第6話 初めてのデート。
翌朝、ぼくも早く起きた。だけど、やっぱり、ニャン太夫さんとポコタンは、もうベッドにいなかった。
部屋着に着替えて、一階に降りると、彼女が母さんとお昼のお弁当と朝食を作っていた。
「正太くん、おはようございます」
「姫ちゃん、おはよう」
「いつまで寝てるの。これから、お出かけするんでしょ。早く起きたら」
母さんから、朝一番で、苦情を言われる。
「正太さん」
足元で、ポコタンがぼくの裾を引っ張る。見ると、小さめのバスケットを持っていた。ぼくは、しゃがんでそれを見る。
「お昼のお弁当だよ。サンドイッチだって」
「そうか。ありがとう」
「お礼を言うなら、これを作った、姫に言わなきゃダメだよ」
彼女の手作りサンドイッチが食べられるなんて、ぼくは、幸せ者に違いない。
クラスのみんながこのことを知ったら、ぼくは、きっとみんなに怒られるに違いない。
「姫ちゃん、お弁当、ありがとう」
「いいえ。お昼にみんなで食べましょう」
そう言って、朝から素敵な笑顔を見せてくれた。これだけで、目が覚める。
気がつけば、姉ちゃんと父さんもテーブルについて、先に朝ご飯を食べている。
「正太が一番遅いわよ」
姉ちゃんに言われて、ぼくも慌てて席に着く。すると、あっという間に、ぼくの目の前には、白いご飯に豆腐の味噌汁、焼き鮭、納豆、お新香が並んだ。
「ハイ、正太くん」
「ありがとう」
彼女にご飯をよそってもらった。これじゃ、まるで新婚の夫婦みたいじゃないか。
「正太さま、熱いうちに食べるニャ」
焼いた鮭をお皿に乗せて、持ってきたのは、ニャン太夫さんだ。
「だけど、納豆って言うのは、ずっと糸を引くんだね」
ポコタンは、小さい体で、丼に入った納豆を一生懸命かき回している。
ぼくも納豆をご飯に載せて、早速食べ始めることにした。
彼女と母さんも席について、熱い味噌汁を啜っている。
ポコタンは、納豆と格闘してるし、ニャン太夫さんは、鮭をおいしそうに頬張っている。朝から、賑やかでほのぼのしている朝食の風景だ。
「正太、今日は、姫子ちゃんとデートなんだから、しっかりリードするのよ」
「わかってるよ」
姉ちゃんにデートとはっきり言われると、顔が赤くなる。
「父さんも母さんと初めてのデートのときは、緊張したもんだ。がんばれよ」
父さんまで何を言ってるんだ。母さんは、そのときのことを思い出したのか、少し恥ずかしそうにしている。
朝ご飯を食べて、お昼のお弁当のバスケットと、小さなリュックを背負って、出発準備が出来た。
あとは、なにを着て行くかだ。それが悩みの種だ。昨日から、ずっと考えていたけど、いいものが思い付かない。
何しろ、服とかおしゃれには、特に興味がないので、持ってる服は、同じものばかりだ。せっかくの彼女とのデートなら、少しはいい物を着ればいいけど、それがないのが問題なのだ。
しばらくタンスの前で、ありったけの服を引っ張り出して、床に並べてみる。
「う~ん」
しかし、いくら考えても、どう組み合わせても、デートっぽい服にはならない。
結局、いつものジーパンにシャツとベストを着て行くことにした。代わり映えがしないと、自分でも思う。
「お待たせ」
ぼくは、そう言いながら一階に降りると、すでに彼女は着替えて待っていた。
その姿を見たとき、ぼくは、足が凍りついた。
薄いグリーンのミニスカートに白いハイソックス。ストライプのシャツというすごい軽装だ。
それなのに、それがとても可愛くて似合う。髪もポニーテールにまとめて、赤いリボンをつけている。
「正太、なにしてるの。姫子ちゃんになんか言うことあるでしょ」
姉ちゃんに言われて、我に返った。
「ひ、姫ちゃん、似合うね」
「そう、ありがとう」
こんな時に、気の利いたことがいえないのが、ぼくの悪いところだ。
「正太、これは、父さんたちからの寄付だ。困ったときに使いなさい」
そう言って、父さんは、ぼくに一万円をくれた。珍しいこともあるもんだ。
ベストセラー作家で、売れっ子だから、印税だか知らないけど、お金は持ってるのに
ぼくのお小遣いは、毎月、五千円だ。それが、今日一日だけで、一万円もくれるなんて、信じられない。
「ほら、早くいってきなさい」
母さんに言われて、ぼくは、姫ちゃんと出かけることにした。
