第三幕 シャルル七世
第三幕 シャルル七世・1場
◯同じ装飾(昼の光)
◯サヴォワジー伯爵、王の扉の前で見張る、
アンドレ、もうひとつの扉の前で見張る、次に従騎士、次にヤクーブ
幕が上がると、ホルンの音が響く。
伯爵:
「アンドレ、この音はなんだ?」
アンドレ:
「ホルンの音です」
伯爵:
「誰が鳴らしているのか?」
アンドレ:
「ここからは見えません。外からです」
伯爵:
「跳ね橋には詳しい人がいないのか?」
アンドレ:
「はい、旦那さま。私は塔に二人の見張りを配置しました……。あっ! 彼らは友人です。門は開かれています……。衛兵が優秀なのはご存知の通りで……ナルボンヌの紋章をつけた従騎士です。彼は悪魔のように熱い男ですよ!」
伯爵:
「合図をして、すぐにここに連れてきてくれ」
アンドレ:
「旦那さま、お待たせしました。お入りください、従騎士殿」
従騎士:
「サヴォワジー伯爵ですか?」
伯爵:
「私だ」
従騎士、ナルボンヌの紋章が入った手紙を渡す:
「伯爵、このメッセージには迅速な返答が必要です。私の主人からです」
伯爵:
「承知した。戦地から来たのか?」
従騎士:
「はい」
伯爵、手紙を読んでいる:
「ナルボンヌ卿は元気か?」
従騎士:
「はい」
伯爵:
「いつ出発したのか?」
従騎士:
「昨夜です」
伯爵:
「ここまで一晩で! 歩みが早いな! あなたの主人はまるで生き急いでいるかのように私に語りかけてくる。しかし、私は明日の戦いに加勢することはできない」
従騎士:
「主人はイングランドが戦いを仕掛けてくるのを待っています。しかし、できればこちらから討って出たい。もし、サヴォワジー伯爵の優れた槍と兵力の支援を借りることができるなら、わが主人はみずから戦端を開くことをためらわないでしょう」
伯爵:
「あと二日待ってくれ。どうしても済ませておかなければならない義務があるので、それから彼に合流する。あなたの主人を待たせてはどうか。二日の遅れは害にならないが、急ぎすぎるとすべてを失うことになる」
従騎士:
「サヴォワジー伯爵から返事をいただいたらすぐに立ち去るようにと命じられています」
伯爵:
「遅くとも一時間以内に返事を手に入れるだろう。ついてきなさい。——アンドレはここに残れ。それでは勇敢な従騎士よ、友よ。道中、気をつけて」
従騎士、他の者とともに立ち去る。
伯爵、アンドレに:
「今日はアンドレに熱心に働いてもらう必要がある」
アンドレ:
「命じてください」
伯爵:
「グラヴィル城を知っているか?」
アンドレ:
「記憶に間違いなければ、オーセールの村の近くです」
伯爵:
「まさにそれだ」
アンドレ:
「城主のグラヴィル伯爵が……、神の慈悲によってまだ生きていたころ! 旦那さまの命令で、同じ道のりを二十回も行き来しました。グラヴィル伯爵はクラヴァンの戦いで亡くなり、俺はその知らせを伝えにいきました。伯爵の娘の声が聞こえるようです」
伯爵:
「よろしい。それでは、イザベル嬢のことも知っているな?」
アンドレ:
「はい、旦那さま……。もちろん彼女のことも。美しいご令嬢でしたが、さらに美しくなっているでしょう」
伯爵:
「私は会ったことがないが、そうかもしれないな。だから、アンドレ、これを彼女のところに持っていってくれ」
アンドレ:
「この指輪を?」
伯爵:
「この指輪だ」
アンドレ:
「俺は、彼女に何を申し上げればいいでしょうか?」
伯爵:
「アンドレは彼女を私の城に連れてくるために訪問していること、私は遅滞なく今日彼女を待っていることを……。今日なら話ができるだろう……。なぜなら、明日の夜、私は出発するからだ」
アンドレ:
「承知しました」
伯爵:
「彼女を私の恋人として尊重し、話すときは伯爵夫人と呼ぶんだ」
アンドレ:
「旦那さまのおっしゃる通りにします」
伯爵:
「よろしい」
アンドレ:
「他に何かすることはありますか?」
伯爵:
「いや、別に……。サラセンを見送る以外は……」
伯爵、口ごもる:
「聞かなかったことに……! 思い残すことは……いや、何でもない……」
伯爵、ベランジェールの部屋の方を見ながら:
「ただのため息だ。もういい、行け」
アンドレ:
「サラセンでしたらそこで一夜を過ごし、バーノス(※フード付きマント)に横たわってました」
伯爵:
「好きにさせておけ」
アンドレ:
「おやおや……! 伯爵夫人の部屋の窓を見つめて何をしているんだ? 奴隷め、ついに……」
アンドレ、立ち去る。
ヤクーブ、敷居の上にいる:
「俺ならここにいますよ、旦那さま」
伯爵:
「私がおまえを縛ろうとしたら止められた。裁きは下されたのだ」
ヤクーブ:
「はい、旦那さま」
伯爵:
「陛下の一言でおまえは救われた。今朝は命の恩人のドアのそばに立って、しばらく見張りをしてくれないか?」
ヤクーブ:
「俺はどこに泊まってもいいし、どこに行ってもいいし、どこから来てもいい」
伯爵:
「では、ヤクーブは忠実な気持ちでにここにとどまっているのか?」
ヤクーブ:
「はい、旦那さま」
伯爵:
「陛下が突然現れたら、別のドアに引き下がるように」
ヤクーブ:
「はい、旦那さま」
伯爵:
「すぐに戻る」
伯爵、立ち去る。
ヤクーブ、ひとりで思索に耽る:
「なぜマダムは、俺と同じように、一瞬もまぶたを閉じることなく夜通し起きていたのだろう……? 死刑判決を待っているのは俺だけだと思っていたのに……。涙を流しているのが見えた、泣いている声も! ムハンマドよ、俺の血は彼女の苦痛のためにあるのだ! 俺みたいな人間にとって、人生はこのように致命的なものになる。いつも他人が苦しむんだ……!」
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