第四幕 アニエス・ソレル・4場
◯同、アニエス
アニエス、王に近づく:
「さようなら、陛下」
国王:
「どこへ行くんだ、アニエス?」
アニエス:
「出て行きます」
国王:
「君が……?」
アニエス:
「昔、あるジプシーが私の栄華を予言しました……。私はずっとそれが叶うことを願っていました……。フランス王の愛を手に入れたいと。ですが、ベッドフォード公が王位を簒奪しました。陛下は戦わずして王位をあげてしまったのですから、ベッドフォード公が唯一のフランス王です」
国王:
「ああ! そういうことか……? さあ、伯爵、王が騎乗するのにふさわしい軍馬はないか?」
伯爵:
「父の馬があります」
国王:
「すぐにここへ連れてくるように」
伯爵から従騎士へ:
「陛下の仰せのままに用意しろ」
国王:
「ありがとう。この城には、王が戦いの日に身につけるのにふさわしくて、私のサイズに合う甲冑はあるか?」
伯爵、パノプリ(西洋甲冑の一式)を見せる:
「ご覧ください、陛下」
国王:
「それでいい。一番強いものは私のためにある」
伯爵:
「このパノプリを解いて、陛下のお召し替えを」
この行から「デュノワ、私の拍車を」というセリフまで、伯爵の取り巻きが国王を武装させる。
国王:
「さて、サヴォワジー伯爵、あなたに託していた任務の結果を知りたい。教えてくれ」
伯爵:
「ブルターニュ公に会いました」
国王:
「それで? ……私はちゃんと聞いているよ」
伯爵:
「ブルターニュ公は陛下の敵と結んだ条約を破棄し、平和または戦争のために陛下と同盟を結ぶ条約に署名すること、そして千本の槍とともにブルターニュ公の弟をフランス陣営に送り込むことを約束しました。これが彼の申し出です」
国王:
「それは朗報だ。ブルターニュ公は見返りに何を求めている?」
伯爵:
「弟のリッシュモン伯爵のために、クラヴァンの戦いで逃れたブーケントが持っている大元帥の剣を要求しています」
国王:
「それだけか?」
伯爵:
「はい、陛下」
国王:
「サヴォワジー伯爵、あなたの手を通して、ブルターニュ公は望みのものを手に入れるだろう……。明日出発して、私の言葉を伝えるんだ。少なくとも私の方では、同盟に忠実に従うつもりだと。ポワティエに行かせてくれ、そこで落ち合おう」
伯爵:
「陛下の仰せのままに」
伯爵の取り巻き、国王を武装させ終わる。
国王:
「デュノワ、私の拍車を」
デュノワ、国王の拍車を結ぶ。
国王:
「さあ、次は剣だ」
伯爵が剣を渡すと、国王はそれを吟味する。
国王:
「伯爵、王の手にはこれよりもっと強く鍛えられた剣が必要だ。これではすぐに折れてしまう……見てみろ……」
国王、その剣を折る。
国王:
「私の腕では、最初の一振りでこの通りだ」
伯爵、別の剣を渡す。
国王:
「それでいい」
国王、槍を持った従騎士に対して:
「サラセン人が私の槍を運ぶ。それを彼に渡して。……私の兜を」
国王、兜を渡されてそれをかぶる:
「今、静寂が訪れた。今だから話すが、私はこれまで秘密裏にベッドフォード公から名誉ある講和を得ようと考えていた。問題を解決するために戦争するのは時間がかかりすぎるし、低俗すぎると思わないのだろうか?」
全員、武器に殺到する:
「そうだ、戦争だ! 戦争だ……」
国王:
「さて、最後の力を振り絞って私を支えてくれ。そうすれば子供たちはすべてを手に入れることができる……。しかし、死闘はこれからも続くだろう。私はフランスの戦いをずっと見渡してきたが、鞘に収まったままの私の剣は最後に戻ってくる……。私を指導者にしたいのか? ならば、これが私の掟だ。尊厳王フィリップ二世やヴァロワ家が拡大したフランスは私のものではない。かつてシャルルマーニュ(※カール大帝)が主権者としてドイツとの分かれ目に引いたフランスは、一方の手で大洋を、もう一方の手でライン川を必要としていた。さあ、私の意志を諸侯に伝えよう。これが私のフランスだ、他は知らない」
デュノワ:
「陛下、私たちは膝をついてご命令を聞きます」
国王:
「これから私が発する叫びはひとつだけだ! 誰が上に立つ者か、とくと見せつけよう! モンジョア、サン・ドニ! シャルル王を奪還せよ!」
全員:
「モンジョア、サン・ドニ! シャルル王を奪還せよ!」
国王:
「さあ、アニエス、あなたが求めている本当のフランス王は誰か言ってごらん……。さあ、鷹匠たちよ、狩りをしよう……。私についてこい」
国王は立ち去り、全員ついていく。
伯爵、デュノワに告げる:
「陛下を見捨てずに、この最初の興奮の炎を抑えてほしい」
伯爵、アニエスに:
「マダム、あなたに敬意を捧げます!」
アニエス:
「伯爵、私のためにこの道を開いてくださった上に、陛下の心まで手に入れたのは神の計らいです。ですから、神だけに敬意を捧げてください」
二人、一緒に出ていく。
バルタザール、少しだけ再登場:
「さあ、今日からは狩りの内容が変わる。イングランドを討ち取るのは難しいが、狩人の一撃が当たることもあるさ。さて、陛下のかわいいコケットよ、俺たちは止まり木に戻ろうか」
バルタザール、立ち去ろうとする。
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