第24話☆ クラスメイト
「どこから来たの?」
「学園長先生の親戚ってホント?」
「魔術は何系が得意なの?」
「どこに住んでるの?」
「その髪の色って地毛? 素敵な色ね!」
ホームルームと最初の授業の間の時間、わたしはクラスのみんなから質問攻めにされています。
みなさんとてもフレンドリーでびっくりです。こっちの同世代はみんなこうなのでしょうか。
たぶんロランさんが言っていたように東方人が珍しいだけかもしれませんけど、面映ゆいです。
それから、わたしが冒険者だということは内緒だそうです。この学校に通うほとんどの生徒が冒険者を目指しています。なので、現役の冒険者が生徒としているのは好ましくありません。
彼らの質問にもあったように、学園長のモニカ先生とは遠い親戚ということになっていますけど、日本人のわたしとは全然似ていません。
異母兄弟の妾の連れ子くらい複雑な家庭設定が必要です。
今さらですけど、わたしはなぜこっちの世界の言葉が話せるのでしょうか……。なぜか日本語ではないことは理解できます。
所々はぐらかしながら質問に答えていきますが、需要が供給に追いつかなくなってきました。
聖徳太子と同等のスキルが必要なこの場面で助け舟を出してくれたのは担任のライザ先生です。
「イノリさん、学園長が呼んでいます」
「あ、はい! いま行きます!」
名前を呼ばれたわたしは席を立ちます。
「他のみなさんは席に着いて、授業を開始します」
ライザ先生の淡々とした口調にクラスメイトたちは素直に従い、自分の定位とする席へ戻っていきました。
教室を後にしたわたしは学園長室に向かいました。
しばらくの間、わたしはクラスメイトとは別の授業を受けることになっています。理由は単純です。この世界の魔法についてなんの知識もないわたしは授業についていけないからです。
そのため、一定のレベルになるまでは学園長先生が直々にわたしを指導してくれることになっています。充実のバックアップ体制です。それでも、わたしの魔法の研究も兼ねているのでウィンウィンということらしいです。
学園長室のドアをノックすると、「どうぞ」と中から聞こえてきました。
「失礼します」
プレジデントチェアーに座る女性がコバルトブルーの瞳でわたしを捉えます。
髪も瞳と同じコバルトブルーで、落ち着いた雰囲気が大人の女性といった感じがします。お母さんよりも少し若いこの方の名前はモニカ=シュヴァルニ、この学校の学園長でとても綺麗な人です。
「そんな畏まらないで、私とあなたは契約上対等なんだから」
「で、ですが……」
モニカ先生は首を振ります。
「魔術士同士の契約は命よりも重いのよ、覚えておきなさい」
「は、はい!」
急に態度を変えられないわたしにモリカ先生は困り顔で小さな溜め息を付きました。
「まあいいわ、じゃあそこに座って」
促されたわたしは応接用のソファーに座ります。モニカ先生はデスクの引き出しからチューインガムくらいの長細い紙を取り出して、わたしに見せます。
「それは?」とわたしは訊ねました。
「これは私が開発したシュヴァルニ式魔力測定紙よ、一枚一プラタね」
一枚一プラタ……、確か一プラタが銀貨で一コプレが銅貨、十コプレが一プラタだから、一プラタで円相場換算だと、だいだい三千円くらい。
え? こんな紙で三千円もするんだ……。
それはわたしとロランさんの食費一日分です。
「これを口に含むと唾液に含まれる魔力に反応して色が変化するの。その人に魔力があれば赤、なければ青に変わる。赤色が濃いほど体内の魔力値が高いことを示す。けど、青色の場合は、どれだけ薄くても濃くても魔力ほゼロよ」
なるほど、リトマス紙みたいなものですね。
モニカ先生から魔力測定紙を受け取ったわたしは、さっそく舌に乗せて咥えてみます。
言われたとおり心の中で十を数えて取り出してみると、紙は白色のままでした。
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