第46話
藤田健太郎総理大臣は、病室のベッドに横たわっている。渡辺光宏官房長官が入室し、現状を報告する。藤田はため息をつく。「まさか、斉藤防衛大臣が警察に働きかけて、中華連邦による関与を公表させるとは…」とつぶやく。
藤田は斉藤防衛大臣を罷免することも考えた。その上で、情報が不正確だったと伝えれば、あるいは問題は収束したかもしれない。しかし、先手を打たれてしまったため、その手段は使えなくなっていた。
斉藤防衛大臣は先ほど、メディアに向けて発言した。彼は力強い口調で、「中華連邦によるテロであり、相応の対応を取ること、強硬な立場を取らざるを得ないこと」と述べた。また、不確かな情報に踊らされず国民に冷静な対応を呼びかける藤田総理に対して、斉藤防衛大臣は厳しい言葉を投げかけた。「中華連邦の利益を中心に考えているのではないか」とまで言い放った。
報道陣は緊張感を漂わせながら、斉藤防衛大臣にさらなる質問を投げかける。「防衛大臣、具体的にどのような対応を取るつもりですか?」
斉藤防衛大臣は冷静に答える。「まずは、我々の情報収集体制を強化し、中華連邦の動向を把握することが重要です。また、同盟国との連携を深め、必要に応じて軍事的対応も辞さない姿勢を示すべきだと考えています。」
報道陣からさらなる質問が飛ぶ。「藤田総理との意見の違いについてはどうお考えですか?」
斉藤防衛大臣は一瞬ためらいを見せるが、すぐに答える。「私は国民の安全が第一であり、それを守るためには強硬な対応が必要だと考えています。藤田総理との意見の違いはあるかもしれませんが、私は日本国民のために最善の対応を取ることをお約束します。」
世論は一気に斉藤防衛大臣に傾く。各地で中華連邦への対抗措置を求める声と、藤田総理大臣辞任せよとの声が上がる。国民の反発は日に日に強まり、藤田総理の立場は危うくなっていく。
そしてついに、斉藤大臣から重大な言葉が発せられる。
彼は記者会見で「臺灣民主共和国に自衛隊の基地を建設する計画について言及したい」と切り出す。
報道陣は驚きの声を上げるが、斉藤大臣は堂々と続ける。「中華連邦に対する抑止力を高めるため、臺灣民主共和国と連携し、自衛隊の基地を建設することを検討しています。これにより、わが国の安全保障をより確かなものにすると同時に、アジア太平洋地域の平和と安定にも寄与すると確信しています。」
現在、臺灣民主共和国は世界の96か国がその独立を承認している。その中には日本も含まれている。一方で、米国は今のところ独立承認については留保している。また、自衛隊は専守防衛の立場から、臺灣民主共和国に軍事基地を建設していない。
斉藤防衛大臣は、記者会見でさらに言及し、「軍事同盟を結んでいる以上、基地を建設しない方が不自然。臺灣民主共和国を守るために、軍事基地を建設すべき」と述べた。彼の言葉は、国内外に衝撃を与え、様々な意見が飛び交う。
藤田総理は、この発言を聞き、珍しく声を荒げて渡辺光宏官房長官に言った。「中華連邦の立場に立てばわかるはずだ。中華連邦は臺灣民主共和国の独立を認めていない。つまり、中華連邦にとって、臺灣民主共和国は自国の領土だ。そこに自衛隊が基地を建設するというのは、侵略行為にも等しいと映るだろう。」
渡辺官房長官はうなずいて言う。「総理、その通りです。私たちがどう対応すべきか、慎重に検討しなければなりません。」
藤田総理は深刻な表情で答える。「そうだ。ただ、世論は斉藤防衛大臣に傾いている。彼の言葉が、国民の不安を煽るだけでなく、中華連邦との関係悪化にもつながっている。」
メディアは連日報道を行い、政治の動向が注目されていた。「藤田総理辞任間近」との報道も目立ち、国民の関心が高まっていた。
辞任となれば、斉藤防衛大臣が次の総理と目されている。彼の強硬な態度は、国民の不安に訴えかけ、支持を集めていた。一方で、藤田総理の慎重な対応は、国民に受け入れられにくく、彼の立場は危うくなっていた。
藤田総理は、渡辺官房長官とともに対策を練る。彼らは、斉藤防衛大臣の提案が、国際関係を悪化させる可能性があることを説明し、国民に冷静さと慎重さを求めるよう努力していた。
しかし、藤田総理の支持率は下がり続ける。
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