第22話 新たなる肉体

「メフィスト。かなり派手に暴れたようだな。まだ実験段階とはいえ、ここまで体をボロボロにされると修復にかなりの時間を取られるぞ」

ダグロスは、巨大な長方形のガラスケースのようなものにメフィストを寝かせ、透明な液体で中を満たしていく。

メフィストの体は左腕が潰れ、右足は折れ曲がり、体内にもかなりのダメージを負っていた。

「せっかく出来上がった体を、いきなりここまで破壊するとは・・・何をどうすればここまで破壊できるのだ。肉体を得て動けるようになって嬉しいのは分かるが、もう少し考えて欲しいものだな。誰が治すと思っているのだ。自制心を持て、まだどんな不具合が出るかわからんと言うのに」

ダグロスは不満を口にしながら修復の準備を進めていく。

「ルナ師匠と会ったよ」

「何・・師匠と会ったのか・・・」

メフィストの呟きにダグロスの手が止まる。

「ルナ師匠は相変わらず美しく、そして容赦なかったよ。ハハハハ・・・」

メフィストは、恍惚とした表情で話している。

「陰陽師とか言う連中の中に、我らと同じ魔力を扱うものを見つけた。そいつと遊んでいたら師匠が乱入してきた。いきなり重力魔法の奥義とも言うべき黒球(ブラックホール)を放ってきた。いや〜流石に焦ったよ」

「師匠は元気そうだったか・・」

「黒球(ブラックホール)をいきなり放ってくるほどだよ。元気いっぱいだろう。なつかしい昔話をする暇も与えてくれなかったよ」

「そうか、ノアもいたからおそらく居ると思っていたが・・・そうか!元気だったか」

「我らは許し難きもの達だ、永遠に許してはくれないだろう」

「フッ・・それは今更だろう。ところでこの魔道籠手は、どうすればこれほどのまでに破壊できるのだ。自慢の一品だぞ。これをここまで破壊できることが不思議なんだが」

破壊され真っ二つになっている魔道籠手を手に取り不思議そうに見ているダグロス。

メフィスト使用していた魔道籠手は、ダグロス自慢の一品。

対物理結界を施し、弱いながらも対魔法結界も組み込んである。

それなのに片手側は真っ二つに切られている。

「製作者であり魔道籠手の構造と仕組みを知る私ですら真っ二つに切ることは難しい。なぜ、これほどまでに破壊されているのだ」

「私が戦った陰陽師に魔力を扱うものがいたことは話しただろう」

「先ほど話していたな」

「そいつが私の腕ごと切り落とした」

「どうやって・・ありえんだろう」

魔道籠手ごと腕を切り落とされたと聞き、驚くダグロス。

「魔力によく似ているが魔力とは別の力を使い出して、それを剣・・いや、この国で言う刀というやつか。刀とかいう物にその不思議な魔力に似た力のようなものを纏わせて魔道籠手を真っ二つに切った」

「不思議な魔力に似た力とは何だ」

「わからん。魔力に似ているが我らが扱い知っている魔力とは違う。見たことも聞いたこともない。初めて遭遇する力だ」

「ならば、調べてみるしかないだろう」

「それは私がやろう。私の仕事だよ」

「それは当分の間、無理だ。他の方法を考える」

「あれは私の獲物だよ。私が倒すのだ。横取りはやめてくれ」

ダグロスを睨むメフィスト。

「分かった分かった。ただ、ここまで深刻なダメージを受けてしまうと修復に時間がかかるぞ。メフィスト。君の魂を入れてある魔石が壊れてしまったら、修復は不可能だぞ。気をつけてくれ」

「簡単には壊れないだろ」

「簡単には壊れんが、万が一がある」

「壊れたらまた魔石に入れてくれればいいじゃないか」

「簡単に言うな。今ここにある設備では、そこまでの魔石はまだ作り出せん。お前が死ぬ寸前に私が持っていた魔石に魂を移すことができ、人工生命体の肉体の作成ができるところまできたからこそ復活できたのだから無茶をしないでくれ」

「向こうの世界にいたときに比べれば、設備の質は落ちるからな。仕方ないか・・」

「そう遠くないうちに、その魔石と同じ物が作り出せる設備が揃うと思うが、魔石が完全に砕けると魂がすぐさま離れてしまう。そうなると同じ魔石があっても魂をとどめておくことは無理だぞ」

「なら、砕かれないように気をつけるさ」

「そうなると人工生命体の肉体の強化と魔石を守ような装備を考えることが課題だな」

ダグロスは、メフィストの修復をしながら明らかになった問題点の解決策を考えるのであった。

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