第3話② 王子様登場
このまま快進撃を続けられると僕が他のメンバーにかけたデバフがバレてしまうかもしれない。早めにデバフをかけて潰さなければ。そう思って
「こんばんは。凪くんだよね、妖精使いの。僕は空流、よろしく」
空流は確かに前評判通り美青年的な容姿をしていた。イケメンというやつだろう。テイムの王子様という呼び方を蓮斗や他のクランメンバーがしていたが、その名の通りの王子様が現れた。ただ唯一想像と違って驚いたのは胸がわずかにあったことだ。
(女性?)
「女だったのか」
「うん、みんなから聞いてなかった? あ、別に気とか使う必要はないよ。この格好は好きでしてるだけだから。女の子として扱ってくれて構わないよ」
「はあ……」
「そうそう、実はね、ずっと凪くんに会いたいと思っていたんだ」
「どうして?」
「前置きから話すから少し長くなるけどいい?」
『もうデバフはかけたからどうでも』「いいよ」
(早っ!)
「この前見つかった謎の宝箱。確か見つけたのは凪くん達だったよね」
否定する必要もないので僕は頷いておく。
「僕達人間がこの世界にやってきて一年。これまでにこんな宝箱が見つかったことはない。つまりこの宝箱が示すのはこの世界に人間以外の高度な文明を持つ生物がいる、かもしれないということだ」
「…………」
「さらにこの小瓶に入っていた薬、幸いにも蓮斗くんの妹さんが飲んだら病が癒えるという結果になった。
実は人間と妖精で効果がある回復魔法が違うんだ。体の作りが違うんだから当たり前だよね。それと同じように薬にも種族によって良し悪しがあるようなんだ。
もしこれが妖精を回復させるための薬だったら蓮斗くんの妹さんの体に何か悪影響があってもおかしくなかった。つまりこれは人間用、もしくは人間に体の作りが近い種のための薬なんだ」
「…………」
「仮に異世界人としようか。どうかな? これだけ揃えば異世界人がいると考える方が自然でしょ」
『やっべ』
(なんでこんな絶対怪しまれるようなもん考えなしで用意したんですか)
『人間にこんなことに引っ掛かるような奴がいるとは思わなかったんだ』
(他人をバカにするにはそれなりの知性がいるらしいですよ。でないと後で自分に返ってくるって)
『実感した』
(反省もして)
メイの言う通り反省もした。しかし空流の追及は終わらない。
「では異世界人とはどのような種族なのか。その謎を解く鍵になると思っているのは妖精族。妖精族はこの世界で発見されている種族の中では最も賢い種なんだ」
(えへへ)
『照れんな!』
「実は異世界人の存在する可能性が浮上する前から個人的に妖精族の調査を行っていてね、
妖精の里に行ってみた。そこには落書きのようなものがあり羽の生えた妖精の横に大きな二足歩行の動物の姿が書かれていたんだ」
(あ、主様が遊びに来た時にみんなで書いたやつだ!)
『消しとけって言わなかったか』
(言われましたけどぉ、お母さん達が勝手に残しててぇ)
「比率を考えると三メートル近い巨体で人間によく似ているが目鼻口がそれぞれ歪んでいて肩ではなくその少し下から腕が生えている」
『絵が下手なだけだろ』
(でも私達妖精の絵が下手だったから正体がバレずに済んでるんですよ。もし上手かったら今頃クランにはいれません)
『そもそもそんなモンタージュみたいな絵だったら確実に消させてる』
「それとデフォルメされたのかわからないが頭頂に三本だけ毛が生えている」
『あれ? お前ら僕のことバカにしてる?』
(し、し、してないです、してないです)
『お前嘘つく練習しとけ。人を傷つけるぞ』
(やっときます)
『絵の練習もな! ただし僕は描くなよ』
(善処します)
『というかデフォルメされた図かもしれないという発想があるならただ絵が下手なだけの可能性にもたどり着くだろ』
(妖精はちょっと賢い種族ですから絵が上手いオーラが出てるのかもしれません)
『実際はあれだが。あと賢さの方も……。きっとこいつがお前と話したらガッカリするだろうな』
下手な絵を晒して主人を危機に陥らせる種族のどこが賢いんだか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます