第7話 ダンジョンに潜入

運が良かった。

でもまだ入り口だ。


さらに奥からモンスターの気配がする。


(スタンピード中だからか知らないけど多いね。 次も魔法を使用しつつナイフで仕留めるか。 徐々にナイフのみで仕留められるように慣れていこう)


さっきまで震えてた自分とは思えない発想に思わず笑みが浮かぶ。


岩陰に身を隠すと次の群れがやって来た。


(今度は5体か……)


「グルルルル」


やはり匂いでばれているようだ。


(囲われる前に先に仕掛けた方が良いのかな?)


戦いには慣れていないのでこういう時判断に迷う。


(ええい……)


バッと岩陰から飛び出るとアッシュウルフのもとに駆け寄る。


岩陰を囲おうとしていたアッシュウルフ達は一斉に飛びかかって来た。


(全員でなんて卑怯な!! 行けるか?!)


防御結界ディフェンスバリア


自身の周りを球体状の膜が覆う。

防御結界に触れたアッシュウルフ達は跳ね飛ばされた。


「キャンッ!!」


(やばいっ!! 魔力半分以上持ってかれた)


ごっそりと魔力が無くなり焦る。


(体勢を立て直される前にやらなきゃ!!)


結界を解除すると一目散にアッシュウルフへ飛びかかった。


まだ起き上がれないもののこちらに向けて口を大きく開け噛みつこうとして来る。


(魔法で防御する?! もう心もとないのに……何かないか?!)


アイテムボックスを開き手さぐりで何かを掴みアッシュウルフへ振りかぶって下ろした。


ゴチン!!


「キャウン?!」


(あ、ナイフで応戦すればよかった!!)


手に取ったのは調理用に持ってきた簡易の片手鍋だった。


それがアッシュウルフの鼻っ柱にクリーンヒットした。


(なんてこった!! 鍋が歪んじゃった!! ……料理に使えないかも)


アッシュウルフの鼻の形で鍋が凹んだ。

穴は開いていないようだ、しゃぶしゃぶ用になら使えるかもしれない一瞬の間にそんなことが頭を過ぎった。


(そんな事考えてる場合じゃない!! 仕留めないと!! これの他にまだ4体もいるんだぞ)


慌ててナイフで鼻先を痛がっているアッシュウルフの首を刈る。


(まずは1体)


続いて近くに跳ね飛ばされたアッシュウルフのもとに駆け寄ろうとした。

だが体勢を立て直したアッシュウルフが横から襲ってきて慌てて避ける。


(立て直すの早い)


アッシュウルフを1体倒しだけではレベルも上がらなかった。

だからまだ魔力は回復していない。

鍋を盾にし横から襲ってきたアッシュウルフに駆け寄る。


ナイフで攻撃するが避けられ前足で攻撃される。

それを鍋で防いだらその腕を噛みつこうとしてきた。


(噛まれ……てたまるか!!)


足を振り上げアッシュウルフの横頬に蹴りを入れた。


「ギャン!!」


(滑る!!)


ナイフでは簡単に切り裂くことができ、その上防御魔法で簡単に飛んでいったからアッシュウルフが柔らかいと勘違いし踏ん張りが足らなかった。


(硬っ……ビックリした)


鍋で身体を支え転ぶことは何とか避けられた。


(鍋が泥だらけ……)


これで料理をしなければいけないのかと悲しくなってくる。


目線を上げアッシュウルフを見れば顔を蹴られ怒っているようだ。


(後4体全部体制立て直されちゃったな……)


四方を包囲されじりじりと詰め寄られる。


(魔法は残り1回分くらいか、使うとしたらどれ? 火? 水? 風? 土? あ……!!)


「グルァアア!!」


1匹が吠える。


それを合図に一斉に飛びかかって来た。


闇隠インビジブル


魔力が枯渇する感覚がある。


(くっ……)


「ギャン!!!!」


闇魔法で姿を隠すと、突然目標物の姿が消え慌てるアッシュウルフ達、何匹かが勢いそのまま衝突した。


(……っ……早く仕留めなくちゃ!!)


体勢を崩した2匹の首を刈る。


『レベルアップしました』


(やった!!)


魔力が回復すればこちらのもんだ。

レベルアップにより魔力が回復していく。


(うわっ!!)


喜んだのもつかの間後ろから残ってたアッシュウルフが飛びかかって来た。


(なんで?! あ……匂い?! 痛っ!!)


お腹に牙が食い込み血が流れ骨がミシミシと音を立てる。


(くそっ……くそ!!)


力を込めると痛みが増す。


ウィンド……うっ……ッ!!」


血が喉の奥からせり上がり咽る。


弱弱しくナイフを振り上げ無防備な首に突き刺す。


(これ……刺さらないかも……ぐっ!!)


流石に触れるぐらいの勢いじゃ無理かもしれない。


そう思ったがナイフは水に沈んでいくようにするりと首元に埋まっていった。


(力入らないのに……なんで……?)


疑問に思ったがアッシュウルフが絶命し顎の力が緩んだ。

残り一体のアッシュウルフが仲間を殺されたことに怒りながら飛びかかってくる。


プッっと血を吐き出し


「風……ウィンドカッター……」



途切れ途切れの力のない声で呟き最後のアッシュウルフを屠った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る