第35話 妻の身体
「皆さん!今まで本当にありがとうございました。至らない点がたくさんあり本当に皆さんにご迷惑おかけしました」
転勤前日の日俺は朝礼で前に立たせれ皆に挨拶をした。
俺がたくさん迷惑をかけたのは知っている。だから最後はちゃんと皆に感謝の言葉と謝罪をしたい。しかも胸を張って。
ここの事業所に転勤してきて一番のしっかりとした声を出し皆に伝えた。
言葉はありきたりだったが、勢いが伝わってくれたのか、一人の方がパチパチパチと、それに続けて皆が拍手をしてくれた。
元々他の事業所に比べそこまで活気のある職場ではなかった。
思えば俺が勢いよく挨拶をし、冷たくされたと思ったのも、皆誰に対してももしかしたらそうなんじゃないかと思った。
こうして前に立ち皆の顔を見てみると、皆まじめでいい人たちばかりだと思った。
少なくとも俺が小春といた頃は皆元気で一致団結し売り上げに向かって突き進んでいたし。本当に感謝してる。
皆から拍手をされお礼の商品券とよくわからない赤いお花をもらい俺はこの会社をでる。
会社の外にでて後ろを振り返り会社全体を見上げると俺がここに転勤してきたころの自分を思い出した。
あの頃はなにもかもにがむしゃらで全然うまいこといってなかったのに、急に転勤になってこの会社に来て、根拠もないけれど、頑張ろうって張り切っていたなって。
だけど実際入ると皆の雰囲気も悪く俺も上司という立場でありながらもなんでもスルーしていき自分の身だけを守っていた。
自分自身殻に閉じこもり上司でありながらも誰ともコミュニケーションをとろうとしなかったある日、彼女は現れた。それから俺の人生は大きく変わり今こうして他の事業所の方に推薦され新しい、さらに上の道を行く。
本当にいろんなことがあったけど、俺を育ててくれた会社本当にありがとう。
俺は深く会社に向かってお礼をした。
よし!今からだ!今俺前に進もうとしている。
今が自分を変える時だ!
その気持ちを忘れずに一旦家に帰り、引っ越し準備の最終確認をした。
家には妻が仕事を休み、子供も保育園を休み俺の手伝いをしてくれた。
今まで俺に合わせて休みを取ってくれることもあったが全く俺は意識していなかった。
自分が旅立つときにこうして見送ろうとし、一緒にいてくれるのは本当に嬉しい。
今やっとこうゆう家族の大切さやありがたさがわかってきた。
準備を終え、車に荷物を積み、俺も車に乗る。
そして妻が俺に声をかけた。
「とりあえず一段落。ここでの仕事本当におつかれさま。しばらく離れちゃうけどまた私達も会いにいくし、いつでも帰っておいで。スマホもあるしなんかあったらいつでも連絡してくれたらいいから」
と言い車の外から俺をそっと抱きしめてきた。
この感じ...。
俺と妻が出会い、俺が告白をし成功し妻が抱きついてきたあの時の感じ。
すごく懐かしかった。
俺の事を支えようとしてくれているしっかりしたものが伝わってきた。
俺も久しぶりに妻の身体に触れた。
前よりも少し痩せた?
少し身体が弱々しくなってるかな?でも触れて見てわかるけれど、芯の奥の奥はしっかりしてる。
妻も表情では見せなかったけど本当大変だったんだ。俺以上に苦しかったんだ。
なのに俺にはバレないようにずっと気を使ってくれて。
うん。
やっぱり俺の大事な妻だ。
俺も妻に触れさらに家族を支えようと思った。
子供たちにもたくさん頑張ってねと言われ、笑顔で旅立つ俺。
そして新しい地に俺は辿り着く。
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