第22話 帰ってきたメカパウンド?

 メカパウンド介護型がモフモフ島に帰ってきた。水飛沫を巻き上げながら、全速で向かってくるメカパウンド介護型。これはとても頼もしい。


 僕らを踏み付けていた暗黒機械メカが、こちらに向かってくるメカパウンド介護型を見つけたようだ。

 僕らへの踏みつけを一旦解除して、メカパウンド介護型の方を向いた。


 その後、暗黒機械メカは、僕らへ最後に一発蹴りを入れてから、メカパウンド介護型の方に向かって歩き出す。どうやら弱々しい僕らを後回しにして、暗黒機械メカはメカパウンド介護型と戦うつもりなのだろう。


「最後に蹴りを入れていくとは、本当に嫌なヤツだ」

「そうですね。でもこれで助かりました」


「そうだね、改良されたメカパウンド介護型の方が、あんなヤツより強いに決まっているよ」

「頑張ってほしいですね」


 負け犬の僕らは好き勝手なことを言いながら、メカパウンド介護型を応援した。

 暗黒機械メカが僕らから離れたことを確認したメカパウンド介護型は、暗黒機械メカの情報を収集するかのように観察している。攻撃を開始する気配がなく、気になる何かを確認しているようにも見える。


 暗黒機械メカに近づき、正面に回ったところで、メカパウンド介護型の動きが完全に止まった。


「あれ、メカパウンド介護型の動きが止まった」

「どうしたんでしょうね」


 動きが止まったメカパウンド介護型を見て、暗黒機械メカが漆黒レールガンを放つ。

 メカパウンド介護型はすんでのところで漆黒レールガンをかわす。しかし反撃はしない。


 その後もメカパウンド介護型は防御一辺倒で、全く攻撃をしない。

 僕らの防衛や食糧確保のために、攻撃する機能は装備されているのに、全く使用しないでいる。

 時々レールガンの照準を暗黒機械メカに合わせて攻撃しようという素振りは見せるのだが、弾丸を発射するまでには至らない。


「なんで攻撃しないんだろう」

「おかしいですね」


 不可解な戦闘の様子を見ているうちに、僕らはメカパウンド介護型が優しいAIだということを思い出した。

 メカパウンド介護型の話はノックス中尉やファイン少尉から色々と聞いているが、メカパウンド介護型は元々メカパウンド4番機だ。

 そのためメカパウンド介護型は、同時期にロールアウトしたというメカパウンド3番機を攻撃できないのではないか。

 友軍を攻撃できないというプログラムに加えて、優しい気持ちのAIがメカパウンド3番機の姿を見てしまったら、攻撃ができないのも不思議ではない。


 僕らにはメカパウンド介護型が、3番機のためにも暗黒機械メカを倒さないといけないと思ってはいるが、その姿を見てしまうと攻撃できない。そんな風に感じた。


 僕らは何も出来ない自分自身をもどかしく思いながらも、メカパウンド介護型を見守るのみ。しばらくの間、膠着した状態が続く。


 一方的に攻撃する暗黒機械メカ、防衛のみのメカパウンド介護型という構図が続いていたが、ついにその均衡の崩れるときがやってきた。


 葛藤に苦しんでいるように見えるメカパウンド介護型だったが、レールガンの照準を再び暗黒機械メカへ合わせる。

 そしてメカパウンド介護型は一呼吸おいたあと、意を決したかのようにレールガンを発射した。メカパウンド介護型が覚悟を持って発射したレールガンは一筋の光となり、暗黒機械メカを貫いた。

 暗黒機械メカの左脇腹にぽっかりと穴があく。


『ギュイイイイイイイイインンン! ギュイイイイイイイイインンンッ!』


 暗黒機械メカは鳴き声とも金属音とも言えない音を発して、その動きを停止した。


 やったか!?


 そう思ったのも束の間。暗黒機械メカに空いた穴はみるみるうちに黒い瘴気で塞がっていき、程なく完全に修復されてしまう。

 メカパウンド介護型が覚悟して放ったレールガンだったのに、なんてことだ。


 暗黒機械メカは、ただ復活しただけではなかった。メカパウンド介護型の特性を理解した暗黒機械メカは、全身から火花を散らしながら、周囲に見えない何かを発した。


 ボウゥッン!


 その何かを受けたメカパウンド介護型は、動きが止まり、そのままあっさりと倒れてしまった。先ほどまで点灯していたメカパウンド介護型の眼の光も消えてしまい、全ての機能が停止してしまったように見える。

 僕らには何の影響もないのだが、暗黒機械メカは一体何をしたのか。


 僕らは驚いて周囲を見ると、設置されているモニターや5兆円マッサージチェアの電源が落ちていることに気がついた。この影響を見るに、先ほどの暗黒機械メカの行動は、電磁パルス攻撃ではないか。それならば機械類にのみ影響があっても不思議ではない。


 暗黒機械メカが電磁パルス攻撃をしてくるということは、電子機器を満載しているメカパウンドやアルティア共和国防衛軍には期待が出来ない。


『ギュイイイイイイイイインンン! ギュイッ! ギュイッ!』


 また暗黒機械メカが喜びの声を上げている。

 見ると暗黒機械メカは、動かなくなったメカパウンド介護型へ取り憑き、一体化しようとし始めている。


 僕らにこれを見過ごすことなど出来はしない。

 今の僕らでは勝てないかもしれないが、それでも僕らは暗黒機械メカへ立ち向かう。

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