第17話 注目の番組?

 モフモフ島には、僕らの視聴用にモニターが設置されている。

 ニノの超絶記憶力により、僕らは人間の言葉を理解している。なので、僕らは人間の制作した様々な番組を楽しむことができるのだ。僕らは時々ニュースを見たり、映画を見たりして楽しんでいる。


 そんな僕らにファイン少尉が、とある番組を見るよう薦めてきた。

 ファイン少尉がテレビ番組を薦めてくるとは珍しい。

 ジャピア王国とアルティア共和国の政府が共同で制作したとのことだが、一体どんな番組なのだろう? 楽しみだ。

 僕らはワクワクしながら、ファイン少尉お薦め番組の開始を待ち、ついに始まったその番組は。


『巨大生物パウンド特集 最強から最弱へ。要介護となった巨大生物のいま』


 なんだ、この番組のタイトルは!


「えっ、何この番組!?」

「えっ、私たち、最強から最弱と言われてますよ」


「要介護の巨大生物だって! まあ確かにそうだけれども」


 僕らは動揺しながら、番組を注視した。この番組タイトルでは、注視せざるを得ない。僕らはモニターにかじりついて、番組を見た。


 番組の開始早々、最近の僕らを撮影した姿が映し出された。

 モニターに映る僕らは、モフモフ島の浜辺をヨボヨボと歩いている。足取りがもの凄く重い。


 僕らはこの映像で、初めて客観的に今の姿をまじまじと見た。

 思った以上に、今の僕らは弱そうだ。想像以上にヨボヨボして弱々しい。


「こ、この姿は……」

「……」


 ニノが絶句している。口が半開きになったまま、固まっている。美少女が台無しだ。


 僕らとしては、もう少しマシな動きをしていると思っていた。

 しかし、事実は違った。とんでもなく弱そうだ。なるほどこれは、図体が以前と変わらない大きさなのに、最弱の巨大生物である巨大イカと接戦をするわけだ。


 引き続き番組を観ていると、以前の僕らと今の僕らを比較する映像が流れ始めた。

 暗黒ヤドカリ、暗黒オタマジャクシ、暗黒8本首を次々に倒す僕らがカッコよく編集されている。最強感がハンパない。

 ナレーションでは『救世主伝説、史上最強の巨大生物パウンド』を連呼している。


 その後、今の僕らの映像に切り替わった。モフモフ島で、メカパウンド介護型やシロとハクに食べやすくしてもらった巨大エビや巨大カニをもしゃもしゃと食べている。どう見ても要介護の巨大生物だ。本来なら自立して当然の巨大生物なのに、これは酷い。


 番組はまだまだ続く。


 今度は腹の上に海鳥を乗せて仰向けに浮き、プカプカと海面を漂っている僕らの姿が映し出された。

 無表情で、灰のように薄汚れた白色をした巨体がプカプカと浮く姿は、まるで土左衛門だ。ちょっとしたホラーのようにも見える。


「この映像はダメだ。放送コードに引っかかるレベル!」

「……」


 ニノが口をパクパクさせている。相当なショックを受けている。


 僕らにとってはかなりの衝撃映像だったが、ナレーションを聞いていると、僕らへの同情を集めるストーリー展開で番組が進行している。


『巨大生物パウンドは、人類の生活を守るために暗黒巨大生物を次々に撃退し、人類を救ってくれました。またある時は、人類の平和を守るために世界大戦となりうる可能性があった紛争を収めてくれました。そして、人類のために尽力した巨大生物パウンドは最終的に疲れ果て、このような哀れな姿になってしまったのです!』


 ナレーションに哀れと言われているのは気になるけれど、今まで僕らがしてきた行動をカッコよく言えば、そうかもしれない。

 ただ最後のパワーは、調子に乗って巨大ホタテ貝5連戦で消費してしまったのだけれど。


『現在、アルティア共和国とジャピア王国が中心となり、巨大生物パウンドを援助をしていますが、予算が不足してまいりました。そこで国、企業、個人、全世界の全ての皆さまから基金を募りたいと思います。巨大生物パウンド要介護ドネーションのスタートです。全世界の皆さま、ご協力をお願い致します」


 なんだって!? 巨大生物パウンド要介護ドネーション!?


 そうして僕らを援助するため、全世界へ向けて募金活動が始まった。

 目標金額はジャピア王国円で1兆円だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る