第25話 腹いせ



ダンジョンの入り口から入り、しばらく進むとアッシュウルフの群れが居た。


(結局このダンジョンが一番だな)


姿は見えなくとも匂いに敏感なアッシュウルフは私を敵と判断し私のもとに駆け寄って来た。


(他のダンジョンは人が多いし)


私もアッシュウルフに向かって駆けだす。


(このダンジョンは3階のセーフティーゾーンに一組居るだけだ)


ナイフは出さない。

無性に素手で殴りたくなり大きな口を開けたアッシュウルフの横っ面をぶん殴った。


「ギャウン!?」


(取りあえずこのまま4階まで突っ切るとして)


ぶん殴られて体勢を崩すアッシュウルフ。

他の個体が私との間に入るようにかばう姿勢を見せる。


体勢を低くし一気に距離を詰めようとしたところを足蹴にする。


「ギャッ!!」


足蹴にしたことで私がバランスを崩すと予想した別のアッシュウルフが後ろから引っ掻こうとしてきた。


(5階には明日行こう)


「ギャン!!?!」


足蹴にしたアッシュウルフにさらに蹴りを入れ残った軸足で回転する。


「ギャウン?!」


(その前に3階のあいつらの様子だけ確認するか)


回転した勢いでアッシュウルフの前足を蹴り体勢を崩したところで蹴った足に力を入れ踏みつけアッシュウルフの上へ飛ぶ。


(下手に動かれたら場所の特定がめんどくさくなるし)


「背中ががら空きだよ」


そうアッシュウルフに教えてあげてがら空きの背中に拳を振り下ろした。


流石に物理だけではまだ仕留められなかったので動きが鈍くなったアッシュウルフをナイフで止めを刺した。


(はーまだムカつきが晴れない)


4階へと向かうまで道中苛々が晴れるまでアッシュウルフと肉弾戦を繰り広げた。



(……だいぶましになったな)


程よい疲労に苛々もだいぶ解消された。

仕留めたアッシュウルフの素材は魔石のみリュックサックに入れ他は置いてきた。


ちなみにこんなに倒してもレベルは1しか上がらなかった。


少し空いたアイテムボックスの隙間には倒したダークスネークの肉を詰め込んだ。



あいつらが居るはずの3階。

この階からは小蝙蝠スモールバッドしか出ない。


(サンドバッグは出ないからどうしようもないんだけどね)


2階まではかけてなかった静音サイレントサウンド闇隠インビジブルをかけた。


(まずはあいつら。 ちゃんとセーフティーエリアに留まっているかな?)


万が一にも姿を見られたら面倒だ。


魔法をかけたおかげで小蝙蝠スモールバッドにも気づかれずにセーフティーゾーンまでたどり着いた。


時刻は21時を回っている。


岩陰から覗く。


(居た)


やる事もなく暇らしく大いびきをかいて寝ている。

セーフティーゾーンの傍には入れない小蝙蝠スモールバッドがバサバサと騒いでいた。


(肝が据わっているのか鈍感なのか)


自分達があんなに逃げまどっていた小蝙蝠スモールバッドがこんなに群がっているのによく寝てられるなと呆れる。


探索者の周りにはゴミが散乱しており、すぐに助けが来ると楽観視しているのが見て取れる。


(恩田さんとやらが食料残していってくれたのにもうこんなに食べたの? 計画性が無いにもほどがあるよ)


上の様子が分からないからこんな感じなのか、こいつらだからこんな感じなのか。


普通の探索者なら救助が長引くと考えて切り詰めるんじゃないのか?


(……ここから動かなさそうだな)


見てても得られる情報は無いと判断しそっとその場を後にした。


4階以降は人が居ない。


4階に足を踏み入れ静穏サイレントサウンド闇隠インビジブルを解き、代わりに防御結界ディフェンスバリアを張った。

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