第39話 ミモザ

 事務員「海さーんー!この案件どうしますか?お客様がどうしても今日打ち合わせしたいと行ってるんだけど」


 海「わかりました。今日午前中他の打ち合わせがあって、その後2時間ぐらい空くのでそのお客様対応します」


 事務員「ありがとうー!どうしても海さんがいいってお客さんが言っててさぁー!」


 所長「さすが海くん。人気者だな!従業員にもお客さんにも!」


 事務員「海くんは頼りになるからさ!ウチらも頑張らなきゃって思うんだよねー!」


 所長「お前以前まで仕事全然やる気なかったのにな。海くんが来てどうよ。目の色変えて仕事してるじゃないか。まぁ海くんも見た目は悪くないしな!はっはー!」


 事務員「かっ課長ー!止めてくださいよー!海くんの顔が赤くなってるでしょ?」


顔が真っ赤になる俺。


 事務員「それじゃあお願いしますね!海くん。いってらっしゃい」


 俺はこの会社に来てからさらに前を向き、所長と共に仕事をしていき、たくさんの売上を伸ばしてきていた。


そこにいる会社の従業員ともしっかりコミュニケーションを取り、皆と同じ方向を向いて走り出している俺たち。


本当にこの営業所に来てよかった。


皆本当にありがとう。

俺は毎日心の中で皆に感謝していた。


仕事が休みの日は毎回、家族の元へ帰り妻の作る温かいご飯を食べ、そして子供達とゲームをしながら遊ぶ。


ついちょっと前の俺とは全く違った。

今思えば本当に自分は弱かった。


目の前に壁が立ち塞がる度、俺はその壁を見ようともせず他の道を探していた。

他の道が見当たらない場合は、今まで自分一人で壊そうとしようとしていた。


それが今では違う。


自分がどうしようもなくなったとき、冷静になって周囲を見渡せば、妻、子供、所長、従業員。


そして小春。


いるじゃないか。


会えなくても、いつ会えるかわからないけど俺の心の中にはしっかりとそばにいる。


そのことにやっと気づいた俺。

身体の関係だけでは何も満たされない。

大事なのはその人を本気で想い、本気で愛しているかどうかだ。


友達?カップル?夫婦?そんなんじゃない。


男、女。そんなのも関係ない。


子供、大人。そんなのも関係ない。


大事なのは想う気持ち。


想えば必ず伝わりどこがで支えてくれている。

手を差し伸べてくれている。


俺は前に進む。


これからもこの先も。



こうして俺は、会社の外にでて走り出した。


俺の人生はこれからだ。




 数ヶ月後。


今日は仕事が休み。

ただいま俺はランニングの休憩中。


仕事もうまくいき自分にも自信が着いてきた俺は自分自信の外見にも磨きをかけることにした。


少しでも見た目に清潔感を出したかった。

見た目がすごく不潔なわけではなかったが、さらにモチベーションを上げるためである。


俺は髪を切りに行くことにした。今まではなるべくお金をかけずに自分で風呂場で切ったり1000円カットにたまに行ってたぐらいだったから。


そして毎日ランニングもするようになった。

今まで社会人になって全く運動をしなくなったから。


そのおかげでたるんでた身体も少しずつ引き締まり、髪はやはり美容院で切ってもらったからか、見た目の印象が全然違う。

美容師の人にもかなりの好印象だった。


本当に。

中身は上手く皆のおかげで変えることができたが、外見はなかなか変える勇気がなかった。

それに美容院に入って髪を切ってもらってる間話すのが気まずくてしょうがなかったのもある。

それは今までの俺のコミュニケーション能力不足だ。

走るのも正直疲れる。


でも勇気を出して、なんでも挑戦してみるものだ。


これで見た目も中身もサッパリし、つい数日前にネットで直感で頼んだ香水をつけてみる。

ちょっと前からつけてみたかった。

最近自分と同じ歳の人もよくつけているらしい。やっぱりその人たちは見てて清潔感があるしなんせカッコいい。


憧れの香水。


つけてみるとゆっくりと香りがした。


甘く癒やされる匂い。


どこか懐かしく、吸い込まれそうな匂いだった。


その香水の名前をスマホで調べてみると「ミモザ」とそこには書いてあった。



するとスマホを片手に休憩してるときに、向こうから一人の女性がきた。


 女性「すみませーん。タオル落としてましたよー」


綺麗な茶色の髪でショートボブ。見た目も可愛く守ってあげたくなるような小動物系の顔だ。

かなり若いな...。

背が俺より約20センチ程低く、おどおどとした様子で俺にタオルを渡してきた。


 海「すみません。わざわざありがとうございます」

タオルを引き取ると、その女性は俺の隣に座り

こう俺に言う。


 女性「なっなんか...。とてもいい香りがしますね。香水ですか?!それなんの香水ですか?」


 海「これは...。」

自分の腕に付けた香水の場所をじーっと見つめ...。


そして少しずつ顔をあげ...。


その女性としばらく見つめあっていた。


そう....。


この香水はミモザ。



花言葉は「秘密の恋」

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ミモザ~秘密の恋~ 夜影 月雨 @za-bi

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