「それじゃ、皆さん、いってきます」
「気をつけてね」
「困ったことがあったら、連絡するんだぞ」
「あとで、話を聞かせてね」
それぞれに見送られて、ぼくと彼女は家を出る。
ニャン太夫さんとポコタンは、宇宙船で途中から合流の予定だ。
ぼくは、バスケットを持って、彼女も肩から小さなバッグをかけている。
空は青空で、申し分ないデート日和だ。まずは、学校まで行く。日曜日だけど、裏口は開いている。
日曜日の校庭は、近所の少年野球やサッカーの練習などで、賑わっているので
ぼくたちが入っても、何も言われることはない。そのまま、ぼくたちは、屋上まで登った。
屋上に着くと、すでにニャン太夫さんたちが待っていた。
「えっと、それから、どうするの?」
「ちょっと待ってね」
そう言うと、彼女は、なにか呪文のようなことを呟いた。
「ピーリカピリララ、空を飛べぇ~」
そう言って、ぼくの手を握った。いきなりだから、ビックリした。
「手を握って。あたしの科法が正太くんにも通じるから」
ぼくは、言われるままに彼女の小さな白い手を握り返した。
「それじゃ、行くわよ。空を飛べって、強く感じて」
ぼくは、目を閉じて、心の中で空を飛べと、強く念じた。
「シールド張るから、落ちたりしないから、安心してね」
そう言うと、彼女は、ぼくの手を引っ張り上げた。
「うわっ!」
一瞬のことで、思わず声が出た。下を見たら、すでに屋上がすごい下に見えた。
ぼくは、空を飛んでいる。間違いなく、飛んでいた。
目の前には、ニャン太夫さんたちが乗っている宇宙船が見える。
「正太くん、空を飛んでるの、わかる」
空気が冷たいというより、涼しい感じだ。
「今度は、手を前に出して、体をうつ伏せにする感じよ」
彼女に手を引かれて、繋いだ手を前に出すと体が自然と横になる。
今度は、体が地面と水平に進み始めた。これじゃ、スーパーマンみたいだ。
「どう、平気でしょ」
そう言われても、飛ぶのが精一杯で、返事が出来ない。
「正太くん、海は、どっち?」
そう聞かれても、すぐに返事が出来ない。ホントに空を飛んでいくとは思わなかったので地図は頭に入っていない。てっきり、電車で行くと思っていたので、時刻表は調べているが方向がわからない。といって、空を飛んでいるときに、地図を広げるわけにはいかない。
すると、横に飛んでいるポコタンが宇宙船の中から指を刺しているのが見えた。
どうやら、アッチの方向らしい。ぼくは、彼女に空いている手で、右前方を刺した。
「向こうね。それじゃ、行くわよ」
いきなり彼女の飛ぶ速度が早くなった。ミニスカートの裾が、バタバタいっている。
空を飛ぶなら、スカートじゃなくて、ジーパンのがよかったんじゃないかと、そんなことを思った。
彼女が手をグイッと横に引いた。すぐ隣に彼女の顔が近くなる。
「少しは慣れた?」
「う、うん」
「息もできるでしょ」
「うん」
「下を見てみて」
言われて下を見ると、人が米粒のように小さく、巨大なビルやタワーマンションすら、小さく見えた。下を走る電車や車が、おもちゃのようだ。
「怖くない?」
「大丈夫」
やっと、言葉が口に出せる余裕が出てきた。
「ホントに、飛んでるんだね」
「そうよ。すごいでしょ」
「うん、すごい」
素直にそう思った。空を飛ぶなんて、感激というか、感動というか、言葉に出来ない。
「ところで、まだ、海は見えないのかしら?」
「たぶん、もう少しだよ」
空を飛ぶ速度がどれくらいなのかはわからないけど、確実に電車よりは早いはずだ。
だったら、もうすぐ海が見えてくるはず。流れる風に、潮風が混じってきているのがわかった。
「アレは、なに?」
彼女が指を刺す方向には、緑の木々に染まった、巨大な山がそびえ立っている。
確か、あの山は、登山をする人に人気の山だ。実際、登っている人たちが見える。
「アレは、森丘山って言う、山だよ」
「アレが、山なのね。きれいな緑だわ」
「姫ちゃんも登ってみたい?」
「うん。登ってみたいわ」
「だったら、日本には、富士山ていうのがあるから、今度登りにいこうか」
「わぁ、うれしい」
彼女は、飛びっきりの笑顔で言った。思わず手を離しそうになる。もし、この手を離したら、落ちるのだろうか?
