第24話 幸せを手にした俺
二人で最高の夜景を見て幸せなひとときを過ごしたその日の明け方、一旦彼女を見送り解散する。
歩いては振り返り、立ち止まりそしてニコッとして手を振る。
彼女が完全に見えなくなるまで俺は見送っていた。
そして今日は二人とも仕事が休み。
今日も彼女の家で会うことにした。
帰る途中コンビニにより、さっきまで二人で過ごしたあの幸せな時間を再度振り返りながらコーヒーを買いタバコを吸った。
外は少しずつ通勤の車が多くなったり、バスを待つサラリーマンもポツポツ出てき始めている時間。
するとなぜかふと急に冷めてしまった。
あの夢の時間はなんだったんだろう。幸せを全て手に入れるってこんな感じなのかと思うくらいに何も入ってこず、周りの景色や人がどうでも良くなっていた。
もうすでに消えたタバコを左手に持ち焦点が合わずただ立ちつくす俺。
「これが幸せというものなのか...」
と小声で独り言を口にし、車に乗り家に帰る。
彼女からやっと大好きだよ。と言ってもらえた。どんなことがこれから起こっても私は大好きだよ。と言ってくれた。
自分の最愛の人にそんなことを言われたらもっとウキウキしてテンション上がってるはず。
なんでだ?
ただ惚気けてるだけか?
あれだけ欲しがっていたのに?
なぜかテンションが上がらない自分がいた。
危うくガードレールにぶつかりそうになりながらも一瞬だけ目が冴えそしてまたボーっとする。
何も感情が入ってこない。
なんとか事故に合わず無事家まで辿り着いた。
今日も妻と子供はいない。友達の家に泊まりにいきそのまま今日一日遊ぶと言っていた。
車を降り家の玄関を開けると、瞬間的に頭によぎる。
いつもバタバタしながら準備をしてる妻や子供の姿。それを思い浮かべながら玄関でただ呆然と立ちつくしていた。
幸せを手にした俺。ついさっきまで最愛の彼女と一緒にいて全く家族の事なんか頭に入ってこなかったのに。
今は逆。
妻や子供の笑顔しか頭に入ってこない。
これは罪悪感なのか?
そう思いながら俺は夜とは真逆の涙がでてきた。
誰にも見せれないこの情けない姿。そうして立ちつくしていると、彼女と会う時間が近づいてきていた。
俺のスマホからラインの通知がくる。小春からだ。
「今さっき旦那と子供の準備もし終えて無事に旦那と遊びに行ったからいつ来ても大丈夫だよ。久々に旦那と子供だけで遠い所に遊びに行くみたいだから」
バタバタしやっと落ちついて一段落したのだろう。嬉しそうなんだなというのが文字を見てもわかった。
ん?彼女は俺と同じような状態になってない?俺だけか。
しばらくして「わかった」と一言だけ送り、俺も家の用事をし、それをしたことで気が紛れ頭の中が少しスッキリした俺は彼女の家まで向かうことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます