飼い猫とカプチーノ

チャトラの可愛い猫トラオ。毛並みの綺麗な可愛いオス猫。トラオの飼い主、名前はさくら。80を過ぎたお婆ちゃん。家族は都会に住んでいます。5年前に主人は他界。トラオとさくらは二人だけ、それでも楽しくやっています。


さくらはトラオが大好きで、トラオの頭をよく撫でます。その度、「良い子、良い子」と、呟きます。トラオは言葉の意味は分かりません。でも、手の温もりは知っています。


トラオはウッドデッキも大好きです。さくらが好きな場所だから。さくらはここで昼寝する。お日様ポカポカ気持ちいいね。ロッキングチェアに腰下ろし、サン=テグジュペリの本を読む。ガーデンテーブルにマグカップ。中には熱々カプチーノ。トラオは味を知らないが、渋い匂いが苦手です。さくらが本を読むときは、決まって膝に寝転びます。さくらもたまに撫でています。何より誰より幸せです。


でも命には、限りがある。ある日、さくらは病に倒れた。さくらは手術を受けました。その成功率は低いのです。


トラオはさくらの傍にいました。彼女が手術を受ける夜、トラオは祈りながら待ちました。手術は長い時間です。しかし、なんとか成功です。


トラオはさくらのもとへ駆け寄ります。4足歩行でトコトコトコ。

さくらは手術後の合併症。予期せぬ事態に陥ります。トラオは見守ることしかできません。さくらが喉を押さえて苦しむ姿。トラオは言葉を失います。


そして、さくらはトラオの横で、静かに息を引き取りました。彼女が最後に残した言葉。「トラオ、あなたを愛している」。トラオに意味は分かりません。手の温もりの感じません。


トラオは孤独に包まれた。彼女の死後は野良猫へ。トラオは飢えに苦しんで、さくらの顔も忘れます。それでも必死に生きたいと、トラオは草木をかじります。


けれども、とうとう倒れます。お腹はペコペコトラオはひとり。けれども奇跡は起きました。倒れた場所はさくらのおうち。あのウッドデッキはさくらとの思い出。


ベランダから誰か出て来ます。見たことがない少女です。彼女はトラオに近づきます。そして、「汚い猫」とののしります。言葉の意味はわかりません。だけどね。トラオを抱えた両腕は温かいと感じたよ。そして、トラオは埋められます。冷たい土に包まれます。意識朦朧とする最中さなか、さくらの姿が現れた。天使のように輝いて、優しい微笑み浮かべます。


「トラオ、こっち」とさくら言う。


優しい気持ちに包まれて、幸せないっぱい羽ばたきます。さくらの両手に包まれて、穏やか、安らぎ感じつつ、天国へ向いて行って来ます。


トラオはさくらの膝の上、お日様ポカポカ温かい。あの机にはカプチーノ。熱々ほろ苦カプチーノ。トラオは好きになりました。この苦さも思い出です。さくらの大事な思い出なのです。

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