第32話 俺の勇気ある言葉
小春が残していった羽根を手に取り俺は1から考えた。
どうやったら飛べるのか?
彼女に会いにいけば教えてくれるかもしれない。
いや。それは違う。
自分の大切なもの全部捨てて、彼女のところにいくか。
いや。それも違う。
ちくしょう。小春はもういないんだ。
俺でなんとかしなきゃ。
このまだ心の中で引きずっていた俺の出した考えは、
もう一度家族とちゃんと向き合おう。
そう考えた。
まずは妻と毎日会話。今まで一緒に家にいたがほとんどおのおのの時間を過ごし会話がなかった。
妻がご飯を食べるとき、一緒のテーブルに座り、子供も含め皆で楽しく会話しながらご飯を食べる。
そして、朝起きたらおはよう。寝るときはおやすみ。とちゃんと言う。
こうやって振り返ってみれば本当に俺は夫という肩書きだけあり、何もできてなかったんだなと自覚し気づいた。
これからやってみよう。
その日の夜、妻がいつものようにバタバタしながら晩ごはんを作っていた。仕事が大変だったのだろう。気持ちイライラしてるのが伝わる。
正直話しかけに行くのが怖かった。決して俺に対して怒ってるわけではないのに。
声かけて怒られたらどうしよう。やはり無理だ。
ソファーに座って子供がやるゲームでも見ておこう。
........。
いやいや。駄目だ。挫けるの早すぎ。
こんなんだと前と同じだ。一度やると決めたんだ。
もう一度気合いを入れ直し、妻の所まで恐る恐る歩みよる。
「し、仕事お疲れさま。何か手伝おうか?」
確実におどおどしてる話し方だ。
もっとスマートに言いたかったと後悔し落ち込む俺。
すると妻は
「ごめん。仕事が大変でイライラしてたの伝わったかな。ごめんね。大丈夫だよ。子供と遊びながらゆっくりしてて。もう少ししたら出来るから。ありがとう。」
妻が優しく感じた。
今まで話さず様子ばかり伺って被害妄想ばかり立てていたが、全然怒ってないしむしろ声掛けただけでありがとうと言われた。
その言葉に俺は
「大変だったんだね。無理せずにね」
と自然に言葉を返すことができたのだ。
結婚して約5年。久しぶりに妻とちゃんと会話をしたようだった。
妻のありがとうの言葉を聞き俺はスッキリした表情でゲームをしている子供のところまで戻る。
すると子供が俺の方を見てきて、
「このボス倒せないからパパ一緒に倒してー!」
と言ってきた。
今まで無言で一緒に見てる俺なんか気にもせずただひたすらゲームに打ち込んでいた子供が、一緒にゲームをしようと誘ってきてくれたのだ。
こうゆうことか...。
俺は今まで自分から避けていたんだ。
だから表情も硬くなり妻も子供も俺に対して気をつかっていたんだ。
俺の表情が明るくなれば家族が明るくなる。
たったそれだけのこと...。
子供のゲームの誘いを受け、一緒にボスを倒した。何度も何度も負けたが、やっとの思いで倒したとき、子供はすごく喜んでくれて、頑張った俺に対して感動して涙を流してくれた。
それを晩ごはんを作りがながら見てた妻がつられて泣く。
その日は晩ごはんを皆で一緒に食べ、妻の仕事の話をたくさん聞き、子供はゲームをしながらその話を聞いて俺と一緒になって妻を励ましていた。
その日を境に俺たち家族は明るく元気な家庭を取り戻したのだ。
そして次は、会社!
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