第22話 活動内容を決めよう③

「野球が、やりたいんだよなあ。甲子園、行きたいんだよなあ」


 アルファが再びポツリと呟く。やはりまだ諦めていないようだ。


「ちょっとアルファ! 女の子が多いんだから野球なんて出来る訳ないでしょー!そもそもルールが分からない。やっぱり『美食部』が一番。レンもそう思うよね! 」


「まあ、野球はないな」


「やっぱり『遊び部』良いと思いますよ?『わんにゃん部』も一緒に活動できますし」


 と市井さんのコメント。まあ確かに案としては悪くない。部の名前を変える必要はありそうだが。


「わあ、それなら…『遊び部』が良いですね……」


「美味しい物が食べられるなら、『遊び部』でも良いかもねー」


 太田さんと佐藤芳佳が市井さんの意見に乗ってきた。多数決をしたら『遊び部』になる展開だ。


「私は、廃墟廻りがいいのう」


「だから廃墟は……」


 佐藤芳佳以外の三人が不思議そうな顔で僕を見た。おっといけない。樹木よ、どさくさに紛れて発言するのはやめてくれ。三人にはお前の姿は見えてないんだから。


「おほん……」


 わざとらしく咳き込み、話を仕切り直す。


「僕もそうだが、つまりは遊べる部であれば問題がないって事で良いかな?野球だってその遊びの中でやれば問題ないだろ?」


『はーい』と女性陣の声。満場一致で納得のようだ。


「たまに野球をやってくれるなら問題ない。オッケーだ」とアルファ。


 よし、これで決定だ。


「じゃあ『街に繰り出し、美味しい物を食べつつ、猫と犬と遊ぶ。街だけじゃなく旅行にも行こう。それに、気が向いたら野球もしてみる。基本、遊ぶ事が第一目的の部活動』というで決定だ! 」


 大きな拍手が起きる。ようやくこれで新しい一歩が踏み出せる。部室が手に入るんだ。みんなが集まり、自由に作れる空間。例えるなら『秘密基地』だ。ワクワクする。この世界に転生して、もしかしたら一番嬉しい出来事かもしれない。

 

 その後、『遊び部』という名前だけは『地域研究部』という名前に変更してもらった。申請をすんなり通すための策だった。みんなが快く了承してくれたのは、とてもありがたかった。

 帰り際に佐藤芳佳が、


「じゃあ私達の中では『部』じゃなくて『なんとかなんとか団』って呼び名にしようよー」


 と言い出した。数年前に大流行したアニメを真似したいのだろう。佐藤芳佳も僕も、ちょうどその世代だ。気持ちは良く分かる。


「日常系アニメじゃなくて、SFアニメに変わりそうだな。まあ、あの作品と違ってこの世界には『異世界人』しかいないけどな」


「言われてみればそうだねー。あ、もしかしたらオセロちゃんは宇宙人かもしれない!なんてね。――『氷川ルイの焦燥』かあ。私、大好きだったなあ」


「僕もだ。すごくハマった。エンディングがまた印象深い。何回繰り返し見たことか。ちょうど大学生だったなあ」


「私は中1だよー。私、そのダンス踊ったからね! 今でも踊れる! 」


 そう言って佐藤芳佳は楽しそうに笑った。僕もそれに釣られて笑った。好きな作品を話せる同士がいるのはとても嬉しい事だなと思った。

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