第23話☆ にゅうがく
おはようございます。因幡いのりです。
みなさんは転校した経験はありますか?
わたしはありません。今回が初めての転校です。
といっても異世界の話ではありますけど。
「はじめまして、イノリと言います。よろしくお願いします」
みんながわたしを見ています。どきどきでソワソワで、居心地は良くありません。
転校生してきた葵ちゃんの気持ちが分かりました。彼女もあのクールな表情の裏側では、こんな気持ちだったのでしょうか。
物珍しそうに、品定めするような、値踏みするような、好意と興味、懐疑や猜疑がこもごもになった視線が集まります。
まるで動物園のパンダになった気分です。いえ、パンダを懐疑の目で見る人はいないので、例えるなら深海魚あたりでしょうか。
この街ではわたしみたいな東方人は珍しいそうなので、仕方のないことです。
わたしが入学した魔法学校は、正式にはシュヴァルニ魔導学園といいます。
いわゆる〝普通〟の学校を想像していたのですが、大学といった方がイメージ的にはピッタリです。
広い敷地の中にいくつも校舎が建っていて、教室は階段状になっていて、席も横に長いベンチタイプです。
この学校に通う生徒は全員魔力を持っていて、厳しい試験でふるいに掛けられて入学してきた優秀な子供たちばかりだそうです。
教室を見回したところ、男女の割合は六対四くらいでしょうか、ほとんどが同性代の人たちです。でも中には明らかに小学生のような小さな子もいます。実力主義ということでしょう。
事前に支給された学園の制服は、魔法使いの黒いローブ的なアレでした。
黒一色ではなく裏地が真紅で、留め具代わりのブローチが付いていたり、校章のエンブレムが刺繍されていたり、なかなか素敵なデザインです。
学園には魔術科と魔術開発科と魔導剣士科の三つがあります。わたしが選択したのは、もちろん魔導剣士科でした。他意はありません、全然ありません。どうせなら剣術を習ってみたかっただけです、ホントですよ。
ロランさんはこの世界の魔術を学ぶことで元の世界に帰る方法が見つかるかもしれないと言っていました。果たして帰還のヒントを得られるのでしょうか。
ですが、帰還することに対して私の中でモヤモヤした部分があるのに気付いてしまったのです。
帰りたいか帰りたくないか問われれば当然帰りたいです。家族も友達も心配しているでしょう。魔法少女としての使命もあります。
けれど、今の生活が楽しくないのかと問われたら楽しいのです。そう、楽しいと感じるのです。この世界に愛着が湧いてしまっているのです。
ロランさんが色々考えてくれて一生懸命になってくれるのは嬉しいのですが、元の世界に早く帰ってほしいと言われているみたいで少し悲しい気分になってしまいます。
わたしはどうすればいいのでしょうか。どちらも失いたくはないのです。わがままなことは分かっています。
叶うのならば、どちらの世界にも行き来できれば最高なのですけど……。
ん……? それです!
どちらの世界も行き来する方法を見つければいいのです!
こちらに来て、帰れるのなら一方通行ではありません。可能性はあります。そして、やはりヒントはアルカナの魔法だったのです!
彼女の魔法を再現できれば道は開けます!
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