第22話 運命の人たち
小春と会い、星たちに輝らされながら車に乗った俺たちは、まず晩ごはんを食べにいった。
二人とも家のものをある程度食べてきたが、まず近くのファミレスに行く。
平日の21時。そこまでお客さんはおらず、特に喫煙ルームの方なんかは、サラリーマンの人が1人コーヒーを飲みながらノートパソコンで仕事をしているぐらいで静かだった。
二人で晩ごはんを食べるのは初めて。
お互いそこまでお腹が空いてなかったが、一緒に夜、外食をする事に憧れていたのかもしれない。
彼女はパスタを、俺は和食セットを頼んだ。
料理が来ると手際よく彼女は箸を取ってくれたり、お茶をついでくれたり。
本当に気遣いが人一倍すごく、嬉しかった。
俺だからしてくれてるんだとそう思いたい。
仕事の愚痴を言ったりで会話がはずみ、ご飯も進む。なんでも「うんうん」と笑顔で頷いてくれる彼女に温もりを感じて、まるで子供が学校であったことを母親に話しているかのようだった。
俺が余りに一生懸命話すから、ご飯粒が口についてることも気づかずにいると、それに気づいた彼女がニッコリしながらそれを取ってくれたり。
本当。彼女の前では背伸びをしなくてもよかった。不器用である俺が父親になり、なんでもしっかりしなきゃと思いそれがずっと裏目にでていた。
それが彼女の前では素の自分でいられる。
自分だって強くない。それをわかってくれて甘えさせてくれる彼女が大好きだ。
自然と癒やしを求めていたのかもしれない。
妻も大変な気持ちはわかるが、いつだって甘えたいのは妻だけではない。
うまく、そこが両立できている夫婦がうまくいってるのかなとそんなことを思っていた。
でも俺には小春がいる。ただこうして話をしてるだけで今日1日がいい日だったなと思えるようになる。
これを運命と言うのかな。
そう考えるとどこまで付きあったらこの人は運命の人だって実感できるのかわからない。
付きあったら?
同棲したら?
結婚したら?
それともよく聞く、パッと初めて会ったときに感じたら?
初めはそんなん嘘だと思っていた。
会っただけでそんなことわかるわけがないと。
でも思い返してみれば小春の時は一言二言話しただけで好きになり虜にされてしまった。
これが二人とも結婚して子供もいるから今こうして不倫という形でしかいれないが、もし二人とも結婚してなくて、彼氏彼女もいなかったらどうなんだろう。
そうだとしたら初めて会って話したとき好きになってなかったのかもしれない。
その可能性だってある。
運命の人って自分たちがどのタイミングで、出会うのかがわからない。まぁだから人生って面白いんだけどなぁ。
もしかしたら小春が運命の人じゃないかもしれない。
そうなれば??
やっぱり妻??
それともまだ出会ってない?
あっ。もしかしたら過去の彼女?
誰にも答えはわからない...。
「海ちゃーん!ねぇ。聞いてるー?」
彼女の声で俺は一人の世界から帰ってきた。
「まーた1人の世界に入ってたんでしょ」
彼女はほっぺたを膨らまし上目遣いで俺を見ながら拗ねていた。
「ごめん。ごめん。仕事が余りにも忙しかったからさ」
彼女の頭を撫でながら謝る俺。
「一人にしないでよね。せっかくの夜のデートなんだから」
可愛い一言を彼女は放ち、ドリンクのおかわりに行った。
色々考えたってわからないものはわからない。彼女が運命の人かどうか真実はわからないが、今思う運命の人は俺は彼女だと思っている。
こんな形で会うことになったけどせっかく二人の時間をもらったんだ。
この貴重な時間を楽しもう。
俺はそう心に誓い、ドリンクコーナーから帰ってきた彼女とそれから少しだけ話して、外にでることにした。
「ねえ。夜景見に行こうよ。」
小春の提案で俺たちは山の山頂を目指すことになる。
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