第41話
臺灣民主共和国への出発の日が来た。八神篤史議員の訪中に合わせての出発だ。純礼、啓太、貴仁の3人は同じ政府専用機に搭乗することとなった。
要人専用の出発ゲートから搭乗する。見送りに来た播本ありさと、ありさの父・播本潤はと純礼、啓太、貴仁と会話する。
「気をつけてね。」ありさは純礼たちに笑顔で言った。「そして、無事に戻ってきてください。」
「ありがとう、ありさ。」純礼は彼女に感謝の言葉を述べる。「心配かけないように頑張るから、待っててね。」
啓太も貴仁もありさに感謝の言葉を述べる。播本潤は深刻な顔で3人に言葉をかける。
「純礼君、啓太君、貴仁君。これから向かう先は非常に厳しい状況だ。危険がいっぱいだろう。しかし、お前たちならきっと大丈夫だ。任務を全うし、日本に帰ってこい。」
純礼は播本潤に頷き、「わかりました、播本さん。必ず帰ってきます。」と誓う。
3人は八神篤史議員とともに政府専用機に搭乗し、臺灣民主共和国へと向かう。ありさと播本潤は見送りの場所で手を振り、機体が空へと消えるまで見守る。そして、純礼たちが無事に帰ってくることを祈りながら、空港を後にした。
臺灣民主共和国に到着した。到着後、迎えの政府専用車を待つ間、音道貴仁は八神篤史にあいさつする。
「八神さん、はじめまして。高田重工業の音道貴仁です。よろしくお願いいたします。」
八神が所属する桜井派は、伝統的な価値観や文化を重視し、国家主義的な政策を支持している。彼らは、自衛隊の強化や国防政策の強化を訴え、外交政策では力強い姿勢を示すことを重要視している。高田重工業には良い印象を持っていないようだ。このため、八神は貴仁に高圧的な態度で応じる。
「音道さんね。桜井派としては、高田重工業が作り出す兵器に対して懸念があるんだよ。特に、あなたたちが提供するPT-RFID技術については、どうして消極的なのか、理由が知りたいね。」
貴仁は不愉快な思いをしつつも、冷静に受け答えする。
「八神さん、PT-RFID技術に関しては、確かに慎重な姿勢を取っています。しかし、それは技術が悪用される可能性を考慮し、適切な対策を講じたいという意図からです。私たちは、技術の利用者が国際法や人道を遵守することを確認した上で、提供を検討しています。」
八神は少し考え込むが、貴仁の説明に納得しない様子であった。
「それでも、我々から見れば、高田重工業は国益を最優先に考えていないように映るんだ。」
貴仁は八神の言葉を受け止め、深くうなずく。
「八神さんのおっしゃる通り、我々高田重工業は国益を重視しています。しかし、それと同時に、国際社会での信頼を築くことも大切だと考えております。技術提供に関しては、国益と国際社会での信頼をバランス良く両立させることが、最終的には我が国の利益になると信じております。」
八神はしばらく無言で貴仁の言葉を聞いていたが、最後には重いため息をついた。
「分かった、音道さん。あなたたちの考えには理解できる部分もある。しかし、忘れないでほしい。時には強硬な姿勢を見せることも、国益にかなうことがあるんだ。」
「ご意見ありがとうございます。その点も十分に考慮して、我々高田重工業は今後も技術提供に関して慎重に判断してまいります。」
八神と貴仁達3人は別々の車に乗り込み、臺灣民主共和国国防省の庁舎へ向かった。貴仁達が乗った車内では、純礼が貴仁に対してねぎらいの言葉を述べた。
「貴仁、さっきの八神さんに対する対応、本当によく我慢できたね。あの状況で冷静に説明できるなんて。」
貴仁は苦笑しながら答えた。
「まあ、こういう場面でも冷静でいなければ、最悪の結果につながることもあるからね。」
その一方で、啓太は八神の態度に怒り心頭の様子であった。
「あの八神篤史、いい加減にしてほしいよ。自分たちの考えを押し付けるだけで、他人の意見に耳を傾けようとしないなんて…。」
純礼も啓太の気持ちに同意する。
「確かに、あの態度は問題があると思うわ。でも、彼らも自分たちなりに国のために考えて行動しているんだと思うの。だから、せめて我慢して対応していかなくちゃね。」
啓太は純礼の言葉にうなずき、貴仁に向かって謝罪の言葉を述べた。
「ごめん、貴仁。ちょっとカッとなってしまって。でも、これからもお互い協力して、無事に任務を終えられるよう頑張ろう。」
貴仁は啓太の言葉に微笑み、力強くうなずいた。
車は国防省の庁舎に到着し、貴仁たちはこれからの任務に備え、緊張感を抱えながら庁舎へと足を踏み入れた。
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