第11話 悪魔の大公爵アスタロト
意識を失い壁からこぼれ落ちてきた人たちは、行方意不明となっている人数と会っている。
ならば討伐された緑色の妖魔が原因のようだ。
全員生きている。
どうやら怪我も無いようだ。
おそらく妖魔により眠らさせているだけだろう。
時間が経てば目を覚ますはずだ。
「アスタロト。それでなぜ、お前がここにいる」
「その問いに関しては、こちらこそ逆に言いたい。何故だ。この高貴なる儂と契約しておきながら最近は全く呼ばんではないか・・・」
「やはり、聖流が契約者か」
赤羽炎の呟く声がする。
「数年前にヨーロッパ最高峰と呼ばれる魔法使いが日本に来た時に教えを受けることができた。その時に召喚術を学んで、召喚術を使った時に召喚できたうちの1体がアスタロトだ」
うっかり呼び出してしまい契約するしかなかったのだと言うか、なぜか呼び出した時点で契約が成立していたのだ。
普通はそんなことはあり得ない。
契約前なら契約せずに送り返すこともできるのだが、なぜか呼び出した時点で契約となっていた。
悪魔の大公爵であり堕天使でもあるアスタロトに聞くが答えようとはしなかった。
聖流は、アスタロトのことはすっかり忘れていた。
かなり高位の悪魔であるため、かなりやばい相手であり意図的に忘れようとしていたのだ。
そのため、普段から使い勝手の良い式達を使うことが多くなる。
当然、使い勝手の悪い式や使い魔の類は呼ばないことが多くなっていく。
だが、そんなことを言うと怒り出すに決まっているので、適当にはぐらかすしか無い。
「アスタロトを呼び出すほどの相手がいないからだ」
「そんなことは当たり前であろう。儂より優れたものはいない。それよりも儂は暇だ」
「エッ」
「暇なのだ。退屈なのだ。格下相手でも構わん。雑魚でも構わん。我を呼べ」
普段、アスタロトは魔界の巨大な城に多くの召使いと共に住んでいる。
そこでは、戦いを仕掛けてくる奴がいない限りやることが無いらしい。
以前呼び出した時も暇だと騒いでいた。
「それよりも、その絵画の中の扉はなんだ」
聖流は絵画の中に現れた扉を指差す。
アスタロトは聖流が指差す扉を見ると満面の笑みを見せた。
「これはとても素晴らしいものなのだ。この素晴らしさが分かるか。よく聞くがいい。遥か昔にこの絵の作者が何を思ったか、下絵の段階で自らの血を混ぜた絵の具で魔界の扉を描き、その上に新たな絵を描き扉を隠したのだ」
「魔界の扉」
「そうだ。だが、この絵の作者は魔界の者を呼び出せずに人生を終えた。最近になりこの世界に放っている私の使い魔がこの絵を見つけた。当然、扉も分かった。だが、扉の魔法陣が間違っているため、そのままでは使い物にならん。そこで、私が使うため使い魔を使って魔法陣を直したのだ」
「この絵はすぐに処分決定だな」
「ハァ〜?・・・聖流。何を言う。せっかく見つけて改造した扉だぞ。この素晴らしさがわからんのか」
「だいたい、漏れ出る魔力に一般人が耐えられんだろう」
「何を言う。儂の偉大さと強さをこの世界に知らしめる素晴らしき物であろう。皆儂の偉大さを知り、我が前に平伏するであろう」
「却下だ。却下」
アスタロトが信じられないと言った顔をしている。
「何を言っている。儂の聞き間違いか」
「却下だと言った」
「何を寝ぼけたことを言っている。ならば、毎日我を呼べ。毎日毎日毎日呼べ」
「却下却下、毎日なんて呼べん。呼べるか」
「ウググ・・なら2日で手を打とう」
「無理だ」
「3日」
「駄目だ」
「ウグググ・・・・」
アスタロトの全身から抑えていた魔力が勢よく噴き出し始めた。
「聖流。まずいぞ」
炎が八神萌の方を見る。
八神萌は顔面蒼白状態で今にも気を失いそうだ。
さらに南館長と刑事の田辺さんの方を見る。
南館長は既に気を失っている。
刑事の田辺さんはどうにか堪えている。
「ハァ〜。仕方ない週1回だ。それ以上頻繁には呼べん」
「ウグググ・・・仕方ないそこで妥協しよう。いいか絶対だぞ。絶対に呼べ」
アスタロトは何度何度も言いながら扉の中に消えて行き扉が閉まった。
「聖流。もしかして奴は、かまってちゃんなのか」
「前からああだから気にしても始まらん。単に暇なだけだ。奴は変わらん」
「それで済む問題なのか・・・」
「これから扉の魔法陣を消去をこなう」
聖流は自らの氣を練り上げて、絵画の中にある魔界の扉の魔法陣を消去を始める。
絵画を壊さぬように繊細な氣の操作が必要になる。
扉に刻まれた魔法陣を構成している呪印や魔法文字に、白銀の氣を干渉させて一つ一つ消していく作業を始めている。
扉の魔法陣を暴走させたり、扉が開いたままとならないように注意しながらの作業だ。
時間をかけて魔法陣と魔法文字を消去した。
流石に下絵の扉の絵までは消去することはできない。
あとは浄化をして終わりだ。
絵画に残っている邪気や魔力の類を残らず浄化していく。
やがて絵画の持つ雰囲気がかなり軽やかになり心なしか気持ち良く感じるほどとなった。
そして、陰気な空気を纏っていた美術館は、少し明るさを取り戻したようだ。
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