第13話 肉とスキルの効果


(やった、ダークスネークのお肉がいっぱい)


休憩を終えた後はもう一狩りに出ていた。

今度は最初に闇隠インビジブル身体浄化ボディークリーンを重ね掛けして走り回った。


魔力は使うがアッシュウルフとの戦闘を避けられる。

そしてダークスネークとの戦いに集中できた。


効果が切れたらいつも通りアッシュウルフとの戦闘だ。

レベルが上がるにつれ戦闘も格段に楽になっていった。


この日だけでレベルが18まで上がった。


魔力も増えた感じがある。

風刃ウィンドカッター1回の必要魔力量が最初3割だったのが今では2割くらいになった。

もう一日狩りを続けたら次の階に行ってもいいかもしれない。

そう思いながら次の日も狩りを続けた。

そして夜になり馴染みの岩場の影で休息をとる。


レベルは21まで上がった。

このダンジョンに入った時の倍だ。


複数で動くアッシュウルフはまだてこずるが、単体で動くダークスネークは難なくナイフで仕留めることが出来るようになった。


(いい感じ)


アイテムボックスもクーラーボックス2個分。

魔法使用時の消費魔力も1割強くらいになった。

満タン時で約9回は使用できそうだ。


範囲魔法も半分以上魔力が残った状態なら使えるようになった。


余裕が出てくると疑問に思うことが出てきた。


このナイフだ。


(ナイフはまだ分かるけど……ハサミまで同じ切れ味って可笑しくないか)


アイテムボックスから取り出したナイフと調理バサミと包帯を切るハサミを見比べる。


余裕が多少出たので最後に出たアッシュウルフの毛皮で切れ味を確かめた。

ナイフはいつも使用してるので切ることが出来た。

調理バサミこれもなんでか切ることが出来た。

そして包帯を切るハサミ。


(お前までなんで切れ味良いんだよ……)


まるでプリンとかゼリーとかそんなのを切るように刃が当たったところから裂けていった。


(いやいやいやいや……刃を動かさずにって……流石に可笑しいでしょ)


何なら何か溶かす液体が出ているんじゃないかというレベルだった。


ここで一つ疑問が沸く。


(包帯を切ってた時は普通だったよな……)


治療で使う包帯を切断していた時は普通に切る感覚があった。

他に何か刃物を使ったっけと考えをめぐらす。


(包丁……料理の時は特に疑問に思わなかったなぁ……)


野菜を切るときは普通に手ごたえがあった。

お肉を切るときは調理バサミを主に使用していた。


(……切れ味良かったわ。 え? あのハサミだからかと思ってたけどもしかして違う?)


唐揚げ用に鶏もも肉を切っていた時のことを思い出す。

一人暮らししていた時は初め包丁を使用していた。

でも包丁が安物だからか私の腕が悪いからか皮の所がなかなか切れなかった。

ネットで検索すると調理バサミが楽という記事を目にし、それからいつも調理バサミを使用していた。


(肉……皮もだから……もしかしてスキル? 何か……手術とかそう言う感じの補正なのか? だから包帯とか野菜とかは普通の手ごたえになった? え? だとしたら生き物無双出来ちゃう?)


どこの切り裂き魔だ。


(人に対しては危険だけどモンスター相手だったらこれほど心強いスキルないな)


あれほどモンスターを切ったにもかかわらず切れ味は落ちていない。

補給や手入れがままならないダンジョンでその補正はかなりありがたい。


(明日から3階に行こう。 先発隊の場所を特定し一気に抜き去ろう)


ダークスネークを沢山狩ったおかげで肉は山ほどある。

アイテムボックスの中は時間が止まるおかげで腐敗の心配はない。


匂いの心配があるからしばらくは火が使えない。

ダークスネークの肉をある程度焼いておいてすぐ食べれるようにしておこう。


人が居ないのは確認済みだ。


アイテムボックスから折り畳み式のコンロと調理バサミ、調味料、解毒していないダークスネークの肉を全部取り出す。


(まとめて解毒しておこう)


ダークスネークの肉に解毒魔法を施し鑑定をかけ解毒されていることを確認する。

使う分だけ残し残りはアイテムボックスに仕舞った。


調理バサミでチョキチョキとダークスネークの肉をひと口大にカットし鍋に入れていく。


「入れられるだけ入れちゃおう」


肉を入れた後に調味料を振りかけアルミホイルで蓋をする。


入りきらなかった肉はジップロックに入れた。


(なんでジップロックとかあるんだろうと思ったけど……野営の時便利だな)


料理酒を少し入れ塩と胡椒をいれて揉みこんでおく。


(味よ滲みろ……美味しくなーれ)


モミモミと美味しくなれと念を込めながら揉みこんだ。


量が多いので時間をかけてじっくり焼き、焼きあがると紙皿に移し2度目の焼きに取り掛かる。

紙皿に移した肉を摘みながら竹串に刺しすぐに頬張れるようにしていった。


(竹串もなんかすんなり通るんだけど……すんなり通るんだけど!!)


普通ならもっと肉を刺すのに手ごたえがあっていいはず。

なのにさっき毛皮を切った時のように手ごたえが無かった。


(これも補正掛かっているのか? 何補正……?)


手を動かしながらしばし考える。


(……注射? そういうこと?)


それが本当ならば飛ばした竹串でも同じ効果が得られるのか知りたい。

投げても同じ効果なら複数の敵相手でも有利になる。


試しにセーフティーゾーン間際まで行きそこら辺を這っていたダークスネークに向け投げてみた。


ダークスネークはその場に縫い付けられ動けなくなった。


(なんだこれ)


セーフティーゾーンから出て縫い付けられたダークスネークをサクッと仕留めると落としたアイテムを拾い元の岩陰へ戻り腰を下ろした。


(うん。 投げても効果ありだったね。 ……というか刃物と同じ補正ついたら……私生き物相手に対して強すぎない?)


異世界では魔法が無限に撃てたが物理はてんで駄目だった。

こっちに戻ってきたら魔法に制限がついたが物理が強くなった。


(これでレベルが上がって魔力が伸びたら無敵じゃない?)


冷静に考えそう結論づいた。


(Sランクに到達するのもそう遠くないかも)


ご機嫌のまま焼けた肉を串に刺していった。


満腹になると用を足し範囲浄化サークルクリーンで周りを綺麗にし岩にも岩加工ロッククリエイトを掛けなおす。


岩肌が滑らかになると背を預ける形で就寝した。


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