第20話 モフモフ島SOS?
モフモフ島の近海には、ジャイアントケルプの森と呼ばれる場所がある。その場所には、ジャイアントケルプという50mはあろうかというコンブ科の海藻が群生し、それらが一様に海流によってたなびいていた。
深くて暗いジャイアントケルプが群生する森の底。
巨大なジャイアントケルプの根元には、モフモフ島で勃発した紛争の際に散ったメカパウンド3番機の残骸が散らばっていた。
先の紛争でメカパウンド3番機は、パウンドや周辺にいる艦隊を守るために、憎悪の塊として放たれた弾道ミサイルを抱えて海中へ飛び込んだ。その結果、アルティア共和国艦隊やパウンドを守ることには成功したのだが、メカパウンド3番機自身は爆圧に飲み込まれ、その機能を完全に停止した。
メカパウンド3番機は、弾道ミサイルが海底へ向かい直進していることを確かめたあと、爆圧から逃れようと海上への脱出を試みたのだが、間に合わなかったのだ。
人の目が届かない海底に沈んだメカパウンド3番機。しばらくして、そのメカパウンド3番機に、黒い瘴気を放つエイのような形をした暗黒生物が取り憑いた。
のちの研究によって弾道ミサイルの爆発の影響で誕生したのではないかという仮説が立てられることになる黒いエイのような形をした暗黒生物。
その黒いエイのような暗黒生物は、メカパウンド3番機に取り憑いてから、長い時間をかけてジャイアントケルプの深い暗い海の底で人の目を逃れ、静かに大きく大きく成長していく。
黒いエイのような暗黒生物は、最終的にメカパウンド3番機と一体化して、異形の暗黒巨大生物として生まれ変わった。
◇◇◇
どんよりとした厚い雲に覆われた空。
いつ雨が降り出してもおかしくない天候だ。まあ僕らは雨に濡れても平気なので、空模様を気にすることはないのだけれど。
「この曇り空なら僕らの白い肌も日焼けしないね」
「えっ、私たちは日焼けをするんですか?」
「あ、いや、僕らが日焼けするのかは分からないけど……。えっと、今のは巨大生物ジョークだよ。ははっ」
僕は一応ボケたつもりだったのだが、ニノには通じなかった。ボケの説明をすることになり、少し恥ずかしい。
僕らはしょうもない話をしながら、ぼーっと過ごしていると、ノックス中尉とファイン少尉がモフモフ島にやってきた。
「よう
ノックス中尉がアルティア風ジョークをかましてきた。僕と同じでしょうもない知能レベルのようだ。
隣のファイン少尉が失笑している。
「メカパウンド介護型の様子を確認しに来たんですが、今日はまだ戻っていないようですね」
ファイン少尉はノックス中尉のジョークをスルーして、僕らに話しかけてきた。みんなにジョークをスルーされたノックス中尉だが、全くめげていない。
「なんだ、メカパウンド介護型は、今いないのか。今日の天候ならメカパウンド介護型のシルバーの肌も日焼けしないのにな」
ノックス中尉はめげるどころか天丼してきた。恐ろしいメンタルをしている。
「しつこいですよ」
ファイン少尉が容赦のないツッコミを入れた。さすがに我慢できなかったのだろう。
「ふふふっ」
そして何故かニノが笑っている。ニノは一体どの部分が面白かったのだろう。僕にはちょっと分からない。
僕らが謎の時間を過ごしていると、突然、沖合の海面が激しく波打ち始めた。
ゴバァッ! ザババババッ!
何やら巨大な物体がこちらに近づいてきているようだ。
「メカパウンド介護型が帰ってきたのかな」
僕が気軽にニノに話しかけると、ニノは眉間にシワを寄せて難しい表情をしながら返事をした。
「違うと思います」
「えっ、じゃあ何が!?」
呑気にジョークについて考えていたら、雰囲気が急に緊迫してきた。しょうもない話をしている時間は終わったようだ。
不吉な謎の物体が水飛沫をあげながら、ゆっくりではあるが真っ直ぐにモフモフ島に近づいてくる。
陸地まであと少し、白波のたつ浅瀬に到着した謎の物体は、その場に立ち上がり、その全容を現した。
僕らはひと目見て分かった。新たな暗黒巨大生物が出現したと。
浅瀬に立ち上がり現したその姿は、巨大な黒いエイがメカパウンドに覆い被さり、一体化したしたかのような形状で、その全身から黒い瘴気を放っていた。
腹部には黒い濃い瘴気の塊があり、その漆黒の闇の中で、時折り火花がバチバチッっと閃光を放っている。発電器官を備えているようだ。
右肩の辺りには、メカパウンドに装備されていたレールガン発射装置が見える。見るからに危険そうだ。
僕らは機械と生物が一体化したかのような異形の姿を見て動揺する。
「アレってメカパウンドが何かに取り込まれている!?」
「はい。黒い物体と一体化しているように見えますね」
「何だか分からないけど、どう見ても危険だよね」
「このままアレを放ってはおけません」
「そうだね、アレ……、暗黒
「はい!」
僕らは危険な存在を放ってはおけないと考え、ここで暗黒
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