そして、その山を越えると、すぐ目の下には、大きな海が見えてきた。
「姫ちゃん、アレが海だよ」
「うわぁ~、すっごく大きいのね」
彼女は、感激しているみたいで、連れて来てよかったと思った。
「すごい、すごい」
彼女は、海の上をまるで、鳥のようにスイスイ飛び回っていた。
その下には、海で遊んでいる人たちがいた。
波打ち際で遊んでいる家族連れ、砂遊びをしている子供たち、砂の上を歩いているカップル、海の中にも、サーファーが遊んでいる。夏でもないのに、以外に海に来ている人は多かった。
もちろん、ぼくも海は好きだ。ぼくが小さかったころは、家族で海水浴に着た。
小学生になった頃には、目の前の山を登ったこともある。
白波が青い海とのコントラストが、とてもきれいだ。
この海は、都心では珍しく、きれいなのだ。だから、人気がある。
ぼくは、彼女と手を繋いだまま、海の上を高く飛んだり、低く飛んだり、空の散歩を楽しんだ。
シールドを張っているので、他の人たちには、ぼくたちは見えないとはいえ、やっぱり、心配は心配だ。
ぼくの横を飛んでいる小さな宇宙船の中から、ニャン太夫さんとポコタンも初めて見る地球の海に前のめりになって覗いていた。そろそろ、地上に降りた方がいいと思って、彼女に言ってみた。
「姫ちゃん、そろそろ下に降りよう」
「わかったわ」
そう言うと、彼女は、少しずつ下に向かって降りていく。
そして、フワッとまるで雲にでも乗っているかのように、静かに砂の上に足が着いた。
「おおぉっと……」
彼女も砂に足をつけた瞬間、ミニスカートの裾がフワッと軽く捲れて、慌てて前を押さえる。ぼくは、急いでに目をそらした。
「ふぅ~」
彼女は、ホッと息をついた。
「見、見てないからね」
ぼくは、彼女のスカートの中をチラッと見えたけど、見なかったことにした。
眩しいほどの白いパンツだった。だから、スカートはやめた方がよかったのだ。
「正太くんなら、別にいいわよ」
彼女は、ニッコリ笑って言った。それは、どういう意味だ? ぼくならいいって……
それはともかく、突然現れたぼくたちに、回り人が驚いていた。
回りの人たちの視線を感じて、ぼくは、彼女の手を引いて、その場を逃げ出した。
砂を上だと、走っても余り足が前に進まない。でも、なんだか楽しかった。
砂の上を走るなんて、子供の頃以来だ。彼女も楽しそうに笑っていた。
雑木林の陰まで来て、足を止めた。情けないことに、息が切れたのだ。
なのに、彼女は、息一つ切れることはなかった。やっぱり、地球人とは違うんだ。
ぼくは、息を大きくついて、落ち着いてから、今度は、ゆっくり砂の上を歩いた。
「どう、初めての海は」
「すごく大きくてきれいだわ。この海って、どこまで続いているの?」
それは、難しい質問だ。どう答えたらいいんだ…… ぼくは、少し考えてこういった。
「果てしなく、どこまでも続いているんだよ」
なんだかキザったらしいけど、ぼくは、海を見ながら言ってみた。
彼女は、感心しているみたいに、じっと海を見つめていた。
そのまま、波打ち際まで行くと、ぼくは、その場にしゃがんで海の中に手をつけた。
「触ってごらん。とても冷たいよ。でも、気持ちいいかも」
すると、彼女も同じようにその場にしゃがんで、白い手を水の中に入れた。
「ホント、冷たくて気持ちいい」
「夏になったら、海に入って、泳いだりするんだよ」
「いいわね。あたしも泳いでみたいわ」
「姫ちゃんは、泳げるの?」
「わかんない。水の中なんて入ったことないもの」
「それじゃ、今度、教えてあげるから、いっしょに泳ごうよ」
「ホント! うれしいわ。楽しみにしてるね」
彼女は、キラキラ輝く瞳をぼくに向けて言った。なんてきれいな瞳なんだろう……
ぼくは、彼女のその瞳に釘付けになった。
「あのぅ……」
そのとき、ぼくのジーパンの裾を引っ張られて下を見ると、そこにポコタンがいた。ぼくは、しゃがみこんで、ポコタンに聞いた。
「どうした?」
「二人の邪魔して悪いけど、ニャン太夫じいさんが心配してるよ」
すっかり忘れてた。ニャン太夫さんたちもいたんだ。
