第37話☆ どうせい
「ちょっ!? ちょちょちょっちょっとロランさぁん!!」
「まあ、いいじゃないか。かつての敵だとしても、別にこっちでも敵対する必要はないんだ。同じ世界から来たたったひとりの同士なんだから、力を合わせて助け合うべきだと俺は思うぞ」
「そんなこと言っても無理ですよ! ほら見てください、彼女すごく悪くて邪悪な顔をしてます!」
わたしはくつくつとほくそ笑むアルカナを指差しました。
「悪くて邪悪とは失礼ね。でもいいこと訊いちゃった。我に勝機ありって感じ」
「くぅっ!」
奥歯を噛むわたしに彼女は胸に手を当てて勝ち誇ります。
「なんたってあたしはたった一分で変身できるんだから」
「えッ!?」
驚きでした。彼女だって元の世界ではコンマ数秒で変身できたのです。
それがわたしと同じような制約があるということは、つまり――。
「そうよ、こっちの世界に来てから変身に制約が掛かっているのはあたしも同じなの! まさかと思って聞いてみたら三分も掛かるだなんてね……、あたしの方が断然有利だって分かって良かったわ! なんたって、あんたは三分、あたしはたった一分なんだから!」
「う、うう……」
考えてみれば当然のことです。
だって、シャイニーピンクだと分かった時点で、すぐに変身してわたしを倒すことだってできたのですから。
そうしなかったのは、ただ単にできなかったから。
「しかも三分も変身状態を保てるのよ!」
そう言ってアルカナは胸を張りました。
「え?」と意図せず、わたしの口から声が漏れます。
「え? なによ??」
「三分しか変身していられないの?」
「そ、そうだけど? 『しか』ってどういう意味よ、あんたもどうせ同じくらいなんでしょ?」
困惑するアルカナに、わたしはくつくつとほくそ笑んでいました。
「わたしにはそんな制限ないから」
「嘘よ……」
ショックを受けるアルカナは、なぜかロランさんに顔を向けて彼を凝視します。
肩をすくめる彼にわたしは『言ってやってください』と視線を投げかけました。
「本当だよ。一度変身してしまえばイノリは継続して変身状態を保つことができる。正確な時間までは計ったことがないけど、たぶん一時間くらいは余裕だな」
「うそ……」
「えっへん!」
今度はわたしが胸を張って勝ち誇ります。
「なら先に変身しちゃえばこっちのものよ!」
ステッキを取り出して祈りはじめたアルカナに、わたしは「させる訳ないでしょ!」と襲い掛かります。なによりロランさんのベッドから引きずり降ろしたいのです。
「ちょっとやめなさいよ! いた! なにするのよ! 変身の途中で攻撃するなんて反則なんだからね!」
「そんなご都合主義こっちの世界にはないのよ!」
ベッドの上で揉み合い取っ組み合うわたしたちを引き離したのはロランさんでした。
「待て待て! やめないかふたりとも、同じ魔法少女同士仲良くするんだ!」
いくらロランさんの頼みでもそれは無理な話です。
「アルカナ、早くここから出ていきなさい!」
「いやよっ! 出ていからないもんね! 今日からここに住むんだから!」
「え? ここってロランさんの部屋に?」
「そうよ。だってそのつもりで来たし、ロランもそう言ったし、そうよね?」
「あー、うん、言ったには言ったな……」
「だ、だめに決まっているでしょ!」
「なんであんたが決めるのよ?」
「そ、それは……」
「ロラン、感謝しなさいよね。今夜からこんな美人と暮らせるんだからあんたも抱腹絶倒でしょ?」
アルカナは前屈みになって胸を強調した誘惑するようなポーズを取りました。いかにも安っぽいポーズです。
「え、あ、うん? でも爆笑することではないかな……」
「それを言うなら恐悦至極でしょ!!」
思わずツッコんでしまったわたしは、自分でも信じられないことを口にしてしまったのです。
「アルカナ、あなたは今日からわたしの部屋に住みなさい!」
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