第10話 最恐のモフモフ?

 僕らは火山島海域を突破して、なんだかんだで無事にモフモフ島へ到着することができた。

 シロとハク、ノックス中尉にファイン少尉、それにたくさんのモフモフたち、みんな元気にしてるかな。

 白波が立つ浅瀬で立ち上がると、木々が生い茂る島々が一望できる。懐かしい風景だ。


 それにしても久しぶりの陸上だ。デバフ状態になってから、今回が初めての陸上だけれど、一体どんな感じだろうか。


 浅瀬で立ち上がった僕らは、足を一歩踏み出してみる。

 うん、やはりダメだ。

 身体がとても重く感じる。久しぶりの陸上ということもあり、ヨロヨロとしてしまう。これは少し歩くだけでも一苦労だ。


「予想はしていたけど、海中よりダメだね」

「はい。ちょっと歩くだけで精一杯ですね」


 久しぶりということもあり何とか二足歩行ができる状態の僕ら。ヨロヨロしながら歩いていると、僕らを見つけたモフモフたちが近寄ってきた。


 僕らがモフモフと呼ぶ巨大生物。

 この無人島にたくさん生息している、ちょこちょことした動きがとても可愛い毛むくじゃらの巨大生物だ。

 身体中がモフモフ、フカフカとした白い毛で覆われている。もっともモフモフは植物系巨大生物で、モフモフとした白い毛は根っこなのだが。


 そのモフモフとしたモフモフたちが僕らを見つけて近寄ってきた。凄い数が僕らを目がけて集まってくる。


「おお、凄い数が寄ってくる。嬉しいけど……」

「やっぱり可愛いですね。でも……」


 モフモフたちは僕らを見つけると、いつでも近寄ってくる可愛くて懐っこい巨大生物だ。しかし今の貧弱な僕らに、大群のモフモフたちは危険な気がする。


 僕らは集まってきたモフモフたちに押し潰される。

 ぐおおおおおお、凄い圧力だ。今の僕らにとっては拷問だ。

 僕らはモフモフの圧力に耐えきれず、ヨロヨロとよろけて倒れてしまう。


 ドシィィィンンンンッッ! ゴロリン!


 モフモフたちは、転がった僕らのことを戯れていると勘違いして、より一層集まってくる。久しぶりということもあって、モフモフたちのテンションが異常に高い。

 これは不味い。このままではモフモフに囲まれて圧死してしまう。


 まさか安息の地だと思っていたモフモフ島で、死ぬことになるとは考えもしなかった。巨大生物の中で、一番可愛いと思っていたモフモフたちに殺されることになるとは、想像もしなかった。


 僕らは走馬灯のように、モフモフ島での出来事を思い出す。


 そういえば僕らは、ここモフモフ島でキャンプをした。あの時は、楽しかったな。すぐに人間に見つかって、大艦隊からミサイルで猛攻撃をされてしまったけれど。

 その時も死ぬかと思ったけれど、今の方が死にそうな気がするよ。


 僕らは横たわったまま沖を見ると、沖合に艦隊の姿を発見した。キャンプのときに見た艦隊か、いよいよ幻覚が見えてきたかな。


 すると、遠方の艦隊が僕らを目掛けて砲撃してきた。


 ドオオオンッ! ドオオオンッ!


 周囲に爆音が鳴り響く。

 おわっと、これは幻覚ではない。実際に艦砲射撃されている。


 しかし、砲撃は僕らの周囲へ着弾して、僕らへの直撃は一発もない。

 どうやら僕らとモフモフたちを狙ってというわけではなく、威嚇射撃をしているように見受けられる。


 ドオオオンッ! ドオオオンッ!


 モフモフたちは、艦砲射撃の大きな爆発音にびっくりして、四方八方へ散っていった。

 僕らは無事にモフモフたちから解放された。モフモフたちに圧殺されそうだったけど、助かった。


 艦隊から一隻のエア・クッション型の揚陸艇が近づいてくる。ということは、ノックス中尉とファイン少尉が乗船しているのかもしれない。


「あれはノックス中尉とファイン少尉かな?」

「そうだったら嬉しいですね」


 僕らは判別しようと、ジッと目をこらす。揚陸艇が浜辺に着き、船から複数の人影が降りてきた。


 その中には、ノックス中尉とファイン少尉の姿があった。懐かしい。


 アルティア共和国防衛軍のノックス中尉とファイン少尉。

 2人は僕らの一番の理解者だ。僕らがピンチになると、2人はいつも助けてくれた。


 どんなときでも助けてくれるノックス中尉とファイン少尉を見つけて、僕らは喜んで挨拶をする。


『ゴガオオオン!』(こんにちは)


 きっといつものように2人も挨拶を返してくれるだろう。

 僕らは、そう思ったのだが。


「ん? お前は誰だ? アルファ級の毛むくじゃらに襲われるとは、弱くて変な巨大生物だな」


 ガーーーーーーーーーン!!!!!


 あのノックス中尉とファイン少尉が、僕らだと分かってくれない!?

 これはショックで死にそうだ!!



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