「ごめん、ごめん。ニャン太夫さんは、どこにいるの?」
「アッチの木の下にいるよ」
ポコタンは、防風林の方を指した。
「姫ちゃん、ニャン太夫さんのとこに行ってみようか」
「えぇ~、ニャン太夫なんか、放っておけばいいのに」
「そうはいかないよ。とにかく、行ってみよう」
ぼくは、彼女の手を引いて、ポコタンの後に続いた。
すると、木の陰からニャン太夫さんが四足で歩いてきた。こうして見ると、どこから見ても、普通の猫だ。
「どうしたの?」
ぼくは、屈んでニャン太夫さんに聞くと、ぼくの足に擦り寄りながら言った。
「余り遠くまで行くと危ないニャ」
「大丈夫だよ。海の中に入らないから」
「私は、水は苦手ニャ」
ニャン太夫さんは、猫だから、水は苦手らしい。だったら、付いてこなければいいのにと思う。ぼくたちは、ニャン太夫さんたちと砂の上を歩いた。
「風が気持ちいいわね」
彼女が言うので横をみると、ポニーテールの髪が風になびいて揺れていた。
普段は、髪を降ろしているので、こんなときにしか見ない、耳とかうなじがぼくには目の毒だった。
しかも、ミニスカートの裾がヒラヒラして、とても危ない。
そのためか、すれ違う男の人たちの視線が、彼女に向けられる。
それが、ぼくには、すごくイヤだった。
ちょうど、ベンチが空いているのが目に入ったので、そこで休憩しながら、お弁当を食べようと思った。
「ここで、ランチでもしようか」
そう言って、ぼくが座ると、彼女も隣に座った。
リュックに入っている、お弁当と水筒を出して、早速ランチをすることにした。
ぼくの膝の上にお弁当箱を広げて、それを二人と二匹で食べた。
もちろん、彼女の手作りサンドイッチだ。うまいに決まってる。イヤ、世界一、宇宙一、おいしいサンドイッチだ。
正直言って、食べるのがもったいない。だけど、おいしそうだから、食べるけど……
「おいしい。姫ちゃん、おいしいよ」
「ホント。よかった」
彼女は、うれしそうに言った。玉子サンドにハムサンド、どれもぼくの好きなものだ。
ソーセージやから揚げも入っていた。デザートのウサギのリンゴもある。
水筒には、甘い紅茶が入っていた。やっぱり、みんなと食べるお弁当はおいしい。
「いい気分ね」
海を見ながらサンドイッチを頬張る彼女が、ポツリと言った。
波の音が、ちょうどいいBGMに聞こえる。目の前に広がる大海原。白い雲と青い空。隣には、彼女。ぼくは、この時間が永遠に続くことを祈った。
「おいしいニャ」
「ホント、おいしいよ」
そんな気分に浸っているぼくを現実に戻したのは、ニャン太夫さんとポコタンだった。気分台無しだ。
「正太くん、あたし、ホントに地球に来てよかったわ。正太さんにも会えたし、お母さまやお父さま、お姉さまにも会えたし、学校の友だちも出来たし、みんないい人たちばかりで、ホントによかったわ」
彼女は、海を見ながら静かに言った。気持ちが篭もっていて、本音だと思った。
「私も同じニャ」
「おいらもだよ」
ニャン太夫さんとポコタンも同じことを言った。
「あたし、地球が好きよ。マール星も好きだけど、あたしは、地球がどんどん好きになっていく気がするの」
ぼくは、黙って彼女の言葉を聞いていた。
「正太くん、あたしにもっともっと、地球を教えて」
「うん。たくさん教えてあげる」
「きれいな景色、素敵な場所、おいしい食べ物、たくさん知りたいの」
ぼくは、彼女にたくさん教えてあげようと思った。ぼくだって、まだまだ知らないことばかりだけど地球の先輩として、彼女には、もっと地球のいいところを知ってほしい。
ぼくたちは、お弁当を食べると、また、波打ち際を散歩した。
「正太くん、あたし、あの山を登ってみたい」
彼女は、目の前に聳え立ち、巨大な山を指差した。
「アレを登るの?」
「ダメ?」
「ダメじゃないけど、大変だよ」
「だけど、せっかく来たんだもの。登ってみたいの」
彼女のリクエストだ。答えないわけにはいかない。しかし、この山を登るのは、何十年ぶりだ。
正直、山登りは苦手だ。その前に、彼女は、登山なんて出来るのか?
