第1話② 異世界神でもクビは怖い!

 彼らはこの世界を異世界と呼ぶが僕からしたら彼らが元居た世界こそ異世界だ。僕はこの世界で何億年も前に生まれ神としてこの世界を支配してきた。僕と同じ種族はこの世界には片手で数える程度しかいなかったのだ。


 しかしある日突然僕らの世界は別の世界と繋がった。そして奇妙なことに僕らと似た姿形の人間という種族がなだれ込んできたのである。彼らはこの世界を勝手に開拓していった。そして彼らの世界にはない魔法というものを使っておままごとを始めたのだ。最初は圧倒的な力の差で彼らを排除してしまおうかと思ったが、ごっこ遊びの中で彼らが魔物と呼ぶ害獣達を駆除してくれているので放っておくことにした。


 一方で僕とメイは逆に彼らの世界に行き彼らの文化・生態を一年間調査していた。そして最近になって元の世界に戻ってきた僕らは人間という生物の調査のために冒険者としてこのクランに潜り込んだのだ。


(戻って調査するといっても何をするのかと思っていましたけど、まさかそんなことをしていたなんて。それにいつの間に)


『最初に僕を紹介するためにクランメンバーが集まった時があっただろ。その時に全員に少しだけ弱体化の魔法をかけたんだ。そして同じパーティとしてクエストに挑んだ時に徐々に負荷を増やした。直に彼らの反応を観察できるからとてもいいデータが取れる』

(よくみんなにバレませんでしたね)


『魔物を倒すとその魔力を吸収して強くなるだろ。奴らがレベルアップと呼んでいる現象だ。そのレベルアップの分と相殺されてバレにくくなっているんだ』

(計画的なクソ野郎ですね)

 僕がメイとそんな会話をしているうちに美波の追求が再開した。


「ともかくあんたがいるとクエストの達成率が下がっているの。原因があんたの実力なのか他のメンバーとの連携に問題があるのかわからないけどそれは事実。あなたをクランから外す理由にはその事実だけで十分じゃない?」

「十分じゃない! 原因がわかっていないならそれを明らかにすべきだ!」

(私からしたら明らかですが)

 メイの言う通り僕のデバフのせいだ。しかし知らぬふりをして詭弁を続ける。


「わからないままにしていたら僕がいなくなったとしても同じことが起こるぞ」

(起こりませんけどね)

『いや起こす。僕を追い出したら絶対にこのクランに酷い目見せてやる』

(最低だ)


「わからないと言っても実際はあんたの実力が足りないという見解で一致しているわ。あなたの普段の立ち振る舞いからしてクランのメンバーに嫌われてはいない。誰かと仲が悪いという話も聞いたことがない。そうなると単純に連携の練度が足りないという話になる。練度をあげるためには固定のメンバーでの連携練習を行うべきなのだけど、残念ながらうちのクランでは固定のパーティを組んではいない。

 わかるでしょ?

 うちのパーティに求められているのは高い実力を持ちクランの誰とでも一定の連携が取れる冒険者なの。連携が取れないというのも実力不足のうちなのよ!」


(この人、口が悪いのに言っていることはもっともなことばかりです)


「メンバーによって達成率に差があるというのは不思議なことじゃない。それでもある程度の連携はできるようにしてほしいというのはクランの採用時に話したよね。残念だけど君と一番相性がいいメンバーで見ても達成率は基準値には達していない」

「くっ……」


(もう反論が思いつきませんね。さあさっさとクランから出ていってください)

『お前はどっちの味方だ』

(私はまともな方の味方です)


『くそっ! どうしてだ? ただパーティメンバーを人体実験に使っていただけなのにどうしてクビにならなくちゃいけないんだ!』

(もう! どうしてわかんないんですか!)


『そもそも神なのにどうしてクビにならなくちゃいけないんだ!』

 僕がもがき苦しんでいるというのに勇気達の追求は続いた。

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