第26話



バッチ来い。


拡音ラウドスピーカー


そして新しく拡声器代わりの魔法を使用した。


どんどん集めていこ。


私が歩く足音が何倍にもなって4階に拡散されていく。

天井に止まっていた小蝙蝠スモールバッドにも届いたらしく数十秒後には凄い数の小蝙蝠スモールバッドが音の発生源である私に向かって殺到してきた。


バチバチバチバチッ!!!!



ギィーギィー!!!!!



視界が確保されないのでゆっくりと歩いていく。

ゆっくり歩くせいかお腹の減りも気になった。

アイテムボックスから菓子パンを取り出しむしゃむしゃと咀嚼しながら歩く。

菓子パンの匂いに触発されたからか近くに居た小蝙蝠スモールバッドの気性が荒くなった気がした。

私の周りの音も魔法によって拡散されさらに遠くの小蝙蝠スモールバッドにまで届いていった。


『レベルが上がりました』


「やった」


今日はもう上がらないかなと諦めかけたレベルがあがった。


魔石や素材は捨て置く。

数が膨大な為だ。


ゆったりと小蝙蝠スモールバッド達と戯れながらセーフティーゾーンにたどり着いた。


セーフティーゾーンに入れない小蝙蝠スモールバッド達はギィギィと怒っている。


静穏サイレントサウンド


流石にうるさいので黙らせた。


音が聞こえなくなった小蝙蝠スモールバッド達はしばらくしたら居なくなっていた。


セーフティーゾーンの奥側に行き用を足す。

範囲浄化サークルクリーンを唱え別の岩陰に移動する。


ブルーシートを敷き、残しておいたアッシュウルフの毛皮を敷く。

その上に背負っていた荷物を下ろすとエアベッドを取り出した。


(寝心地を確認しなきゃ)


ウキウキと空気を入れる。


(……意外と時間がかかる)


シャコシャコと空気入れを押す。

ペタンとしていたエアベッドは少しずつ厚みが出てきた。


(これで……どうかな)


見た目は十分な厚さだ。

どれやとその上に腰を下ろす。


お尻が地面についた。


(まだ柔らかい……)


まだ空気が足らないのかとややめんどくさくなってきた。


エアベッドから降りるとまたシャコシャコと空気を入れ始めた。


時刻は0時を回った。


(ようやく固くなった)


バフンバフンと上に座り上下に揺れてみる。


ちゃんと弾力が出た。


ごろりと寝転がる。


(あー……ベッドだ)


ついでにリュックからブランケットを取り出し体に被せた。


ここ数日岩に背を預ける形で就寝していたからかすぐに眠気がやってくる。


(……あのベッドで寝ることはもうないんだ)


目を閉じて研究所生活を思い出す。


(もう全部どうでもいい。 あいつら全員くそくらえ)


過去のことだとバッサリ切り捨て悪態を吐いて眠りに落ちた。



(ベッドの効果凄い)


朝7時過ぎ。


むくりとベッドの上で上半身を起こす。

頭をぼりぼりと掻いて大きな欠伸をする。


(……寝すぎた)


よいしょとエアーベッドから足を下ろし腰かける。

アイテムボックスからクーラーボックスを取り出し開けると、一人用のコンロを取り出した。


(飲み物の準備しよう)


鍋にお湯を沸かし昨日持ってきた保温ボトルを出す。


(お湯多い?)


保温ボトルの蓋を開けほうじ茶のティーパックの糸を外に垂らしお湯を注ぐ。


(……1個じゃうっすい)


後からもう一個足して蓋を閉じた。


もう一つ分には足らないけどお湯が余った。

鍋に直に緑茶のティーパックを入れる。


数分置いておき色が十分出たところでもう一つの保温ボトルに注いだ。


ほうじ茶の方のティーパックも取り出し蓋を閉めアイテムボックスに収納する。

使い終わったティーパックは穴を掘って捨てた。


(……こういう時ダンジョンって便利だよね)


ゴミはダンジョンが回収する。

今では企業ようにゴミ捨てダンジョンなる物もあると聞いたことがある。

一般人が立ち入れない。 ゴミ捨て専用のダンジョン。

産業廃棄物から果ては劇物まで。



(まぁ、私には関係のない事だ)



掘った穴を埋め戻しエアーベッドに腰を下ろし緑茶を啜る。


(あったかいお茶美味しい)


ほうっと心が和む。


ついでに朝食を簡単に済ませてエアーベッドの空気を抜き畳む。


(……なんか不格好? こんなんだっけ? リュックサックに入……らない……)


絶望した。


持ってきたときは小さく畳まれていたはずなのに、同じように畳んだはずなのに倍くらいの大きさになっている。


(どうして……どうしてこうなった……)


がくりとうなだれる。


(まって……と言う事は……)


クーラーボックスに一人用のコンロを仕舞いアイテムボックスに収納する。

続いてアッシュウルフの毛皮を畳み、アイテムボックスに収納しブルーシートも同じように入れようとした。


(ぎ……ギリギリだと)


レベルアップにより余裕が出た、はずだった。


(何かを入れ替えてアイテムボックスに収納しようと思ったが駄目だ。 入らない)


しょうがない……とエアーベッドだけ腕に抱えて持って行くことにした。


(レベルが上がったらアイテムボックスに放り込む。 それまでの辛抱だ)


用を足し自身にさて出発するかと範囲浄化サークルクリーンを施し防御結界ディフェンスバリアを張り拡音ラウンドスピーカーをかけセーフティーゾーンから外に出た。


ギィギィギィ!!!!


途端に現れる小蝙蝠スモールバッド



バチバチと防御結界ディフェンスバリアに当たって自滅していく。


視界が悪いためゆっくりと壁にぶつからないよう歩く。


(……中々上がらないな)


これまでダンジョンでレベル上げをしたおかげで重さ感じないのだが、両手が塞がり不便なことこの上ない。


(5階にたどり着く前に上がるかな……?)


流石に新しい階でモンスターが変わることを考慮すると両手は開けておきたい。


出来る限りゆっくりと進み何とか5階に上がる前にレベルを1つ上げることが出来た。


アイテムボックスからブルーシートを取り出し荷物の整理をする。


(いけるか? ちょっと空いたから……ここをこう詰めて……あ、いけそう!!)


ギュウギュウと荷物を押し込み無理やり隙間を空けるとそこにエアーベッドを押し込んだ。


(閉じろ閉じろ!!)


急いでアイテムボックスを閉じる。


(ふー何とか詰め込めた)


やれやれとブルーシートに腰を下ろしリュックから保温ボトルを取り出した。


(ん、まだあったかい)


暖かい緑茶が体に沁みる。


少し休憩し魔力が回復させると竹串をポケットに、ナイフを手に取り5階へ足を踏み入れた。



5階に突入してから一本道を進む。


(……分かれ道無いし……モンスターも出てこない。 なんだろう)


辺りをきょろきょろしながら前へ進む。


すると大きな扉が目の前に姿を見せた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る