この山は、観光としても人気があって、大げさな準備をしなくても、気軽に登れる。
実際、何人もの人が、山を登っているのが下からでも見える。
ぼくたちは、登山道入り口に向かった。
『ようこそ、森丘山へ』と、言う巨大な看板を見ながら登山道入り口から、最初の一歩を踏み出した。
最初は、緩やかな坂道が続いた。すれ違う人たちと挨拶を交わす。
そのことを教えると、彼女は、すれ違う人たちにニッコリ笑って挨拶をした。
すると、すれ違う人たちも笑顔になる。ときには『がんばってね』と、応援されることもあった。
彼女は、周りの人たちも幸せにしてくれる能力があるらしい。
それに引き換え、ぼくは、彼女とは少しずつ離されていく。
「正太くん、がんばって」
早くも息が切れてきた。彼女は、元気に上り坂をしっかり踏みしめて歩いている。
今度は、曲りくねる坂が見えた。それほど急坂ではないけど、ぼくにはきつそうだ。
「正太くん、ほら」
やっと彼女に追いつくと、彼女は、ぼくに右手を差し出した。
ぼくは、それがどういう意味なのかわからなかった。つくづく鈍感な男なのだ。
すると、彼女は、ぼくの右手を掴むと、笑顔で言った。
「がんばろう」
そう言って、ぼくの手を引いて坂を登っていった。
ぼくは、天国にいくような気分だった。彼女と手を繋いで山を登る。
情けない気持ちとうれしい気持ちで、回りの景色は見えなかった。
「見て、きれいねぇ」
彼女は、ときどき足を止めて、景色を楽しんでいる。
遠くに見える青い海。近くに見える白い雲。素晴らしい眺めだ。だけど、今のぼくには、それを楽しむ余裕がない。
「もう少しよ。がんばって」
「姫ちゃん、すごいね」
「こう見えて、体力あるのよ。自分の足で歩くのって、すごく楽しいわ」
マール星には山や海がないらしい。また、自分の足で歩くと言うことも少ない。
移動手段は、一人乗りの小さな車だ。昨夜、ニャン太夫さんに教えてもらった。
マール星では、タイヤのない車に乗って移動する。もちろん、ガソリンや電気で動くわけでもない。
科法とやらで自分が思うと、自動的に車に通じて、好きな方向に動いてくれる。
だから、自分の足で歩いたり、走ったり、スキップしたりなどは、しないらしい。
なので、彼女は、自分の足で歩いたり走ったりするのが、新鮮な気持ちにさせてくれて楽しいのだ。
「がんばって」
彼女に手を引かれて歩くぼくのが、地球人として、いかがなものかと思う。
「もう少しだから、がんばって」
彼女に応援されて、ぼくもがんばって足を踏み出す。こんなことなら、普段から体育の時間も真面目に受けておけばと
かなり後悔した。明日から、体育の授業も真面目に受けようと誓った。
最後の石畳の階段を登ると、やっと頂上だった。
「ハァ~」
ぼくは、両手を膝において体を曲げて息を弾ませた。
彼女は、手すりまで行くと身を乗り出して、遠くを見ていた。
風が彼女の髪を揺らす。ついでに、短いスカートの裾もヒラヒラさせている。気をつけて欲しい。
「見てみて、すごくいい景色よ。あたし、感動しちゃった」
彼女は、うれしそうに言った。ぼくも隣に並んで景色を楽しんだ。
白い雲、青い空、海が無限に広がって、眺めは最高だ。しかも、隣には、可愛い彼女がいる。ぼくは、どっちを見たらいいのか、わからないくらいだった。
「空気もおいしいわね」
彼女は、胸一杯に空気を吸って見せた。ダメだって、そんなに胸を張ったら、胸が目立っちゃうぞ。
彼女は、年の割りには、胸が大きい。お風呂に入った、姉ちゃんが余計なことを教えてくれたのだ。
同じように、頂上にいる他の人たちも景色と彼女と、忙しく見ている。
彼女は、景色じゃないんだから、見るなら前を見て欲しい。
「登ってよかったわ。今日は、ありがとうね。海と山と、両方来られて、正太くんのおかげよ」
「それほどのことじゃないよ」
ぼくは、照れ隠しにいった。
「姫さまぁ~」
「姫ぇ……」
ニャン太夫さんとポコタンのことを忘れてた。
振り向くと、ぼく以上にフラフラの二人がいた。ニャン太夫さんもポコタンも舌を出して、ハァハァと忙しく息をしている。ニャン太夫さんは、珍しく四つ足でいた。どうやら疲れきって、二本足では立っていられないらしい。フラフラしながら近づいてきた二人に向かって、彼女が言った。
「まったく、だらしがないわね。日頃の運動不足よ」
それは、ぼくにも当てはまる。体力のなさを反省した。
「まぁまぁ、ニャン太夫さんは、もう年なんだし、無理しないでね」
ぼくは、そう言って、二人を両手に抱き上げた。
「正太さまは、優しいニャ」
ニャン太夫さんは、そう言うと、喉を鳴らしてぼくに頬ずりする。こういうところは、可愛い猫だ。
