第9話 鬱陶しいクソバード?
柔らかい日差しが降り注ぐ、穏やかな海。
冷んやりとした南極圏を抜けて、ポカポカとした陽気が心地よい。一見すると、平和な海が広がっている。
だがしかし、平和そうに見えても貧弱になってしまった僕らは、油断ができない。モフモフ島を目指して、緊張感を保ちながら泳ぎ続ける。
「ふぅ、どのぐらい来たんだろう? ニノ、わかる?」
「はい。やっと半分を少し越えたところです」
「なんとか半分は過ぎたか。時間はかかるけど、意外に平和だね」
「そうですね。襲われる気配はないですね」
「なんだかんだで僕らはデカいから、好き好んで襲ってはこないのかもね」
「そうかもしれません。良かったです」
僕らは今のところ他の巨大生物に襲われることもなく、順調にモフモフ島への旅を続けていた。
しかし、ここからが難関だ。
火山島海域。
これから向かう海域は活発に活動している火山島だらけで、人間はほとんど近寄らない。そのために多くの巨大生物が生息している。
浅い海が多いため、ここまでの道のりより海底付近に生息している巨大カニ、巨大エビ、巨大ヤドカリなどに襲われる危険が増す。
海面付近にいても危険はある。空中から巨大な翼竜に襲われる可能性が極めて高い。巨大翼竜は、何故か僕らを目の敵にしてくる。なんなんだ。
その他にも出会ってしまったら死を覚悟するしかない巨大カメ、巨大ウミヘビなどヤバイ奴らが勢揃いだ。
「この先が火山島海域だよね」
「はい。危険地帯です」
「うーん、やっぱり火山島を避けて帰るのはどうかなあ」
「でもすごく遠回りになってしまいますよ」
「そっか。遠回りしても危ないよね。行くしかないかー」
「はい。気をつけて行きましょう」
僕らはモフモフ島までの道のりで、最難関の火山島海域へ突入した。
海底火山からマグマが吹き出している場所もあり、徐々に水深が浅くなってくる。この水深では、海底に生息する巨大生物に見つかってしまうかもしれない。
さっそくニノが海底にいる巨大生物を発見した。
「頭を引っ込めていますが、あそこにカメがいますよ」
確かに巨大なカメの甲羅が見える。
「アレはヤバい! 気がつかれないようにそーっと去ろう」
巨大カメは超強い。ジャピア王国に、暗黒巨大生物の一種である暗黒オタマジャクシが出現した時は、大量に倒しまくって食糧にしていたほどだ。
今の僕らでは、きっと瞬殺されてしまうだろう。
なんとなく友好的な感じはあるが、個体によって性格が違うかもしれない。僕らは巨大カメに見つからないように、そーっと距離をとる。
「さっそく怖かったね」
「はい。緊張しました」
僕らはコソコソと火山島海域を進んでいく。
途中、巨大エビと目が合ってビビったが、襲われたりはしなかった。
僕らはビビりながらも巨大エビを鋭い目つきで睨み返して、ハッタリをかましたところ、巨大エビは何もせずに去っていった。
まだ多少なりとも、強者のオーラが残っているのかもしれない。
僕らは気合いを入れて頑張った。僕らは火山島海域へ入る前に、食いだめと寝だめをしてきているので、不眠不休で移動する。
しかし、火山島海域を脱出するまでもう少しというところで、上空を舞っていた巨大翼竜に見つかってしまう。
いつもウザ絡みをしてくる巨大翼竜だ。
「うわっ、アイツと目が合っちゃったよ」
「凄い勢いで飛んできましたよ」
僕らは頭を突っつかれた。
痛い! ウザい!
海中に潜ると巨大カニの群れがいる。深く潜って逃げることは出来ない。
僕らは海面付近を泳ぐしかない。何度も巨大翼竜が僕らの頭を突っついてくる。
この攻撃で死ぬことはなさそうだが、マジでウザい。
以前の僕らなら尻尾や腕を振り回したり、頭部に生えたツノを使って追い払ったりするのだけれど、今の僕らは動きが鈍くて、巨大翼竜の動きに対処できない。とても悔しい。
「コ、コイツ好き放題しやがって」
「もう、どっか行って欲しいですね」
ニノも珍しく苛ついている。
巨大翼竜は、僕らからの反撃がないことが分かると、僕らの頭にちょこんと乗った。
「コイツ、僕らの頭に乗りやがった。屈辱っ!」
「なんなんでしょうねっ」
ニノもプリプリと怒っている。当然だ。
僕らはどうしようもないので、巨大翼竜を頭に乗せたまま、火山島海域を抜けることにした。
「このクソバード、重いしムカつくね」
「はい。凄く感じ悪いです」
その後、そのおかげかどうかは分からないが、他の巨大生物たちは僕らを避けるようになった。
巨大生物の本能で、頭に巨大翼竜を乗せた僕らのことを頭のおかしいヤバいヤツだと感じて、自然と避けたくなるのだろう。
結果的として僕らは火山島海域を通り抜けることに成功した。とにかく、これでモフモフ島まで、あと少しの距離だ。
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