第41話 安藤神奈

何でイメチェンしたかって?

愛ちゃんにそっちの方が似合うって言われたから。


「カンナは、派手めのファッションが似合うよ」って、コーディネートしてもらった時は楽しかったなぁ。


それまでは、お母さんが買ってきてくれた服だけを着てた。愛ちゃんいわく、お母さんのセンスは良いらしいから、服がダサいって言われたことはなかった。


私も、特に不満もなく着ていた。


服で気分が変わるっていう概念も愛ちゃんに教えてもらったんだけど、今みたいなファッションになってから、少しだけ自信が出てきた。


クラスのカースト上位の娘に物怖じしなくなったし、外に出るのも楽しくなった。


今の私の1番の楽しみは、愛ちゃんと古着屋巡りすること。


ん?


あぁ。一回二月先生にも会ったね。愛ちゃんに聞いたの?


・・・うん。ちょっと苦手かな。


もう卒業した部活の先輩がね、二月先生のクラスだったんだよ。


結構頻繁に二月先生の話が出てた。恋愛の悩みを聞いてもらったとか、体育祭が終わってから、全員にアイスを奢ってくれたとか・・・そういう、典型的な「良い先生」のエピソードをよく聞いてた。


そういう話を聞くたびに、私は「頑張ってる」先生なんだなぁっていう感想を持っていた。


今時、そんなことしても、何の徳もないどころか、暇な保護者から差別だー、なんて訳のわからないクレームを受けるリスクがあるのに、平成中盤くらいの教師ドラマみたいなことをするのは、きっとすごく疲れる。


私は、二月先生が「可哀想」だと思ってた。

そこまでするのは、もはや「生徒の奴隷」だよ。

生徒が何をしても笑って許す。


一見立派だけど、何がそこまでさせるのかが私には分からなかった。

どうせ、私達は卒業したら担任の先生なんて忘れちゃうのに。


で、今年、二月先生のクラスになって、やり方を大きく変えたことに気づいた。

無駄なことは極力省いて、クラスをまとめる方法に。


その気持ちが分かるから、余計に痛々しく感じる。


最初からそうしろよって思う。


しかも、そのルールを完全には守れてない。


やり過ぎる癖は治ってないところが、見ていて恥ずかしい。


・・・ごめん。言いすぎだね。


悪い人じゃないのは分かるけど、私はどうにも苦手なの。


でも、愛ちゃんは気にいってるみたい。


別にそこで嫉妬なんかしない。私は愛ちゃんの恋人でも何でもないわけだし。


ん?


文化祭を復活させたこと?


そうだね。皆騒いでるけど、私はそこまでじゃないな。

だって、愛ちゃんだもん。それくらいするよ。


学校が相手でも、怯むわけがない。

今更、愛ちゃんの魅力に気づいたにわかとは違うよ。


え?顔が怖い?


ごめんごめん。愛ちゃんのことになると、熱くなっちゃうんだよ。


私にとっての理想の女の子。


あ。もちろん優衣ちゃんも可愛いよ?


でも、決定的な差があるの。


私の言語化能力だと、完璧に表現するのは難しいんだけど・・・そうだな。

一緒にいると幸せな気持ちになれるって感じかな?


愛おしい。私なんかが友達をしていて良いのかと不安になるくらいの多副感を与えてくれるのは、愛ちゃんだけ。


だから、愛ちゃんが復活させたこの文化祭は、絶対に成功させる。


優衣ちゃんも手伝ってね。


今年の文化祭は楽しくなりそう!


私達のクラスは、『ロミオとジュリエット』の演劇。ロミオ役が愛ちゃんの時点で生きてて良かったって思える。


ジュリエット役がまだ決まってないけど。


え?私が?


無理無理無理!


愛ちゃんとのダブル主演なんて役不足・・・これは意味が違うんだっけ。不相応だよ。


ん?でも、このままじゃ一生決まらない?


確かにそうだよね。


他のみんなも、遠慮して立候補しないし、一番仲のいい私がジュリエット役をやるのが及第点なのかも。


・・・分かった。もし、みんなが許してくれたら、私がやるよ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る