口裂け女と耳男
なんと素敵な夜道だと、上野はしっかりご満悦。
すると、女性がおりました。上野は声をかけま
した。
「お嬢さんも旅ですか?」
女はマスクをしておった。白い服と長い髪。貞子のようだと思います。
「旅のようなものですね」
小さな声で言いました。上野は彼女の顔をよく見ます。綺麗な瞳をしてました。
「僕も旅で来ましてね。お嬢さん、一杯いかがです?」
上野は酒に誘います。美酒に溺れて◯されたい。夜風に揺れる提灯も、きっとそれを望んでる。
「私相手はつまらないですよ」
「いえ。君は綺麗だ」
小川のほとりを歩きます。ススキとホタルが輝いて、違う星にいるのでは。上野はロマンチストです。
「私のどこが綺麗なの?」
「それは今は内緒だよ」
「これを見ても?」
女はマスクを外します。裂けた頬から奥歯が覗き、歯茎の血管、紫色。こんな口は初めてと、上野は少し驚きます。そんな上野の首掴み、女はギュッと締めました。上野はグアっと声を出す。体は宙に浮いています。信じられない力です。
舐めたい。
女は耳を疑います。今のは上野が言いました。上野は女の手を解き、地面に向けて背負い投げ。そのまま体を押さえます。
スイッチの入った上野の目。正気の人とは思えない。女は逃げようと抗った。でも、その手からは逃げられない。
「綺麗だよ」
女にとってその言葉、身を溶かすような甘さです。上野は女の耳を見る。そして、優しく触ります。耳先と耳たぶまで丁寧に。女は息を荒くする。体に力が入りません。
上野は耳の穴を見る。アカの一つない秘境です。
「綺麗な耳だ」
上野はホタルを捕まえて、女の耳に当てました。緑に光る小さな耳。上野はそっと舐めました。女は声を出しました。「もう、やめて」
と、言いました。上野は大人しく離れます。そして、女の前に手のひら出します。
「ひどい汗ですね。もうお風呂は済ませましたか?」
「...まだです」
女は上野の手を取ります。二人は旅館を目指します。
女は今宵の過ちを口が裂けても言えません。
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