第43話

面会が終わると、八神篤史は大統領府へ移動した。一方、音道貴仁、横山啓太、音道純礼の3人は国防省に残り、実務部隊のメンバーと対面することになった。参謀長の李瑞昌(リー・ルイチャン)、空軍の長官である黄文豪(ファン・ウェンハオ)、ドローン部隊長の陳建宇(チェン・ジェンユー)と次々と面会した。


まず、李瑞昌参謀長との挨拶の際、貴仁は「お会いできて光栄です、李瑞昌参謀長。これからよろしくお願いいたします」と言い、李も「音道さん、こちらこそよろしくお願いします。共同で問題解決に取り組みましょう」と返答した。落ち着いた雰囲気を持つ中年の男性で、彼の眼差しには冷静さと緻密な思考が感じられた。貴仁は彼が指導力に富んでいるだろうと感じ、まさに参謀長に相応しい人物だと思った。


続いて、黄文豪空軍長官と対面した際には、純礼が「黄文豪長官、はじめまして。我々の協力が実りあるものになることを願っています」と挨拶し、黄文豪も「音道純礼さん、初対面ですね。これからお互い協力し合い、中華連邦の脅威に立ち向かいましょう」と応じた。黄文豪空軍長官は、短髪に切り揃えられた髪型と整った顔立ちが印象的な男性であった。貴仁は彼からは若々しいエネルギーと向上心を感じ取り、空軍の要職にあるだけあって優れた人物だと思った。


最後に、陳建宇ドローン部隊長と面会し、啓太が「陳建宇部隊長、はじめまして。我々が提供する技術が、あなたの部隊の戦力向上に貢献できることを願っています」と言った。陳建宇は「横山啓太さん、お会いできてうれしいです。我々も音道貴仁さんたちの力を借りて、戦局を有利に進めたいと考えています。これからよろしくお願いします」と、期待に満ちた表情で応じた。陳建宇ドローン部隊長は、小柄で痩せた体型ながらも、その表情には意志の強さが感じられた。彼の瞳は機敏さと集中力に満ちており、貴仁は陳建宇がドローン部隊をしっかりと統率しているだろうと確信した。


挨拶が終わると、音道貴仁、横山啓太、音道純礼の3人は、ドローン部隊長の陳建宇と詳細の打合せを行った。貴仁たちは、天風の運用方法や訓練の方法、さらにPT-RFID技術の概要を陳建宇に説明した。


陳建宇は、臺灣民主共和国のドローンである「翔龍(シャンロン)」についても言及した。翔龍は、旧式であり性能は天風と比較しても劣ると貴仁は感じた。横山啓太も同じ印象を持っていたようだ。


純礼は、翔龍に対するPT-RFID技術の導入について提案した。

「翔龍にPT-RFID技術を導入することで、ミリメートルの100分の1の誤差で測位を行うデバイスが搭載され、ドローンの位置だけでなく姿勢や向きも計測できるようになります。」と純礼は説明した。

そして、「メッシュ型のPT-RFIDノードを各所に配置することで、遠隔操作性能が格段に向上します。」と続けた。


陳建宇は純礼の提案に興味を示し、じっくりと考えた後、「純礼さんの提案は非常に興味深いです。翔龍の性能向上は我々にとって重要な課題ですので、この提案を前向きに検討したいと思います。」と回答した。これにより、翔龍の性能が向上し、日米臺灣の防衛協力が一層強化される可能性が高まった。


続いて、陳建宇は中華連邦のSTEAドローンである雷鳴(レイミン)の性能について言及する。「雷鳴は、GPSを用いて航行し、見つけた者に対して攻撃するシンプルな仕組みです。」と陳建宇は説明した。さらに、「民間人を含めて友軍以外は無差別に攻撃するため、危険度が非常に高いです。」と付け加えた。


陳建宇はまた、「有事の際は、数千の雷鳴が飛来するとの予測があります。これに対処するためにも、天風や翔龍の性能向上が急務となっています。」と語り、日米臺灣の防衛協力が一層重要であることを強調した。


啓太が雷鳴への対策の概要を説明し始めた。「雷鳴のAIは、人や敵の兵器を見つけた場合は正確に攻撃することができるが、回避行動についてはそれほど柔軟ではありません。人が操縦し遠隔操作できる天風であれば一方的に撃破可能だと考えられます。」


陳建宇が尋ねる。「では、翔龍でも同様のことは可能なのでしょうか?」


啓太は首を横に振り、「難しいと思います。」と回答した。

「雷鳴にはPT-RFID技術が導入されていないことが大きな問題です。PT-RFID技術では、わずか数ミリ秒のラグで搭載されたカメラからの映像が届く上、突風などの外乱や急旋回時にも姿勢をシミュレーションと同等の動きに制御する仕組みがあります。しかし、雷鳴にはそれがありません。」


「つまり、回避行動を取る雷鳴を撃破するのは、翔龍では難しいということですね。」と陳建宇が理解を示す。啓太はうなずいた。


啓太は、鉄龍と疾風虎についての懸念も伝えた。「これらの兵器は、装甲が厚く天風の火力では撃破が難しいことに加え、建物や木の陰に隠れて行動することが可能なため、天風では分が悪いと言わざるを得ません。」


陳建宇はその事実を受け入れ、「確かに、臺灣民主共和国は海に囲まれており、中華連邦による地上兵器の投入は難しいと思われますが、それでも可能性を無視するわけにはいきません。我々はそのリスクに対処するための戦略を検討し、上層部に進言する必要があります」と述べた。


陳建宇は続いて訓練計画について話し合いを始めた。「我々は、ここ8か月間で4000人のドローン操縦技術者が必要だと考えています。まず最初の3か月でリーダークラスの100名に操縦を教育しましょう。そのうち1.5か月はシミュレーターで学び、残りの1.5か月で4000人への教育を行います。」


啓太はドローン操縦の指導が担当となるが、最初の段階では貴仁と純礼も手伝うことになるだろう。一方で、貴仁と純礼は技術部門への技術移転も並行して行う必要がある。PT-RFID技術や制御理論、運用方法、メンテナンス方法などを8か月かけて伝授する予定であった。


啓太はすぐにリーダークラス100名への天風操縦教育プランを提示する。

第1週目 - 第2週目:基礎理論と操縦技術

ドローンの基本的な構造と仕組み

天風ドローンの特徴と操作方法

PT-RFID技術と制御理論の基本

空中機動や地上走行の基本操作


第3週目 - 第4週目:シミュレーターによる訓練

実際の天風ドローン操作に近い環境でのシミュレーター訓練

状況判断と適切な対応方法の習得

敵ドローンとの戦術的な対抗手段の理解と実践

緊急時の対処法や故障対策の訓練


第5週目 - 第7週目:実機による訓練

天風ドローンの実機を用いた操縦訓練

実際の状況での機動性や戦術の適用

チーム単位での連携と情報共有の練習

継続的なスキル向上と自己評価


第8週目 - 第10週目:実践シナリオと評価

仮想敵を用いた実践的なシナリオ訓練

複数の天風ドローンを用いた連携戦術の実践

模擬戦におけるパフォーマンスの評価とフィードバック


第11週目 - 第12週目:教育スキルの習得と最終試験

トレーニングスキルや指導方法の習得

教育現場での問題解決や改善手法の学習

最終試験とスキル評価


貴仁、純礼、陳建宇の3人はこの計画に合意した。

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