第7話 名称しがたき夢(※残酷系)
「それではこれから人類を救いましょう。」
空は赤く、大地は黒く、瓦礫が多く積まれたどこかの国。自分はそこに立っていた。前知識も何もなく、太陽が見えない空と瓦礫を眺めていた。
自分の従者のように斜め後ろに女性が1人側にいるが、人類救済宣言をしたのは彼女であり、視線はただ前を向いていた。
「貴方にも見えるでしょう、まだ救われる人、もう救えぬ人、選別できる目を授かっています。」
女性は淡々と言う、目線をこちらに向けずただ前だけを見ている。此処には自分しかいないから自分への言葉だとはわかるが感情が見えない人間というのは些か不気味だと思った。ところが自分はホラーや世紀末系の夢に慣れすぎていた。
どうやってそんなもん確認するんだよなんて思考が切り替わり、不意に下を向いた自分の目の前に、電子モニターが現れた。ゲーム起動音のように、唐突にブォンと。
モニターには3つの黒い人型があり、赤、青、緑に色分けされていた。なお色分けされた人型がいる、というだけで何処にいるかなどのナビはない。
「赤だけを救いなさい。」
自分が赤で区切られた人形を見つけたことを察したらしい女性はそう言った。
「赤は救われるべき人なのです。」
なんのこっちゃと顔を上げた自分と、女性と初めて目があった。
灰色の長い髪、綺麗な金色の目を嬉しそうに歪めて、口を、にいっと吊り上げた。目はこっちを向いている。でも『どこを見ているかわからない』瞳だった。
「赤きものは死によって救われます、死こそこの地からの救済です。ああ、まだ救われる人がいたなんて……!!」
灰色髪で金色目の美少女と言える容姿で言っていることがアウト過ぎてやっべぇこいつ、と思って現実逃避のために初めて己の格好を見ようと視線を下げた。全身真っ黒の長いコートでもう明らかやばい組織の一味で己の中の厨二病が残っている事実に落ち込んだ。
さてそもそもどうやってその赤きものとやらを殺せというのか、なんて思った時、右手に唐突な重量感。
見ると真っ黒いゴツい銃がいつの間にか出現していた。瞬間できることを察してしまった。厨二病って怖い。
「貴方はただそこにいるだけでいいのです。彼らから救いを求めにきます。」
傅く女性は嬉々としている、しかし手ぶらだ。お前はやらんのかい。
「彼らは手を広げ、貴方に救いを求めにくるでしょう。その胸を打ち抜いてあげなさい。」
遠くから赤で縁取られ、黒で塗りつぶされた人型の何かが走り寄ってくる。人型だが四つん這いで獣のように走ってくる。あれが救われるべき人らしい。
自分は銃を持たない左手を持ち上げた。広げると、白とオレンジの光が揺れている。
「ああ、それを使っても構いません。貴方は救済するのです。赤いものたちを、死を以て救っていくのです。」
左手を向ける。光が手から離れて波動砲みたいに迫っていたその人型を包み込んだ。
「さあ探しましょう、救済されるべき人はまだまだいるはずです。」
赤い人形がまた一つ、モニターに追加された。
「ああよかった、貴方がいてくれて。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます