向日葵と山梔子

こあ

夕陽と僕の影

 夕陽の沈む様を眺めていると、何だか大人になった気がした。

 僕はヤマボウシの甘い香りの気怠さにぼーっとする。向かってくる色濃い影達が覆う道は昼間よりも狭く感じられた。

 夕陽は血のように赤く、空は怪しい青に染まっていたが、その先にある夜の気配は僕を心底ワクワクさせた。何処からが子供で何処からが大人なのかと問われれば、僕はこの高揚感をあげるだろう。


 ふと視線の先、随分小さくなった石塀から人が横切る。ツツジの葉が見送る影は憧れの形をしていた。歳は二つも上の人。嫋やかで、お淑やかで、勤勉な人だ。彼女はいつでも教師より余程大人に見えた。

 いつも僕の先を行き、夕陽のように眩しく、その行き先を知らせない彼女はますます幻じみていった。それ以上触れることが怖くなって好奇心を抑え込んだ。


 いつものように彼女を見送った後、振り返って影を見る。影は僕よりも背が高くてずっと大人だったが何とも頼りなくて僕のようだ。まるで隠すかのように、影へと高鳴る心臓の鼓動が溶け込んでいった。


 もう一度夕陽を見る。

 僕は足早に帰った。

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