第23話 彼女の言葉
おなかいっぱいになった俺たちはファミレスをでて、コンビニでコーヒーを買い、おすすめの夜景スポットまで車を走らせた。
夜景なんて見たことがない。だいたい付き合った事がある人は誰でも一度や二度彼女とデートで行ったことがあるだろう。
俺は特に夜景を避けてたわけではなかったが、夜景を見ることに関してそこまで魅了されるものはなかった。
でも今こうして彼女と夜景を見に行く為車を走らせてる。
山の中はカーブがキツく周りも暗い。
それを乗り越えた先に見える夜景を、って思うと、自然と心がワクワクしていた。
しかも小春と。
車の中では当たり前のように手を繋ぎ、それに俺の肩に頭を乗っけくっついてくる。
なんて幸せなデート。今俺は彼女を独り占めしてる。
本当に。
夜に二人で会うなんて俺たちにとっては考えると相当困難なことだった。
彼女は子供をお風呂入れたり家事が大変だし、俺はそれに比べてはそこまで家事をしているわけではないが、子供と触れ合ったりその時間に出る事なんてよほどじゃない限りなかった。
彼女にどうやって外出の許可もらったか聞いてみると、友達が深刻な相談事したいから来てほしいって言われたから行ってくる。と言ったみたいだ。
絶妙な嘘。これだといつ帰ってくるかもわからない。帰ってきてどうだったか軽く話をすればいいだけの事。深刻な話だからわざわざ旦那さんに深く話すこともない。
彼女の口実はまさにすごかったが俺からすればこれはお天道様がくれたチャンス。
本当にありがとう。
と心の中で感謝した。
そしてやがて山頂に着き駐車場に車を止め外にでた。
平日夜の23時。
人はほぼいなかった。いたのは俺たちよりも若い20代の付き合い立てだろうなとわかるカップルが二組と、端の方でポツンとアルファードが1台。
エンジンはつけっぱなしで車内が薄暗く光っているのが遠くから見てわかるが、外から様子は見れない。
おそらく中で愛し合っているのだろう。
それにドキドキしてしまった自分がいたが、そのカップルだらけの駐車場の先にある遊歩道を少し歩くと、そこはたくさんの生きた星空が満開に広がっていた。
車が走ってると思われる光。
マンションの窓から消灯点灯を繰り返す明かり。
工場の煙突の先から強く放っている光。
そのたくさんの光が星に見え、星は普段見上げるものだが見下ろすこの感覚。
自分たちが織姫と彦星になったような気分だった。
すると彼女が俺の手をそっと繋ぎ、口にする。
「私は海ちゃんの事が大好きだよ」
初めて好きと口にだして言われた。俺は伝えた事あるし、ラインでも言ってる。でも彼女からのはっきりその言葉を言われた事はなかったのだ。
「これからどんな困難があるかわからない。すごく嫌な事が起こったとしても...私はずっと海ちゃんの事愛してるよ」
その言葉を口にし俺にキスをした。
俺は涙した。
やはりなんだかんだこの言葉を待っていた。いつも触れ合えばそんなこと言わなくたってわかるって思ってたけど、どこかに不安や恐れがあった。
格好つけてたんだ俺。
それに無理には言って欲しくなかった。
彼女にもすごく負担がかかっているのは俺にもわかっていたから。
けれど、こんなどこを見てもきれいな星空に囲まれたこの場所で言ってくれたら。誰だって涙を流してしまう。
「あれ?泣いてる?」
嬉しそうに彼女はこっちを覗き込んだ。
「そのまっすぐで純粋の綺麗な涙。私は大好きだよ」
そう言って俺に寄り添ってきた。
ホントに今日は嬉しいことばかり言ってくれる彼女。本当はこうゆうときって男がいう立場じゃないのか。
でも、彼女は今までずっとずっとこらえて、我慢して、今この解放されたこの生きた星空の中でやっと口にしてくれたんだ。
俺は解放された彼女の俺に対する気持ちをそれからいっぱい聞き、
その後車の中で本当の愛を感じていた。
生きた星空も少しずつ周りが明るくなったことで薄暗くなっていき、俺たちを輝かせてくれていた光もなくなってくる頃になっていた。
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