第二幕 サヴォワジー伯爵・2場

◯司祭、ベランジェール


司祭、ドアに現れる:

「神の娘よ!」


ベランジェール:

「私はここにいます。ああ、司祭さまの額はいつも以上に険しい。何と申し上げたらよいのでしょう。司祭さま、私を安心させてください。三カ月も留守だった伯爵が、ここへ帰ってきて私の傷心を和らげる愛の言葉を一言も言わなかったのは初めてです。伯爵が何度も助言を求めた司祭さまなら、私の心がいつも血を流し、うめき声をあげていることをご存知でしょう! 伯爵が、今まで実りのない子宮と不毛な愛だけのために養ってきた妻を、ついに見放すのではないかと恐れています」


司祭、ベランジェールに近づく:

「地上にあるものを目標にして、道端の木から折った枝を孤独な歩みの道しるべにしようと考える者は、それが折れて手を傷つける危険を冒す。至高の師が『人間に行け』と言うのは、もっと遠く、もっと高いところであり、死すべき旅人が一瞬つまずくこの世界そのものは、私たちを天国に導く橋のアーチに過ぎません」


ベランジェール:

「私はとても弱い女です。私の魂を安心させるような、怖がらせないような話し方をしてください」


司祭:

「つまり、私が言いたいのはこうです。幸せな家庭とは、神の御手に選ばれて、むなしい世間から遠く離れ、熱烈な心で修道院の床を膝ですり減らすような貞淑な女性たちがいる場所のことです!」


ベランジェール:

「ですが、神がその聖なる試練に選ばれるのは処女と未亡人だけです。私は伯爵と結婚しているのに……」


司祭:

「神の御前では、神以外の配偶者はいません」


ベランジェール:

「司祭さま、教会の前で神ご自身が私たち夫婦の絆を結んでくださったのに……」


司祭、レイモンが持ってきた手紙を見せて開封する。


ベランジェール、読む:

「離婚許可証だわ! ああ、私は伯爵がこの最後の手段に出るんじゃないかとずっと疑っていた! それにしても、わざわざアヴィニョンやローマから離婚の許可を出すのだから、結局のところ、聖なる教皇もただの男なのだわ。夫婦の絆を断ち切る権利がどこにあるのよ!」


司祭:

「神が教皇に『縛りなさい、緩めなさい』と許されたことを忘れたのですか! 神の娘よ、神の御手はあなたを謙虚にさせる。神の息吹のもとで、曲がる葦のようになりなさい。天高くそびえる樫の木のように、抵抗したためにへし折られ、神の怒りが頭上に落ちたことを、遠く広く地上に散らばる破片によって証明してはなりません」


ベランジェール:

「新しい運命に身をゆだねるなら、いつここを離れなければならないのでしょうか?」


司祭:

「明日の朝です」


ベランジェール:

「最後の別れに、夫に会ってもよろしいですか?」


司祭:

「神の娘よ。別れは未練となり、おそらくあなたの世俗的すぎる魂をこの世に結びつけてしまうでしょう。それに伯爵は……」


ベランジェール:

「そのことはさておき……。伯爵は、最後に別れの挨拶をすることさえ嫌なんですか?」


司祭:

「私は伯爵の謙虚な通訳に過ぎません」


ベランジェール:

「他に必要なものは?」


司祭:

「引き際の期限を決めるのは、自分を整えようとする心にとって必要なことです」


ベランジェール:

「引き際の期限ですって? 私はここで最期を迎えると決めてました。それだけかしら? 何をおっしゃりたいのか、一言でわかるようになってきましたわ」


司祭:

「伯爵はここで難しい決断をしなければなりません」


ベランジェール:

「どっちのこと?」


司祭:

「あの不届き者のことです」


ベランジェール:

「ああ、そうだわ。もう一人の犠牲者ヤクーブ……。私たち二人が誕生したのは、一人はナイル川のほとりで、もう一人はロワール川のほとりです。神は遠い未来に私たちが同じ運命をたどることを予期していたのでしょうか。サヴォワジー伯爵が私たち共通の主人となり、神が私たちに与えようとした幸福を壊し、私たちはこの運命から逃れることができないまま、私には辱めを、彼には死を下されるだなんて。司祭さまは信じられますか……。私には信じられません……」


司祭:

「私も同じ思いです」


ベランジェール:

「もし神が天の善意で、この悲惨な未来を幸せな運命に変えようと願ったとしたら、その力はあるのでしょうか?」


司祭:

「神には可能です。望むだけでよいのですから」


ベランジェール:

「不信心者は幸いね。私は彼を羨ましいと思います。キリスト教徒でない者は、命を呪うことができるから」


司祭:

「娘よ!」


ベランジェール:

「司祭さま、私の話を聞いてください。母が涙を流しながら『あなたの娘が生まれました』と言って私を父に差し出した日を覚えておられますか?」


司祭:

「覚えてますとも。間違いなく、勝利の日でした」


ベランジェール:

「司祭さまの目の前ですくすくと子供は成長し、娘になったことを覚えていますか? 開かれた本のように、あなたは私の魂を読み、私の希望、欲望、願い、感情を目で追うことができた……。光の魂を宿す少女は、母親のためではない思いを一度でも抱いたことがあったでしょうか?」


司祭:

「一度もありません」


ベランジェール:

「やがて、私の手は伯爵から誓いを受けて、婚姻の儀が済むと、あなたは私の家族としてここへ来て、私をずっと見守ってきました。伯爵がここにいても不在でも、夫のために祈りを捧げ、私の目が泣いていても口が笑っていても、私の魂が悲しんでいても喜んでいても、この魂には……たったひとつでも夫のためではない思いがあったでしょうか。司祭さまはそれを知っているでしょう、それを大きな声で言ってください」


司祭:

「ひとつもないと断言できます」


ベランジェール:

「もし、伯爵が夫婦の絆を断ち切ろうとする破滅的な願望にとらわれずに、私が死ぬ日までずっと愛が続いていたとしたら、神の嫉妬深い要求は、娘であり妻でもある私に、私がした以上のことを求めたでしょうか? 最後の審判の日、私は冷静に答えることができると思いますか?」


司祭:

「なぜそんなことを聞くのですか?」


ベランジェール:

「もし、私が苦しみの中で力を失い、過ちを犯したとしても、少なくともこの過ちは私の墓場へ導く光明となります。私には信念が必要なんです」


司祭:

「何を言っているのですか?」


ベランジェール:

「希望を失ったとき、心にどんな思いが浮かぶか、私にはわからない……。サタンは私たちを注意深く見つめている。そして、一瞬の忘却で天秤はひっくり返る。積み重ねた重りは反転して、私は司祭さまが認めているように二十五年間の美徳を神の足元に捨てることになるでしょうね!」


ベランジェール、立ち去る。


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