第一幕 ヤクーブ・6場

◯同・サヴォワジー伯爵、扉に現れる。引き続き、兵たちが取り巻いている。


伯爵:

「この騒ぎは何ごとだ、どうしたんだ? わが祖先を象徴する三つの黄金の紋章に誓ったことを忘れたのか? 主人がここにいるときは誰も大きな声で話してはならない」


伯爵、巡礼者の格好ではなく完全武装で登場:

「この手紙はなんだ?」


伯爵、教皇の手紙を拾う:

「ここで何をしている? 死んでいる射手はレイモンではないか。私はこの地を治める貴族で、シャルル・ド・サヴォワジー伯爵と呼ばれている。レイモンを殺した犯人は私の手で処刑されるだろう。名乗り出ろ! 扉を閉めろ、弓兵、誰も逃がすな!」


ヤクーブ、伯爵のところへ行く:

「殺したのは俺です、旦那さま……。ここにいる俺がやりました」


伯爵、半ば剣を抜く:

「今言ったことをもう一度言ってみろ。そうすればおまえは死ぬだろう」


ヤクーブ:

「あなたの腕の中で十年の歳月が流れました。傷ついた俺をここへ連れてきてくれた……」


ヤクーブ、胸を張る:

「理由を話します」


ヤクーブ、自分とレイモンの胸元を広げて二つの傷口を見せる:

「ほら、旦那さま! 同じところに当たってますよね? しかし、俺の戦闘能力はレイモンより上だった。それに、彼の心臓に突き刺した刃はさらに深い」


伯爵:

「寛大な法は、殺人と復讐を区別する。正当な復讐だと認められれば、凶器は汚れることなく鞘に戻り、絞首刑に処されることはないだろう。だが、ここに帰ってきて最初の仕事が正義の裁きを執行することだとは思ってもみなかった……。私は伯爵だ。高位の貴族であり、神に代わってみずからの手で正義を執行する! 家臣たちよ、この亡骸を運び出して、聖域にキリスト教徒の墓を作らせるのだ……。さらば、わが従者、いや、わが友よ。私とレイモンは同じ年に生まれた。だから私は同じ日に、イングランド軍と対峙する戦いの最前線でともに戦って勇敢に死ねるようにと望んでいた。神は私たちに最後の祝福を与えてくださると思っていたのだが……。しかし、神はそうでないと判断されたのだ!」


伯爵、目を拭う:

「小姓よ、馬に乗って全速力で、国王が宮廷を開いているブールジュに行け。明日、国王に敬意を示すために赴き、私が直接お目にかかって進言申し上げると知らせてくれ」


伯爵、射手二人に:

「おまえたちは犯人を見張っておけ」


伯爵、両手を広げるベランジェールを気にする素振りも見せずに:

「司祭さま、来てください」


伯爵、立ち去る。


ベランジェール:

「一言もないなんて……!」


ベランジェール、ヤクーブに向かって:

「二人とも絶望的だわ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る