第39話☆ リフレイン
アルカナには《不屈の鯱》に入ってもらう――。
アルカナには《不屈の鯱》に入ってもらう、《不屈の鯱》に入ってもらう、入ってもらう、もらう……。
ロランさんの言葉が頭の中でリフレインします。
あのアルカナと同じチームになるなんて、葵ちゃんや他の魔法少女に知られたどうなってしまうのでしょうか……。
敵に寝返ったと判断されても仕方ありません。わたしが逆の立場でもそう思ってしまいます。
ロランさんの部屋を出たわたしは、呆然としたままアルカナを連れて隣にある自分の部屋にやってきました。
「まったく、なんであたしがあんたと一緒の部屋で寝なきゃいけないのよ」アルカナは不満そうに唇を尖らせます。
そして彼女はわたしの部屋へ移ってくるなり、一つしかないベッドに腰を降ろして足を組みました。
「……ねぇ、当たり前のようにベッドを使わないでくれる?」わたしは苛立ちを声に載せて言います。
「はあ?」
不服そうにアルカナが顔を歪めたので、わたしも負けじと睨み返しました。
しばらく睨み合っていっていたわたしたちでしたが、 意外なことに先に折れたのはアルカナの方だったのです。
「まあ、いいわ。床で寝てあげる」
小さな溜め息を吐いたアルカナはベッドから立ち上がりました。
え……、あれ? 妙に素直です。残飯ばかり食べていたせいで頭がおかしくなったのでしょうか?
「ここなら河原に比べれば全然痛くないしね」
「……」
「でも毛布は一枚貸しなさいよね」
「あ、うん……、どうぞ」
呆気に取られるわたしが差し出した毛布を「どうも」と受け取ったアルカナは、毛布を床に敷いてその上にゴロリと寝転び、クルクルと体に巻き付けて芋虫のようになりました。
「はぁ~、極楽ね!」
ずいぶんと標高の低い極楽があったものです。天保山より低いのではないでしょうか。
喉の奥に小骨が刺さったような抵抗感を覚えながらも、わたしはアルカナが退いたベッドに横たわりました。
芋虫になったアルカナの姿がすべてを物語っています。きっと彼女は彼女でこの世界に来て苦労していたのでしょう。
なんだか突然、彼女が不憫に思えてきました。
ロランさんの言う通り、敵味方の関係だったといえ今は互いに見知らぬ地を生きる同じ魔法少女、わたしたちは同じ境遇にいます。
わたしのベッドはふかふかとは言えませんが、自分だけベッドを使うのは気が引けます。
「はぁ……」
しょうがないですね、今日くらいはベッドを使わせてあげましょう。わたしの寝床は野営用に購入したマットを床に敷けばなんとかなりますし。
「ん? なによ、ジロジロ見てさ」
わたしの視線に気付いた芋虫のアルカナがゴロリと転がりました。
「まさかあんた、あたしの寝込みを襲う気じゃないでしょうね?」
「そんなことしません! ただ……こ、今夜だけ、わたしのベッドで寝ていいから……、こっちに来な……さいよ、アルカナ」
わたしがそう告げるとアルカナはキョトンとした顔をした後、「あそう」と言って芋虫のまま腰を逸らしてピョンとネックスプリングで立ち上がると、そのまま倒れ込むようにベッドの上に乗り移ってきました。
「……え?」
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