第16話 大人気?

 僕らはシロとハク、メカパウンド介護型を引き連れて、ジャピア王国の温泉にやって来た。もっとも引き連れてというか、連れてきてもらったと言った方が正確かもしれない。


 みんなでジャピア王国の温泉に泊まって一夜が明け、僕らは海面にプカプカと浮いていた。

 今日一日は、この場所でのんびりとする。海上を吹く風が心地よい。


 僕らはプカプカと仰向けに浮きながら、空を眺める。雲一つない青空に海鳥が気持ち良さそうに舞っている。

 と思ったら、海面に出ている僕らの腹に、たくさんの海鳥が着地してきた。僕らの腹は休憩所ではないのだけれど、可愛いのでヨシとする。


 その間にシロとハクは、初めて見るジャピア王国の海で元気に遊びまわっている。

 遊びの合間には、巨大タラバガニを食べている。巨大エビ以外にも美味しいものがあると分かってもらえたようだ。良かった、ここまで遥々きた甲斐があったというものだ。


 メカパウンド介護型を見ると、ジャピア王国軍の大型浮きドックで、メンテナンスを受けている。

 僕らを長い間、押し続けたので金属疲労でもしたのかな。ちょっと違うか。


 大型浮きドックが出張でばってきているということは、気軽に温泉に来てしまった僕らのせいで、ジャピア王国とアルティア共和国に何かと負担をかけているのだろう。

 そもそもモフモフ島での生活を含めて、相当の国家予算が使われていることだろう。国民の皆さんに申し訳ない。早くデバフ状態が解除されればいいのだけれど。


 そんなことを思いながら、僕らは腹の上に海鳥を乗せて、プカプカと海面を漂っていた。

 するとニノが上空に何かを見つけた。


「何か飛んで来ますよ」


 何かが僕らの方へ向かって飛んでくる。


「なんだろう、ヘリコプターかな」


 僕らは飛んで来る物体をぼーっと眺める。

 飛んで来る物体が何にしろ、メカパウンド介護型が無反応ということは、危険がないということだろう。


 その物体はぐんぐんと近づいて、僕らの上空にやってきた。

 近づいてきた物体は、やはりヘリコプターだ。ジャピア王国所属のヘリコプターのようで、複数機いる。

 ジャピア王国には、何かとお世話になっているので、僕らはさっそく挨拶をする。


『ゴガオオオオオン!』(こんにちは)


 上空のヘリコプターが、僕らの挨拶に応えるかのように旋回する。

 そして僕らの挨拶に驚いて、腹の上にいた大量の海鳥が飛び去っていく。あの飛んで行った海鳥たち、墜落の危険があるのでヘリコプターにはぶつからないで頂きたい。


「あのヘリコプターは、何しているんでしょうか」


 ニノが当然の疑問を口にする。


「うーん、なんだろうね。カメラマンがいるみたいから、何かの取材かなあ?」

「白くなりましたし、気になるんでしょうか」


「そうだね、まあ気になるよね。急に白くなったら。人間は急に白くなったりしないしね」


 モフモフ島での取材は、国連とアルティア共和国によって制限されているので、僕らの姿を生で見るのは、珍しいのかもしれない。

 何故か急に白くなってヨボヨボしているし、興味が湧いても不思議ではない。


 ヘリコプターに続いて、ジャピア王国の艦船もやってきた。甲板にカメラマンがたくさんいるので、どうやら取材で間違いない。


 僕らとしては、これといって気にすることはないので、自由に取材してくれて構わない。

 なんならジャピア王国とアルティア共和国の財政に負担をかけていることだし、取材陣に少しサービスをしておこう。

 そう思って、僕らは弱々しくなった尻尾の炎やガタ落ちした運動能力を披露するなど情報を提供しておいた。

 本日の撮れ高はどうだったかな。満足してもらえるといいのだけれど。


 ちょっと情報提供しすぎてしまい、もしかしたら危険があるかもしれないが、シロとハクにメカパウンド介護型が守ってくれるので、きっと大丈夫だろう。


 取材陣は僕らとシロとハクをしばらくの間、撮影した後、一機だけヘリコプターを残して、去っていった。


「帰っていったね、もう満足したのかな」

「色々とサービスしましたから」


「そうだね、じゃあまたのんびりしようか」


 僕らは再び仰向けに浮きながら、のんびりとした。

 波のリズムに合わせて、海面をプカプカ漂う。僕らの腹の上には、再び海鳥が集まってきた。



 ◇◇◇



 数日後、モフモフ島に戻った僕らは、ファイン少尉に薦められてモニターを眺める。

 ジャピア王国とアルティア共和国の政府が共同で制作した番組が流れるとのことだ。

 モニターに映ったその番組は。


『巨大生物パウンド特集 最強から最弱へ。要介護となった巨大生物のいま』


 何この番組!?

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