「正太くん、甘やかしちゃダメよ」
「姫は、厳しいなぁ……」
ポコタンが力なく言った。この二人には、彼女はいつも厳しいのだ。
「さて、みんな揃ったし、そろそろ帰ろうか」
もうすぐ陽が落ちる。太陽が少しずつ沈んでいく。青かった空が、薄いオレンジ色に変わっていった。
「青い空もきれいだけど、夕焼けもきれいね」
彼女は、沈み行く太陽を感動しながら見ていた。
彼女は、それでも、名残惜しそうにしながらも、山を降りる。
ぼくたちは、下り坂を歩く。ニャン太夫さんとポコタンも足元に注意しながら坂を降りていった。
彼女は、ときどき振り向きながら坂を下りる。その間、何度も彼女は、楽しかったと繰り返す。
ぼくは、連れて来てよかったと、心から思った。いっしょにランチを食べて、海辺を歩いて、山を登って、たくさんおしゃべりして、手まで繋いだ。思い出満載だ。今夜は、寝られるかな。
山を降りたぼくたちは、駅に向かった。
ニャン太夫さんたちは、電車に乗れないので、宇宙船で一足先に帰ってもらう。
帰りは、邪魔者はいないので、二人きりだ。それが、ぼくにはうれしかった。
でも、それ以上に、彼女のがうれしそうだ。終始、ニコニコしている。
初めての地球の電車に乗るのが、うれしいらしい。まるで、子供だ。
でも、それがいいのだ。そんな彼女を見るのが、ぼくにはうれしかった。
お金を渡して、キップの買い方を教えると、彼女は、自分で買うと言い出す。
彼女が切符を買うのをそばで見る。なんか、ぼくの方までドキドキしてくる。
「買ってきたよ」
彼女は、最寄り駅までのキップを二枚出して見せる。
「今度、スイカを買ってあげるから、それで電車に乗れるよ」
「そうなんだ。欲しいなぁ」
「大丈夫だよ。買ってあげるから」
「ありがとう。正太くんは、ホントに優しいのね」
キップくらいでそう言われると照れる。これくらい、お安い御用だ。
ホームに入ると、止まっていた電車に乗る。オレンジと緑のラインが入っている電車だ。特急なので、四人がけのシートに並んで座った。もちろん、窓際は彼女に座らせた。
駅のアナウンスが流れて、電車のドアが閉まる。ゆっくりと電車が走り出した。
しばらくは、海沿いを走るので、眺めはいいはずだ。
電車が走り出すと、すぐにぼくたちがいた海が見えてきた。
「見て、海よ。さっき、アソコにいたのよね」
「そうだよ」
「電車って速いわね。それに、景色がいいわ」
まるで子供のようにはしゃぐ彼女を横から見ているだけで、ぼくも楽しい気分になる。彼女は、流れる景色を車窓から眺めて、楽しそうだった。
「電車って、楽しいのね」
彼女は、窓から景色を見ながら言った。一瞬たりとも目を離したくない感じだ。
地球にいれば、これからは、何度も電車に乗る機会はあるだろう。
見る景色も変る。たくさん見せてあげたくなった。これから、二人で出かけるときは、空を飛んで行くのもいいけど電車に乗って行きたい。彼女にたくさん電車に乗せてあげたい。ぼくは、そう思っていた。
しばらく車窓を楽しんでいると、急に暗くなった。トンネルに入ったのだ。
「何も見えないわ」
「トンネルに入ったんだよ」
「トンネル?」
「この電車は、山の中を走ることもあるんだよ。そのために、トンネルの中を走るんだ」
「そうなんだ。おもしろいわね」
彼女は、景色が見えなくなったので、前を向いて座り直した。
ぼくは、早くトンネルが抜けないかなと思う。彼女にいろんな景色を見せてあげたかった。
そんなことを思っていると、急にぼくの肩に彼女の頭が当たった。
暗くなって、黙ってしまった彼女は、疲れたのか居眠りを始めて、ぼくに寄りかかってきた。彼女の寝ている顔を見るのは、初めてだったので緊張した。起こさないようにしなきゃ。電車の揺れが気持ちいいのか、彼女は、小さな寝息を立て始めて、本格的に寝始めた。彼女の無防備な寝ている顔は、可愛くてたまらない。抱きしめたくなる。そんなことは、しないけど。
いつか、彼女をしっかり抱きしめるときがくるかもしれない。そのときは、しっかりしよう。ぼくは、そう思いながら、彼女を見ていた。
一時間ほど走ると、そろそろぼくたちの降りる駅に到着する。
可哀想だけど、起こさないといけない。
「姫ちゃん、そろそろ降りるよ」
ぼくは、なるべく驚かさないように、小さな声で言った。
「あっ! いけない、寝ちゃった。ごめんね、正太くん」
「大丈夫だよ」
「もっと、景色を見たかったのになぁ……」
「また、見せてあげるよ」
そう言うと、彼女は、小さく頷いて微笑んだ。可愛すぎるぞ。ぼくは、そう思ったけど、すぐに頭を振って、エッチな気持ちを振り捨てた。
