第3話③ 神様VS王子様
「というわけでこの妖精達の絵のことについて妖精使いの凪くんに話を聞きたくてね」
空流は自身の考えを話し切ると僕に意見を求めてきた。
「そう言われても。僕は妖精使いだけど妖精については詳しくないし」
「そうかな? 僕は君がこれまで会った中で一番妖精と仲がいいと思うよ。信頼しあっていると思うんだ」
「どうして?」
(本当にどうして?)
「アイコンタクトが多い。ほら君はさっきから妖精と何回も目を合わせている」
『睨んだときのか』
(睨まれたときのだ)
「あと君がクエストしている時も見かけたことがあるんだ。忙しそうだったから声はかけなかったけどね。君は普段は妖精と目をよく合わせるのに戦闘で魔法を使うは全く妖精の方を見ていない。妖精を信頼して託しているんだろ」
『いや、目を合わせる必要がないだけだな、魔法使うときはメイはいらない子だから』
(なんですか? いらない子? 私だって応援してますよ)
『お前たまにクエスト中読書とかしてね?』
(だって暇なんですもん。隙間時間を有効活用してるんです)
『主人の戦闘中を隙間時間と呼ぶな』
「ほら、やっぱり。今みたいにじっと妖精の方を見てる時間が多い。君たちは本当に仲がいいんだね」
「そんなことはないと思うけど……」
(そんなことはないですね)
「謙遜しないで」
(うーん、なんか嫌だなぁ)
「それで妖精使いの凪くんは異世界人の謎についてどんなふうに考えているのかな?」
「異世界人ね。えーと、く……くるうだっけ?」
「くうるね」
「空流、君には残念だけど僕は異世界人なんていないと思っている」
「いない? それじゃあ僕が示した証拠はどう考えてるの?」
「シンプルな考え方で解決できる。妖精は小さく何かと不便だ。大きさに対する憧れがあってもおかしくない」
(そうかな。大きいことに憧れたことなんてあんまりないですけど)
『小さくてアイス買いに行けないだろ』
(主様が行ってくれるからあんまり不便じゃないんですよね。それに小さい方がアイス沢山食べれるし)
『他の妖精はお前みたいに図々しくないだろ』
「つまりこれは妖精達が大きくなった自分を想像して描いたんだろう」
「こんな姿を?」
『こんな……』
(主様のことですよ)
『主様のことじゃないですよ、だろ、お前が言うべき言葉は。否定すんだよ。追い打ちかけてどうする』
(でも主様のことですよ)
『違うだろ。お前達が描いた下手くそな絵のことだ』
(私達の描いた絵をバカにしないでください!)
「とにかく、こんな姿でも妖精は憧れたんだ。きっと妖精の美的センスが人間とは違うんだろうね」
(なんか言い方に棘がある)
「それじゃあ薬は? 異世界人がいることを示すもう一つ証拠だよ」
「妖精の中には人間が好きな奴らがいる。こいつみたいに」
僕はメイを軽くつついてやった。明らかに不機嫌そうな顔をする。
『おい、人間好きな妖精ってことなんだからニコニコしとけ』
(ちっ……ニコッ)
メイは微笑む前に舌打ちしやがった。
『態度!』
メイを叱りつけてから僕は空流に向かって話を続ける。
「薬は最近現れたそういう人間好きの妖精が作ったものなんじゃないかな。ほら、この薬の小瓶、結構新しいものだし」
『新しめの小瓶使っててよかった』
(主様のミスがいい方に働きましたね)
『ミスじゃない。こだわりがなかっただけだ』
(ミスを認めないのはダメですよ)
『妖精族の絵はどうした』
(あれは私のせいじゃないですから)
『お前……』
「でもあの薬が入っていた宝箱は妖精サイズではなかった。妖精達が使っていたにしては大きすぎるんだ」
「人間好きの彼女達は宝箱を人間サイズに合わせて大きく作ってくれたんだ。これまでに宝箱が見つからなかったのは人間サイズが完成したのが最近だったからだね。人間のために小さい体で苦労して作ってくれたんだろう。そもそも人間好きの妖精達は作った人間用の薬を人間達に使って欲しいと思っているんだ。宝箱はそんな彼女達が人間に向けてアイテムを渡すためのプレゼントボックスなんじゃないだろうか」
(嘘をつく時急に饒舌になる……主様わかりやすすぎますね)
『お前は寡黙にしてやろうか』
仮説を唱え終えて空流の顔を見るととても複雑な表情をしていた。
「それが……妖精使いの考えなんだね」
「え? ああ、そうだよ」
「わかったよ。聞けてよかった。ありがとね」
そう言って空流は席を立った。
『なんとか納得してくれたようだな』
(あれは納得したんじゃないんですよ。バカな仮説を立てるバカな奴だなと思われて逃げられただけです)
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