第14話 有能すぎる?

 僕らの生活を助けるために、アルティア共和国はメカパウンド介護型を派遣してくれた。

 現在、僕らの隣に待機しているメカパウンド介護型は、照りつける日差しを浴びてキラキラと輝いていた。


「隣に立っているけど、どうやって指示すれば良いんだろうね」

「さっぱり分かりませんね」


 ノックス中尉とファイン少尉はメカパウンド介護型を置いて、大した説明もなく帰ってしまった。

 メカパウンド介護型に任せておけば、何も心配しなくて大丈夫だと言っていた。

 どう大丈夫なのだろうか。考えても仕方ないので、いつも通り行動するとしよう。


 僕らは少しの空腹感を感じ、海へ巨大イカを獲りに行こうと考えた。

 起き上がり足を一歩踏み出すと、僕らはメカパウンド介護型に行動を静止された。


『待っていろ』ということだろうか。


「もしかして巨大イカを獲ってきてくれるのかな」

「今ので、そんなことが分かるのでしょうか」


「あの僕らの動きを全て先読みしたメカパウンドだよ。もしかしたら分かるのかもしれない」

「そうですね。確かにそんな気がしてきました」


 僕らは以前に行ったメカパウンドとの模擬戦のことを思い出した。

 その模擬戦では、僕らが少し目線を動かした程度でも、メカパウンドは僕らの次の動きを完璧に予測していた。メカパウンドの動きは、完全に予知レベルだった。


 模擬戦のあとで聞いた話によると、メカパウンドは僕らに関する膨大なデータを保持しているらしく、そのデータを元に次の行動を完璧に予測していたらしい。

 そのおかげで、僕らはメカパウンドに手も足も出ずに一度完敗している。模擬戦なので良かったが、恐ろしい相手だった。


 そのメカパウンドが介護型になって新登場だ。僕らの空腹感を見抜くぐらいのことは、容易いのではないか。


 僕らがそんなことを思って立ち止まると、メカパウンド介護型は『任せて下さい』と言わんばかりに海中へ潜って行った。

 このメカパウンド介護型は、水陸両用に改造されているようだ。旧型メカパウンドの生活防水レベルではない。これは凄い。


 僕らは大船に乗ったつもりで、メカパウンド介護型を待つことにした。

 もし何も狩ってきてくれなくて、1日ぐらい食事抜きになったとしても、実際のところへっちゃらだ。

 のんびり待とう。


「どうせならイカじゃなくてカニがいいな。カニは最近食べてないし」

「そうですね、今の私たちではカニは強敵すぎて狩れないですし、カニがいいですね」


 先日、シロとハクは巨大エビをくれた。なので今日の気分は、巨大カニだ。そう思ったら、僕らはますます巨大カニのことで、頭がいっぱいになってしまった。

 どうしてもカニが食べたい。


 しばらくしてメカパウンド介護型は、巨大カニを獲って帰ってきた。当たり前のように巨大カニを持っている。

 さすが最先端のAIだ。僕らのことは全てお見通しなのだろう。


「やったね、カニだよ」

「狩って来てくれる気がしましたね」


 メカパウンド介護型は、そのまま僕らへ差し出すのではなく、食べやすいように巨大カニを捌いてくれた。


『ピヤァァァン!』(ありがとう)


 僕らはメカパウンド介護型へお礼を言って、食べやすく処理された巨大カニを頂いた。


 続いてメカパウンド介護型は、コンブ科の海藻ジャイアントケルプも採取してきた。

 僕らはモフモフ島の近海に、広大なジャイアントケルプの森があったことを思い出した。僕らが巨大なコンブがたくさん生えているなと思った場所だ。あの場所から採ってきたのか。


「コンブも食べなさいってことかな」

「うーん、美味しいのでしょうか」


「栄養のバランスを考えているのかもね」


 僕らは今まで肉しか食べていないが、実は雑食なのだろうか。

 僕らの内臓がコンブを消化できるのか若干気にはなったが、ここはメカパウンド介護型を信用してみよう。


「せっかく採ってきてくれたし、食べてみようか」

「はい。そうですね」


 僕らは初めて肉以外の食糧を食べてみた。

 うーん、いまいちだ。残念ながらコンブの旨味は分からない。


 ニノを見ると、ちょっと眉間にシワを寄せて、実に微妙な表情をしている。これは本当に食べ物なのだろうかと思っていそうだ。初挑戦の食べ物なのでそれも仕方のないことだろう。


 僕らはせっかく採ってきてくれたし、栄養のためだと思ってコンブも全て平らげ、メカパウンド介護型が用意してくれた食事を完食した。

 メカパウンド介護型に聞こえるわけではないが、僕らは食後の挨拶をして感謝を表す。


「「ごちそうさまでした」」


 それにしても僕らが起き上がって足を一歩踏み出しただけで、これだけのことをしてくれるとは。

 メカパウンド介護型、凄いAIを搭載した機械メカだ。

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