第12話 久しぶりの再会?

「ふわぁ、おはよう。ニノ」

「おはようございます。私も今、起きたところですが、もう夕方ですよ」


「えっ、もう夕方!?」


 本当だ。起きたばかりなのに、綺麗な赤い夕日が水平線に沈もうとしている。僕らは丸一日ほど眠っていたようだ。


「やっぱり疲れていたんだね」

「はい。私も起きたとき、びっくりしました」


「お腹、空いたね」

「はい。でも食べるものがありません」


「そうだね。だけど暗くなってからの狩りは危険だね」

「明日まで、我慢ですね」


 食いしん坊のニノだが、ここは我慢だと思ったようだ。


 その時だった。モフモフ島の浜辺に、巨大な黒い影が現れた。赤い夕日を背に、巨大な影が近づいてくる。

 まさかモフモフ島に危険な巨大生物が上陸してきた!?


 今までモフモフ島が巨大生物に襲われることなど一度もなかった。それなのに、よりにもよってこんなときに!


「不味いよ、ニノ! 変なのが来た!」

「ちょっと落ち着いて下さい」


「ん?」


 ニノに注意されたことだし、少し落ち着いてみよう。

 浜辺に上陸してきた巨大生物のシルエットには見覚えがある。しかもその巨大生物の影は2つある。

 これはまさか。


『『ゴガオオオン!』』


 浜辺に上陸してきた巨大生物が鳴き声を上げた。この聞き覚えのある鳴き声は間違いない。僕らの子供である巨大生物シロとハクだ。


 僕らは以前、同種族の卵を遠くの島から拾ってきた。その卵から産まれてきた双子の巨大生物がシロとハクだ。

 なので正確にいうと、僕らの子供と言っていいのかは分からないのだが、世界中で同種族は僕らとシロとハクの3匹しかいないので、これは家族と言って良いだろう。そういうものだ。


 シロとハクが僕らを見て、再び嬉しそうに鳴き声を上げた。


『『ゴガオオオン!』』


 シロとハクも僕らと同様に、挨拶シリーズをマスターしている。

 完全に意味が分かっているのかは不明だが、かなりいい感じに区別して使っている。


 そんな僕らの子供たちシロとハクがモフモフ島へやってきた。

 久しぶりの再会だけれど、2匹とも元気そうだ。僕らよりはまだ一回り小さいが、ずいぶんと大きくなっている。2匹とも凄く立派に成長している。


 浜辺に上陸してきたシロとハクは、それぞれ巨大エビを1匹ずつ引きずっていた。それを目ざとく見つけたニノが口を開く。


「エビ、美味しそうですね」


 ニノが完全に巨大エビをマークしている。

 まさか子供たちから食糧を奪い取る気だろうか。さすがに食いしん坊のニノでもそんなことはしないと思いたい。


 そんなことを思っていると、シロが僕らへ巨大エビを差し出してきた。


『ゴガオオオン!』


 シロは鳴き声をあげながら、巨大エビをずいずいと僕らへ押しつけてくる。これは僕らへのプレゼントということだろうか。


「もしかして、プレゼントかな」

「きっとそうですよ、頂きましょう」


「そうだよね、ここは遠慮なくいただくとしよう」


 僕らはシロとハクへお礼をする。


『ピヤァァァン!』(ありがとう)


 シロとハクもそれに応える


『『ピヤァァァン!』』


 挨拶を済まして、僕らはさっそく巨大エビを食べようとするが、殻が硬くて、なかなか上手に食べられない。

 僕らが硬い巨大エビの殻に苦戦していると。


 バリバリッ、バリバリバリッ!


 シロとハクが巨大エビの殻を破壊して、食べやすくしてくれた。なんて良い子たちだ。


 まだシロとハクが小さいうちに僕らは旅に出てしまったが、2匹は優しく成長してくれていた。

 試練を与えるために、かわいい子には旅をさせよというが、正しいようだ。色々な経験を積んで立派に育ったのだろう。

 もっとも旅に出たのは僕らの方ではあるのだが。


「シロとハクは優しいね。良い子たちだ」

「本当です。立派になりましたね」


「本当にね、そういえばイカ以外に食事は久しぶりだね」

「はい。とっても美味しいです」


 僕らは親孝行の子供たちにもらった巨大エビを、それはもう美味しく頂いた。

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