第6話 南海の大決闘?

 僕らは巨大イカに両手で掴みかかり、大きな口でガブリと噛み付いた。

 以前の僕らなら、これだけで巨大イカを秒殺することができていたけれど、今の僕らの力だと、どうなるだろうか!?


 僕らは最弱のはずの巨大イカから、今まで感じたことのない強大な力を感じた。

 その上、以前はねっとりとした食感だなぐらいに思っていた巨大イカが、今はゴムタイヤにでも噛み付いているかのように硬く感じる。


「おおぅ、凄い力を感じる。イカなのに」

「イカなのに、硬いですね」


 最弱のはずの巨大イカなのに、その相手からこれほどの強大な力を感じるとは、全く驚きだ。

 僕らはしばらくの間、頑張って噛み付いているのだが、巨大イカは全身に力を込めてもがいている。以前のように、一撃では倒せない。


 今度は、巨大イカが反撃してきた。長い足を僕らに絡めて、締め付けてくる。


「くぅ、反撃してきた。イカなのに」

「イカなのに、厄介ですね」


 巨大イカは、僕らから逃げようともせずに反撃してきた。僕らになら勝てると感じたということか。イカなのに。


 僕らは噛みつき攻撃、巨大イカは締め付け攻撃。お互い渾身の力を振り絞る。膠着状態がしばらく続く。


「くぅ、歯茎から血が出てきたよ」

「あごが、あごが疲れてきました」


 僕らは歯茎から出血し、あごに力が入らなくなってきたが、辛抱強く頑張った。


 一体どのくらいの時間が経過したのだろうか。実際にはほとんど経っていないかもしれないが、とても長い時間が経った気がする。


 僕らの身体を締め付けていた巨大イカの足から力が抜けてきた。どうやら巨大イカの方が先に力尽きたようだ。接戦だった。

 巨大イカの攻撃力の低さ、攻撃バリエーションの少なさに救われた。何とか僕らは巨大イカに勝利した。


「ぜぇぜぇ。何とか勝った!」

「はぁはぁ、勝てましたね!」


 僕らは巨大イカ程度に苦戦はしたものの、ひとまず勝てたことを喜んだ。


「それにしても1匹狩るだけで、この苦労か。イカなのに」

「はい。イカなのに、大変でしたね」


 巨大生物の中で最弱の巨大イカ。僕らはその巨大イカに何とか勝てる程度にまで弱くなってしまった。

 巨大イカを餌にしている巨大カニや巨大エビを圧倒する巨大ダコ。せめて巨大ダコぐらいの強さは欲しかった。

 今の僕らは巨大カニや巨大エビにも勝てそうにない。生態系の最上位だったのに、まさか最下層になってしまうとは。


 すっかり弱者になってしまったが、なってしまったものは仕方ない。前向きに気持ちを切り替えよう。


「まあ弱くなってしまったものは仕方ないね」

「はい。そうですね」


「イカより強くて良かったよ」

「本当ですね」


 もし巨大イカよりも弱かったら食糧の確保も困難だった。生活ができる最低限の力は残っているということでヨシとしよう。


「よし、頑張って狩ったイカを頂こうか」

「はい。そうしましょう」


 僕らは、硬いなと思いながらも、巨大イカを美味しくいただいた。

 久しぶりの食事だし、苦労したので、より一層美味しく感じる。食事の有り難みがよく分かる。


「だたのイカなのに、いつもより美味しく感じるね」

「はい、凄く美味しいです」


 僕は美味しい食事とニノの綻んだ顔に癒された。

 いつまでこのデバフ状態が続くのか不安もあるけど、この試練をニノと一緒に乗り切ろう。


 これからも僕らは、安息の地であるモフモフ島へ目指して頑張っていく。難関はウザ絡みしてくる巨大翼竜がいる火山島海域だ。



 ◇◇◇



 その頃、僕らの知らないところで、新たな問題が起きようとしていた。

 僕らは人類に『パウンド』と呼称されている。そして人類は、僕らを模した機械メカを開発していた。


 メカパウンド。


 メカパウンドは、対巨大生物用決戦兵器として開発され、最先端のAIを搭載した巨大な機械メカだ。

 以前、人類に襲いかかってきた暗黒巨大生物との戦いで、共闘したこともある。


 そのメカパウンドに変化が起きる。

 モフモフ島になかなか戻ってこない僕らが原因となり、メカパウンドに搭載されたAIにある感情が芽生えていた。

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