第9話 休憩
小さく、お金になる魔石だけ回収して亡骸は捨て置こうとしたら、小指大の大きさの瓶がきらりと光った。
(……毒瓶? これってあの有名なダークスネークの毒瓶?)
ダークスネークは名の通りダンジョンの薄暗さに紛れるような暗い色合いの蛇型のモンスター。
確かダンジョン協会に必ず回収されてしまう毒瓶を落とす。
(まぁダークスネークに限らず毒の付く物は必ず回収されるけどね)
この毒瓶は今では医療にも活用されたりするが、探索者も探索者免許の提示と使用目的を提出すれば購入することも出来る。
ダークスネーク自体がそんなに珍しいモンスターではない。
そのため他の毒を持つモンスターの毒瓶より多く手に入る。
回収になんの制限もない頃、探索者が二束三文で一般の人に販売するということが多かったそうで、この毒を使用してテロや毒物事件が引き起こされたりした。
摂取すると脳から筋肉に伝わる命令が阻害されてしまい動けなくなるという毒だ。
しばらくすれば動けるようになるが倒れた状態により窒息してしまう可能性もある。
それ以降制限がかけられるようになり一般では手に入りにくいものになった。
(漂白剤よりも使えるかもしれない)
アイテムボックスにビー玉大の魔石と共に仕舞う。
(
2階に出てくるのがダークスネークだけならば
(今の効果が切れるまでにアッシュウルフが出たら継続、出なかったら先発隊だけに気を付けて突っ走ろう)
そう判断し2階層を2時間ほど探索した。
セーフティーゾーンを発見することが出来た。
セーフティーゾーンには1本の樹木が立っておりそこから半径50m程はモンスターが入れないと聞いたことがある。
(まだ先発隊も発見できないけど……)
どうやら先発隊はさらに奥にまで進んでいるようだ。
セーフティーゾーンには野営の跡だけがあった。
消えかけているのでもう少しで一日といったところか。
(……ここを拠点にしようか)
先発隊が戻ってくる可能性も考えたが、数日だけここに身を寄せることにした。
というよりも流石に戦ったり走ったりでくたくただった。
(2階に入ってからアッシュウルフ少なかったな)
全くでないという訳ではなく群れと遭遇する率が減っていた。
これはダークスネークも出現するからリポップ率が減ったからなのか分からないが。
個人的にはダークスネークの方が1体で出て来てくれるからありがたかった。
(群れはまだ厳しいな)
少しだけ座って休憩を取るとセーフティーゾーンの通路側から反対側の壁側に向かった。
野営跡から出来るだけ離れた場所だ。
(どうやって隠ぺいしようか……)
きょろきょろと辺りを見渡すと壁際にある岩の前へ移動した。
岩は私の背よりも少し低く、その代わりに幅があった。
(これ……中くり抜けないか?)
「
手を岩に当て、残り少ない魔力でそう唱えた。
(残りの魔力ではさすがに人が入れるぐらいの大きさまでの加工は無理か)
凹みに沿って滑らかになった岩肌を撫でる。
(凸凹が無いから背を預けても痛みは無さそう。 少し休憩するか)
アイテムボックスからブルーシートを取り出し土の上に敷く。
地面から冷たい冷気が伝わる。
そこに腰を下ろしアイテムボックスから取り出したペットボトルでカラカラになった喉を潤す。
(……っ生き返る。 ここまで走りっぱなしだったもんね)
そして時計を見た。
時計を見ると時刻は夜を指していた。
(外のモンスターは討伐完了したのかな、出来るだけ長引いてほしいけど……)
菓子パンの袋を破り中のパンをかじる。
甘さが疲れ切った体に沁みた。
(水や火は何とかなるけど食料は確保しなくちゃいけないな。 調味料や顆粒出汁を持ってきたから最悪スープだけは作れる。 肉……肉かぁ……ウルフ系は美味しくないから不人気だったしダークスネークは毒が入っているから特殊調理免許保持者じゃないと調理できなかった。 毒か……解毒魔法で行けるか? まず1個試してみるか……幸い毒に即効性は無かったから行ける……か? 異変を感じたら解毒魔法を身体に掛ける……やってみるか。 食料が無くなる方が困る。 ……でもまず……仮眠を取ろ……う……)
考えているうちにうとうとと眠気が襲ってきた。
流石に横になる気にはなれず岩に背を預けたまま仮眠を取ることにした。
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