そして、ようやく駅について、ぼくたちは、ホームに降りた。
外は、すっかり暗くなっていた。街を行きかう人たちが目に付いた。みんな家路に急いでいるみたいだ。
「さぁ、帰ろう。母さんたちが心配してるよ」
「そうね」
ぼくは、ポケットの中のスマホを握り締めた。今日だけで、何枚写真を撮っただろう。それも、ほとんどが彼女の写真ばかりだ。これは、もちろん、ぼくの宝物だ。
帰ったら、姉ちゃんに自慢してやろうと思う。暗い道を二人で歩いていると、彼女がぼくの右手を握った。
「いいでしょ」
「う、うん」
ぼくたちは、手を繋いで帰った。夜じゃなければ、少し遠回りして帰りたかった。
二人で歩いているときも、彼女は、今日のことを何度も話した。よほど楽しかったらしい。
「また、二人でどこかに行きましょうね」
「そうだね。今度は、どこに行きたい?」
「そうね…… 考えておく。たくさんいろんなところに行きたいの」
「そうだな。例えば、動物園とか、博物館とか、遊園地とか、今度は、父さんたちもみんなで旅行しようよ」
「いいわね。お母さまたちとも行きたいわ」
帰ったら、旅行のことを話してみよう。父さんは、作家で、ときどき取材旅行に行ってるからきっと詳しいはずだ。自然がたくさんある温泉とか行ってみたい。
そんなことを話しながら歩いていると、ウチに着いてしまった。もう少し、二人で歩いていたかった。
「ただいま」
「ただいま、帰りました」
二人で玄関に入る。
「お帰り」
母さんが迎えてくれた。すでにキッチンから、いいニオイがした。
「お帰りなさいませ、姫さま」
「正太さんもお帰り」
先に帰っていた、ニャン太夫さんとポコタンが、エプロンをつけて、夕飯の手伝いをしている。
「お母さま、あたしも手伝います」
彼女が言うと、母さんは、優しく言った。
「姫子ちゃんは、いいのよ。疲れてるでしょ。もうすぐ、ご飯だから、着替えてらっしゃい」
彼女は、ちょっと残念そうな顔をしたものの、すぐに気を取り直して、部屋に戻っていった。ぼくも部屋に戻って、着替えることにした。
着替えて一階に戻ると、父さんと姉ちゃんが席についている。
そして、ぼくと彼女も自分の席に座ると、ニャン太夫さんとポコタンが、テーブルの真ん中に大皿に乗った麻婆豆腐を運んできた。湯気が立ち上り、おいしそうなニオイがする。
「うわぁ、すごぉい!」
彼女は、大感激だった。だけど、辛いのに大丈夫だろうか?
「こっちもできたよ」
ポコタンが持ってきたのは、さらに山盛りの餃子だった。
「おいしそう」
彼女が目を輝かせた。中華料理や餃子なんて、初めて見る食べ物だろう。
「たくさん食べてね。餃子は、ポコちゃんとニャン太夫さんにも手伝ってもらったのよ」
母さんがうれしそうに言うのに反して、ニャン太夫さんとポコタンは、自慢するように、胸を張っている。
だけど、よく見れば、餃子の形が、母さんが包んだのとは、明らかに違っているので、見た目でわかる。
それにしても、肉球の手や丸い手で、どうやって餃子を包めるのか、不思議すぎる。
「辛いかもしれないから、気をつけてね」
ぼくは、そう言って彼女に注意した。しかし、ぼくが言う前に、彼女は、すでに一口食べていた。
「からぁ~い、でも、おいしいぃ……」
そう言って、ご飯をかき込む。
「姫子ちゃん、ゆっくり食べなさい。慌てなくても、誰も取ったりしないから」
「ハイ」
父さんに言われて、落ち着けるように、冷たいお茶を飲んだ。
続いて、餃子である。姉ちゃんが食べるのを見ながら、真似してタレにつけて食べる。
「おいしい。お母さまは、料理の天才ですね。今度、あたしに作り方を教えてください」
「いいわよ。しっかり覚えてね」
母さんもうれしそうだ。
「うまいニャ~」
「ホント、おいしいよ」
宇宙人の二人が、麻婆豆腐と餃子をうまそうに食べている。猫と不思議な宇宙生物が誰よりもおいしそうに食べているのを見ると、やっぱり、少し異常だと思わずにいられなかった。
父さんも姉ちゃんも、おいしく食べている。
誰もが楽しく、おいしく、おしゃべりしながらの家族団らんなんて、なんだか久しぶりな気分だった。
「そうそう、結局、デートは、どこに行ったの?」
姉ちゃんが言うと、彼女のスイッチが入った。
食事をするのもそこそこに、今日の出来事を逐一、話し始めた。
海を見たこと、山に登ったこと、海を見ながらサンドイッチを食べたこと、波打ち際を手を繋いで歩いたこと、
帰りの電車で見た風景のこと、空を飛んだことは言わなかったけど、それこそ、楽しそうに話し続けた。
そのたびに、笑いが起きた。滅多に笑わない父さんまで大笑いした。
姉ちゃんが話の合いの手のように、突っ込むと彼女も笑った。
