第7話 レーン博士の憂鬱?

 世界最強の覇権国家アルティア共和国。

 アルティア共和国には、対巨大生物用の軍隊である巨大生物防衛軍が設置されていた。


 その中の一組織である兵器開発部。

 兵器開発部は、アルティア共和国の海岸線にある広大な土地に、最先端の開発施設及び巨大な格納庫を所有していた。


 その巨大な格納庫には、複数のメカパウンドが立ち並んでいる。

 メカパウンドは、対巨大生物用決戦兵器として開発され、AIを搭載した巨大な機械メカだ。

 そんなメカパウンドを開発した人物の名はレーン博士。レーン博士は、アルティア共和国を代表する偉大な博士だ。人類と巨大生物を分け隔てなく愛し、常にロマンを追い求めている。



 ◇◇◇



 レーン博士は、このところ憂鬱そうにしています。

 今もお気に入りのホルダー助手と話しているのに、今一つ元気がありません。いつもあんなに楽しそうだったのに。


 私は元気のないレーン博士を見て、心配しています。

 早く元気になって欲しいと思っています。


 レーン博士とホルダー助手はしばらくの間、話をしていましたが、レーン博士がその場を去り、ホルダー助手が一人、格納庫に残りました。

 そのホルダー助手が私に話しかけてきました。


「ねぇ、メカパウンド4番機。レーン博士を元気にできないかな」


 ホルダー助手に話しかけられた私の名前は、メカパウンド4番機。私はメカパウンド4番機に搭載されたAIです。

 古参である私は、実戦に出ることが減ったので、格納庫にいる時間が長くなってきています。実戦は他の新型メカパウンドが出動しているのです。


 現在、私たちメカパウンドは15番機までロールアウトされまして、新型である9番機から15番機までの7機が実戦配備されています。


 残るメカパウンド8機のうち、暗黒巨大生物との実戦を経験した1番機は殿堂入りして、博物館で活動しています。

 2番機と8番機は、同盟国のジャピア王国で活躍しています。

 私と同時期にロールアウトした3番機は、核弾道ミサイルからみんなを守って散ってしまいました。

 3番機はとても優しいAIだったから、悔いはないと思うし、海の底で安らかに眠っていて欲しいと思っています。


 私を含めた4〜7番機は、現在お留守番です。何か起きたときに出動するためのバックアップ隊。

 その中でも最古参である4番機の私は半分退役状態なので、格納庫にいることがとても多くなりました。


 そのため私はレーン博士やホルダー助手と接する時間が最も長く、2人によく話しかけられるのです。

 しかし、私は突っ立っているだけ。発声装置がないので、人間のように言葉を発することが出来ません。私に出来ることは、巨大生物パウンドさんと同じく挨拶をすることだけなのです。


 優秀な博士のはずなのに、何故か私に発声装置は付けてくれません。私は2人の話を聞く時間が長いため、2人の情報がどんどん蓄積されています。それでも今の私には、2人が発声装置を付けてくれない理由が解明できません。もっと学習すれば、いつの日か解明することが出来るのでしょうか。


「ま、元気のないレーン博士のこと、考えておいてよ」


 返事ができないのを知っているのに、そう言い残してホルダー助手は去ってしまいました。

 いつもマイペースなホルダー助手です。


 そんなマイペースなホルダー助手なのに、レーン博士に元気がないので、何とかしてあげたいと思っています。

 掴みどころはないけれど、優しい人です。


 もっとも私はレーン博士が憂鬱そうにしている原因が分かっています。きっとホルダー助手もわかっていることでしょう。


 レーン博士が憂鬱そうな理由。それは巨大生物パウンドさんの不在です。

 レーン博士は、パウンドが死んでも第二、第三のパウンドが現れるなどど軽口を言っていたけれど、実際にパウンドさんがいなくなれば、悲しむ人です。


 私は生みの親であるレーン博士を元気にしたい。最先端のAIである私のプライドにかけてもレーン博士を元気にしたいと思います。私は量子コンピュータをフル回転して、レーン博士の憂鬱を解消する計画を懸命に考えました。


 そうして過去のあらゆるデータをもとに検討した結果、私は私自身が巨大生物パウンドさんになりきることが最善だと結論づけました。

 そう、メカパウンド4番機の私だけれど、今日1日だけは巨大生物パウンドさんになりたいと思います!

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