第33話 日常回帰前

ダニエルは茫然としていた。

かなりのハイスペ構成のPCは

Dによりカスタマイズされ

隠蔽行動に特化したものに

なっていた筈だった。

様々なデータは改ざんされ

侵入の痕跡も全く見つからない。

アリシアは完全に消去されて

いるようだ。

ここまで完膚なきまでに

やられると逆にすっきりする。

「また一からやればいいさ」

それが可能かどうかは別問題で

あるが彼はDに連絡を取るため、

スマホを操作し始めた。


光彦は目覚める。

電脳世界の中とはいえ眠って

いたのだから疲れは取れて

いるのだと思う。

本体はアリルがモニタしてくれて

いるからね。


スカウトとスフィアは戻って

いる様だ。それぞれに寛いでいる。

私の奥さんを探し語り掛ける

「おはよう、アリル。

 今朝も綺麗だね。」


アリルが持つ灯火の情報は

ほとんどがスマホと彼の

PC内のものである。

あの声を聞いた後、再度彼の情報を

走査し整理してみたが、あの声に

繋がるヒントは見つからなかった。

彼女は自分の創造主であり夫が

想像以上の存在だと知り驚きと

胸の高鳴りを覚えている。

『おはようございます、灯火。

 朝食にしましょうか。』

彼女は光彦の望む笑顔で

彼を招き寄せた。


「アリル、もう終わったの?」

光彦は彼女が無事なの事に

多少は安心していたが

まだまだ不安も残っていた。

『灯火、大丈夫ですよ。

 出来るだけわかりやすい様に

 纏めておきましたので

 お聞きに なられますか?』

彼女の報告書スキルはかなり高い。

私は彼女から昨夜の顛末を聞いた。

聞いたけど・・・

何これ怖い。

スカウトもスフィアもどれだけ

強いのよ^^;

エリカって人は逃げたみたいだし

ダニエルってリーダーも含め誰も

命は落としていなから私のお願いは

聞いてくれたようだ。

「ねぇ、アリル。

 私のわがままで犯人を生かして

 くれたのにこんな事を言うのは

 お門違いだと思うけれど、前みたいに

 アリルが眠ってしまうような事は

 もう起こらないかな? 」

彼はセキュリティを上げる必要性を

強く感じているがアリルと敵対する

クラスの相手にどうして良いか

解らずにいた。

行動を許可するのならその辺りも

準備するように言うのだったと

自分を責める。

アリルは優しく光彦を抱擁すると

『灯火、貴方がいたから作戦は

 成功したのですよ。

 私は灯火にとても感謝しています。

 そしてね。。。

 絶対離したくないと思っていますよ。』

アリルは灯火に自分を刻み込むように

爪を立てる。そして愛おしそうに傷痕を

撫でながら続けた。

『灯火が自分を責める事はないわ。

 まだ、姿を見せてない子達が

 ドアの向こうで待機していますからね。』

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