第三幕 シャルル七世・5場

◯サヴォワジー伯爵、アニエス


伯爵、アニエスを引き止める:

「いえいえ、まだここにいてください、マダム! 私は順番に話をしたいのですから……女! あなたは美しい! ……ああ、本当に美しい。あなたの弱い恋人の黒い瞳を見れば、その力が理解できる。あなたの声は天使か魔性の力が宿っている、恋人として国王に命令して操ることもできるだろう……。まあ、私の名誉のために言っておくが、真っ赤に熱した鉄でその声と目をつぶした方が、あなたのためだ……」


アニエス:

「えっ! 何をおっしゃっているのですか?」


伯爵:

「フランスに不幸を招いたのは魔性の力のせいだ。愚かなシャルル王は、まるで神の掟であるかのように魔性の掟に服従している……! 王の恋人に選ばれた女は、その権力がもたらす高みから、民衆の悪魔にも天使にもなり得る。あなたはフランスの天使になることもできたのに悪魔になることを選んだ! あなたの姦淫的で宿命的な愛のせいで、今日、西洋のサルダナパールが生まれた! 弱い君主はもがき苦しみ、最後の瞬間、あなたの抱擁の中で窒息するのだ……!

あなたの手の抱擁という打撃でフランスは倒れて死に、イングランドがフランスの残骸を分け合うとき、叫び声が至る所で聞こえるようになる。あなたは逃亡し、王国は苦しみの中で人生よりも長く戦うことになる! 燃え盛る町の炎が松明となり、あなたの足は一歩一歩墓に近づくだろう。あなたは逃げ惑う、安眠できる場所はどこにもないのだから、逃げるしかない!」


(※サルダナパール:アッシリア王。敗北に際し、愛妾、従者、財産もろとも自ら宮殿に火を放って死んだ)


アニエス:

「お許しください!」


伯爵:

「私たちは子孫に何を残せるだろうか! あなたが通り過ぎるのを見て、彼らの叫び声があなたを追いかける。死にゆく者たちは、最期の時を呪うように、ベッドに寄りかかりながらまぶたを開く。彼らの声は、あなたの心の声と重なり、すべての者があなたに向かって叫ぶだろう。災いなるかな、災いなるかな!」


アニエス、膝をついて:

「サヴォワジー伯爵、悔い改めることで消せないものはありません……。そんなことがあってはいけません。どうかお許しください……。それに、伯爵が思うほど、事態は悪くないのです。傷ついた手は治すことができます」


伯爵:

「試してみるといい!」

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