第8話 魔法とダークスネーク
「
回復魔法を唱えると痛みが消えていく。
お腹のあたりに噛みついたまま絶命したアッシュウルフを外すと血まみれの冷たい地面に寝ころんだ。
(死ぬかと思った……)
本日二度目の絶体絶命だった。
(お腹噛まれた時は流石に死を覚悟したね。 というか絶体絶命の大盤振る舞い止めて)
疲れのあまり、汚れとか気にせずそのまま意識を飛ばしたい衝動にかられた。
(……危ない危ない、こんなところで寝たら死ぬよ)
ただいま絶賛スタンピード真っ最中だ、こんなところで寝たらダンジョンの外へ向かうアッシュウルフ達の良い補給スペースになりかねん。
(とにかくこれ以上連闘するのは避けたいな……と言ってる傍からまたモンスターの気配が!!
「
アッシュウルフの血やら自身の血や汗を綺麗にする。
動いて汗だくだった身体から汗や血が消えさっぱりする。
「
これでどうだ。
岩陰に隠れながら様子を伺う。
徐々にアッシュウルフ達の足音が近づいてくる。
これ以上連戦は避けたいと動向を見守る。
(行った……)
アッシュウルフ達は仲間の死骸を一瞥しただけで出口の方へ行ってしまった。
(これならいけそう)
成功したことにホッと胸をなでおろし岩陰を背もたれにする。
(ただどれくらい持つのだろう……)
この魔法の持続時間が分からない。
モンスターたちとすれ違う時に切れたらアウトだ。
ちらりと腕の時計を見た。
オーソドックスな秒針タイプのシンプルなデザインな時計だ。
(1……2……)
目を凝らしながら集中して計測を開始した。
(持続時間は15分ってとこか、長いのか短いのか……)
少なくとも聖女時代では持続時間はもっと長かった。
こっちの基準は分からない。
(確定情報が得られただけで良し。 これが他の人と比べて短くても私には関係ない事だ)
時間を計測している間に分かったことがもう一つ。
魔力が少しづつ回復している感覚があった。
流石に全快までは行かないし、なんなら
(早いとこ安全地帯作らないと詰むな)
効果が切れるまでに通り過ぎていったモンスターの群れは6つ。
幸いにもどの群れも素通りして行ってくれた。
どうやらアッシュウルフは完璧にだましきれるようだ。
(レベル上げをどうするか。 魔力の使用量的に安全に魔力を回復できる場所を確保しなければいけない。 でも流石に1階だといつ探索者が来るか分からない。 遭遇したら連れ戻されてしまうよね、最低でも声掛けはされそう。
スタンピード中に1人だし。 後は少なくとも先遣隊が居ないところに行かなくちゃ……。 セーフティーゾーンから魔法を打ちまくってモンスターを倒せば危険はないよね。 となったら先遣隊を探しつつその奥を目指すべきか? でも魔力がなぁ……)
探知魔法はまだ魔力が足りない。
魔力不足が悔やまれるがそんなこと言ってられない。
取りあえず次の階のセーフティーゾーンまで駆け抜けるかとモンスターを倒して落とした魔石や素材をマジックボックスに仕舞いつつ、
流石にすぐに追いつかれる1階のセーフティーゾーンを避けて駆け抜け2階に差し掛かる。
せめて魔力が尽きる前に2階のセーフティーゾーンに行きたいと気持ちが急いだ。
(モンスターが変わった? ……ヤバいヤバい!!)
2階も1階同様洞窟のような見た目だ。
鼻の利くアッシュウルフを騙せたからこの階も大丈夫と過信していた。
対して確認せずに、そのまま駆け抜けようと走り出そうとしたら岩陰から何かが飛び出してきた。
「鑑定!!」
(ダークスネーク? ……まだ魔法は……っ体温か!! なんだよもう!!)
せっかく上手くいきそうだと思っていたのにと唇を噛む。
ナイフを構え私の体程の長さがあるダークスネークを避ける。
避けたと思ったら今度はしっぽが鞭のようにしなった。
(えっ!! この?!)
その尾をナイフで迎え撃つ。
スパンと切れた。
(本当にこのナイフ切れ味良い!! 誰が補充してくれたか分からないけどありがとうございます!!)
誰にとは言わず思わず感謝の気持ちが溢れた。
「シャー!!」
尾を切り取られ怒るダークスネーク。
(でも群れじゃない分戦いやすい!!)
アッシュウルフみたいに複数のモンスターが襲ってきたわけではないのが幸いだ。
次に足に絡み付こうとやって来たところをサクッと仕留めた。
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