、ほんの指先程度ではあるが、楽しくなってきた。




 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

これから、徐々に登場人物を増やしていきたいと考えています。

これも、プロローグで良かったかな笑。


 

 

  

 

 

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

生きるのが面倒になった俺は何が起こっても知らない @oraganbaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