母さんが楽しそうに話を聞いている。山登りで、ヘトヘトになったぼくやニャン太夫さんのことを話すとニャン太夫さんが言い返すが、それにも笑った。
こんな楽しい食事は、ホントに久しぶりだった。みんなが笑って、楽しく食事をした。
「ニャン太夫さん、アンタ、猫なんだから、もっと体力つけなきゃダメじゃん」
「しかし、姫さまが、元気がありすぎるニャ」
姉ちゃんとニャン太夫さんの掛け合いは、漫才のようだった。
「しょうがないよ。ニャン太夫じいさんは、年寄りだから」
「ポコタンだって、ヘトヘトだったニャ」
「おいらは、ニャン太夫じいさんに合わせただけだもん」
ぼくからしたら、どっちもどっちだ。
「しかし、正太も姫子ちゃんに手を引かれるなんて、もっと体力をつけなきゃいかんぞ」
いきなりぼくに話を振られて、ご飯を喉に詰まりそうになった。
「あっ、そうだ。姫ちゃんと話したんだけど、今度、みんなで旅行に行ってみたいんだけど?」
話を変えようと、昼間に話したことを言ってみた。
「アラ、いいわねぇ。そういえば、家族で旅行なんて、しばらく行ってないしね」
「そうよ。お父さん、せっかくだから、久しぶりに行きましょうよ」
家族旅行なんて、行かないっていってた、姉ちゃんまでが乗り気だ。ぼくは、正直、驚いた。これも、彼女の見えない力なのかもしれない。
「そうだなぁ…… 久しぶりに行ってみるか」
「やったぁ。よかったね、姫子ちゃん」
「ハイ」
イヤイヤ、ちょっと待てよ。言いだしっぺはぼくだけど、そんなにすんなり話が決まっていいのか?
「そうだな。近場なら、箱根とか伊豆かな」
「会津とか日光、鬼怒川なんかもいいと思うわ」
「草津とか猿ヶ京なんか、どうかしら?」
いきなり、温泉の話になってる。どういう風の吹き回しだ。
ぼくと彼女たちは、蚊帳の外だ。それをいいことに、彼女たちは、食事を再開した。
話に夢中の父さんたちを横目で見ながら、ぼくたちは、食事に集中する。
ニャン太夫さんもポコタンも食欲旺盛だ。彼女は、箸が止まらない様子だった。
結局、旅行の行き先や予定なんかは、後で相談するということにして、楽しい夕食の時間も終わった。
ご飯はもちろん、餃子も麻婆豆腐も全部きれいに完食だった。
母さんと彼女が、旅行先について話をしながら後片付けをしている。
ニャン太夫さんとポコタンが洗った食器を拭いて、食器棚に入れている。
もはや、手際のよさは、折り紙つきだ。宇宙人なのに、馴染みすぎだぞ。
片づけが終わると、彼女は、今夜も姉ちゃんとお風呂に入った。
ぼくは、その間に自分の部屋に入って、マンガを読みながら、ポコタンに聞いてみた。
「なぁ、ポコタン。ぼくの家族って、姫ちゃんが来てから、変ったと思うんだよ」
ぼくは、感じていたことを正直に言ってみた。
「それは、きっと、姫の持って産まれた感性というか、幸せオーラが出てるんだよ」
「幸せオーラか…… そうかもしれないな。ぼくのクラスだって、姫ちゃんが転校してきてから、雰囲気がガラッと変わったもんなぁ」
ぼくは、マンガから目を離して、ゴロッと寝転んで、天井を見詰めた。
「姫ちゃんには、ずっと、ここにいて欲しいなぁ」
「それは無理だよ。姫は、マール星の女王になる人だから、いつかは星に帰らなきゃいけないんだよ」
「わかってるよ」
「でも、そのときは、正太さんもいっしょだから、いいんじゃないの」
「それは、まだ先の話だろ。ぼくは、姫ちゃんと結婚して、マール星に行くなんて、決めてないからな」
彼女には、ウチにいて欲しい。でも、それは無理。そんなことはわかってる。
彼女は、星のお姫様だから、ずっと地球にいるわけにはいかない。
でも、ぼくもマール星に行くという話とは、別の問題だ。
「お風呂、空いたわよ」
そこに、ドアが空いて、風呂上りの彼女が入ってきた。ぼくは、慌てて飛び起きた。
「わ、わかった、ありがと」
いつものことだけど、風呂上りの彼女は、頬っぺたがピンク色に染まっていて、とても可愛い。
ピンクの果物柄のパジャマがよく似合う。濡れた髪をタオルで拭きながら、部屋に入ってきた。
「ポコタンと、何を話してたの?」
「あっ、イヤ…… 今日のことだよ。なぁ、ポコタン」
ぼくは、平静を取り繕って、誤魔化しながら、ポコタンに目で合図を送る。
「うん、そうだよ。正太さんと、昼間のことを話してたんだ。正太さん、お風呂に入ろう」
「そ、そうだな」
ぼくは、着替えを持って、ポコタンと一階の風呂場に向かった。
彼女は、ぼくの後姿を小さく笑いながら見送っていた。
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